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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

その瞬間が訪れたのは5月7日の午後6時半ごろ。場所は石川さんがスキップをしながら階段を駆け下りた岩本町駅からほど近いジャズのライブハウスTokyo TUC(トーキョー・タック)。僕がこの日東京にやってきたのは、そこで起こったその瞬間を見るためでした。


ただ、その瞬間の話をする前に、ちょっと前置きが長くなりますが、僕が東京で見たものを時系列的に書き記しておこうと思います。この機会に行っておきたい場所、お会いしたい人がたくさんあったので。思わぬ人にも出会うことになりました。

品川に着いてまず最初に向かったのが五反田。もちろんあの池上線に乗るため。ただ、前回東京に行ったときには駅で乗り換えただけだったので、今回は五反田駅で降りて、池上線の次の駅である大崎広小路駅まで歩くことにしました。そこはまさに小津の『早春』と『東京暮色』の舞台だったので。先に言っておくと『早春』の次作である『東京暮色』はロケ地がかなり『早春』と重なっているんですね。特に五反田と蒲田あたりは『早春』でロケハンした場所をそのまま『東京暮色』で使ったはず。

その証拠と言ってもいいのがこの写真の風景。

Springsville in Tokyo #2 - 「早春」と「東京暮色」の町、五反田(1)_a0285828_15164222.jpg

これは『松竹編 小津安二郎新発見』に収録された川本三郎さんのエッセイに添えられた写真。写真の下には「『早春』のロケ・ハンより。1955年頃の東京の風景」と書かれていますが、川本さんの文章とは関係のない風景。ここはいったいどこなんだろうとずっと思っていました。で、先日、東京に行く前に『東京暮色』を見ていたらこんなカットが。

Springsville in Tokyo #2 - 「早春」と「東京暮色」の町、五反田(1)_a0285828_15170381.jpg

笠原醫院というのは主演の有馬稲子さんが子供を堕ろすために行った病院。ただし笠原醫院と書かれた扉はおそらくセット。ポイントはその向こうに見える風景。角度は違いますが、上に紹介した写真でとらえられた風景と同じなんですね。

そしてこの前のカットがこれ。

Springsville in Tokyo #2 - 「早春」と「東京暮色」の町、五反田(1)_a0285828_15172155.jpg

一番目立つ笠原醫院の看板はやはり映画用に立てたもの。問題はこの向こう側に見える駅の風景。実は『早春』にこんな風景が出てきます。

Springsville in Tokyo #2 - 「早春」と「東京暮色」の町、五反田(1)_a0285828_15173924.jpg

ほぼ同じ場所から撮っていることがわかります。場所は蒲田駅。左に見えるのは池上線と目蒲線のホーム。人々はここから東海道本線に乗り換えて都心に向かうわけです。


そういえば先日、武蔵新田駅で目黒行きの電車に乗られた石川さんと別れて僕と高橋さんは反対側のホームに行って一緒に電車に乗りました。向かった先はまさにその蒲田駅。乗ったのは”元”目蒲線の電車。わが愛する目蒲線に、高橋さんと一緒に乗れたなんて夢のよう。ほんの数分でしたがとても楽しい時間でした。ティールグリーンで展示会をされたきっかけが「たまたま」だったという話にはびっくり。その「たまたま」がきっけで僕が武蔵新田という東京郊外の小さな町に関心を持つことになり、ついにはそこに行ったわけですから、人生というのはからくりに満ちています(by 星野道夫)。

あっという間に蒲田駅に到着して、現在は『早春』や『東京暮色』の頃とは違って外ではなく一つの大きな建物の中を歩いて僕は品川行きの東海道線に乗り換えてそこの改札で高橋さんとお別れしました。手を振ってくれる高橋さんを見てると胸がじーんと...。


時系列的にと言いながら最後の場面の話になりましたね。

時系列的な話の始まりはその蒲田駅から池上線に乗った終点の駅、五反田でした。次回はそこから。


# by hinaseno | 2017-05-10 15:19 | Comments(0)

5月9日になりました。この日を僕はいったいどんな状態で迎えることになるんだろうかと思っていましたが、正直いろんなことがありすぎて放心状態。そういえば3日前のブログで紹介した僕の「5月9日の人生」の最初のコマでこんなことを書いています。

