アメリカン・ポップス伝パート2第5夜(3)
彼(アル・カイオラ)は(「ダイアナ」で弾いた)このフレーズ、♫ドンドコランカンタンカンタンカン♫を他のシンガーのセッションでもじゃんじゃん弾いたんです。
この曲でピアノを弾いていた人もこの同じタイプの曲を出しました。
このキャロルはキャロル・キングのことだというのはもう有名な話になっていますけれども、このキャロル・キングもポール・アンカの「ダイアナ」に感激して すぐにドン・コスタのもとに走ったんですね。そして彼のアレンジでデビュー曲を発表しました。
さて、この♫ドンドコランカンタンカンタンカン♫のギター・フレーズの話を続けましょう。アル・カイオラはじゃんじゃんこのフレーズをあちらこちらのセッションで弾きました。
JACKIE WILSON / Lonely Teardrops
この曲を作ったベリー・ゴーディー(Berry Gordy)は後にモータウン・レコードを作るんですけれどもね。これまたみなさんご承知のことですけれども、このときはまだ作曲家でした。
ドゥーワップのクレスツも、
CRESTS / The Angels Listened In
日本では九ちゃんでお馴染みの、
ブライアン・ハイランドも、
BRIAN HYLAND / Four Little Heels
そして極め付きは、
ここまで脇役であったこのギター・スタイルがついにメインとなったヒット曲が出たということになるんですね。まあこれやってますと番組が終わりますのでこのへんにしますけれども、このサウンドが60年代ポップスとなったんですね。原点は「ダイアナ」でドン・コスタでアル・カイオラだったというわけです。
さて、ここまできますとさしものロックンローラーも抵抗しきれなくなったんですね。♫トレインケプトアローレンオーナイロ〜ン(The train kept a-rollin all night long)♫と歌っていたジョニー・バーネットも、
♫ビーバッパルーラ(Be-Bop-A-Lula)♫のジーン・ビンセントも、
GENE VINCENT / Mister Loneliness
「サマータイム・ブルース」のエディ・コクランも、
EDDIE COCHRAN / Cherished Memories
なんとこの邦題は「コクランのズンタ・タッタ」でした(笑)。
さて、ニューオーリンズで素朴な♫ローディローディローディミスクローディ(lawdy, lawdy, lawdy, Miss Clawdy)♫を歌っていたロイド・プライスまでも、
LLOYD PRICE / I'm Gonna Get Married
ニューオーリンズの匂いが残ってますけれどもアレンジはドン・コスタでした。ドン・コスタという人はあのニューオーリンズ・サウンドもこのような都会的なサウンドに仕立て上げるんですね。
バディ・ホリーも結婚した58年の秋頃にはニューヨークに移り住んでいたんですね。で、クリケッツのメンバーはテキサスのラボックを離れたくないということで残ったんです。ですからバディ・ホリーとクリケッツはもう別れ別れになっていたんですね。で、ホリーはすでにソロの道を歩んでいたんです。58年10月ニューヨークで録音された曲です。
BUDDY HOLLY / It Doesn't Matter Anymore
言っておきますがこれは悪くないんですね。これはこれでバディ・ホリーの特徴が出ていますよね。作曲は「ダイアナ」のポール・アンカでした。
で、よく「バディ・ホリーが死んでロックンロールが死んだ」と言われますけれども、もう58年暮れにホリー自身も多少の路線変更の兆しがあったんですね。ただ59年に音楽キャリアを閉じなければいけなかったので、ジョニー・バーネットやジーン・ヴィンセント、エディ・コクランのように如実な変化が感じられる曲が存在していないというわけですね。これが神話として存在できる要因なのではないかというふうに(笑)皮肉屋である私は見ております。
1956年に始まったロックンロール時代は59年に幕を閉じたというわけです。