Springsville in Tokyo #1 - Nitta Strut part Ⅱ_a0285828_13185854.jpg

「最後はあの”未来”の場所にも」


そうです。計画通り、最後はその”未来”の場所に行きました。

場所は武蔵新田の商店街にある「未来門」。

Springsville in Tokyo #1 - Nitta Strut part Ⅱ_a0285828_13110908.jpg

この門の発見は運命的とも言えるものだったので、もし東京に行くことがあれば絶対に行かなければと考えていました。で、僕がそこに行きますという話をしたらうれしいことに同行してくれるという方がいたんですね。未来門発見のきっかけとなったお二人、アゲインの石川さんと『くまくまちゃん』の高橋和枝さん。このお二人を、この場所に来たのも初めての、この場所から一番遠いところに住んでいる僕が道案内することとなりました。でも、もちろん迷うことはありません。初めてだけどよく知った町。その理由は以前書いた通りです。

考えてみたら、僕が石川さんと直接お会いするのも、僕が高橋さんにお会いするのも、石川さんと高橋さんがお会いするのも3度目。で、3人で会うのはこれがはじめて。でも、不思議なくらいに昔からよく知った人間が数日ぶりにあった感じで和気あいあいと武蔵新田の商店街を闊歩しました。


さて、「未来門」を発見する手がかりになったのが、その背後に高くそびえている樹。この樹があるのが新田神社でした。というわけでこの新田神社にも立ち寄りました。東京で立ち寄った最後の場所です。


その新田神社の境内で、突然こんな会話が始まりました。


石川「いや、ああいうのはスキップとは言わない。本当のスキップというのはこんなふうに腿を高く上げてやるんだ」
(実演)
高橋「わたし、スキップってできないかもしれない」
(拝殿の前の石畳で高橋さんがスキップを始める)
高橋「あっ、できた」

これ、ちょっと離れたところから見たら何やってんだろうって感じですね。

いったいなんでこんな会話が起こったかというと、それは前日の夜の7時半ごろに僕が目撃したある一つの場面の話をしたからでした。前夜、布団の中でその日のことをいろいろと考えていたときに、まさに眠りにつく瞬間に唐突に僕の頭の中に現れたのがその場面でした。場所は都営新宿線の岩本町駅の地下鉄へ降りる階段。

そこで石川さんがスキップをしながらすごい勢いで階段を降り始めたんですね。突然のことだったんでびっくりしてあわてて駆け足で追いかけようとしても追いつけない。60歳をいくつか超えられている人とは思えない軽い足取り。最初ははらはらしていたんですが、でもなんとも微笑ましい光景。

それはまさに、その1時間前に起こった出来事によって僕と石川さんの心の中にわきおこった感情を最も視覚的に表現してくれた行動でした。

Springsville in Tokyo #1 - Nitta Strut part Ⅱ_a0285828_13120137.jpg


# by hinaseno | 2017-05-09 13:12 | 雑記 | Comments(0)

東京行きの準備が一段落したときに、ふと、あるきっかけで(内緒)『大瀧詠一Writing & Talking』に収められた「Eiichi Ohtaki: Return of the Giant」と題された渋谷陽一インタビュー(『ロッキング・オン・ジャパン』1987年4月号掲載)を久しぶりに読み返しました。このインタビューは渋谷さんの遠慮のない(遠慮なさすぎ)質問のおかげで、大瀧さんの興味深い発言をいくつも引き出しています。

中でもオッと思える話があったので東京行きの前に急遽書くことにしました。戻ってからはきっと書けないだろうと思ったので。


先月末に、おひさまゆうびん舎で行われた益田ミリさんの『今日の人生』を語り合うイベントのために作ったCDで、「今日」の曲と「人生」の曲を7曲ずつ入れたのですが、それについてこんなことを書きました。


「今日(today)」の中には「今日」という言葉のついた日本人の曲を2曲いれましたが、「人生(life)」のほうは「人生」という言葉のついた日本人の曲は1曲も入れていません。ちょっと”重い”曲が多いなという判断。ただしバートン・クレーンが日本語で歌った「人生はかない」は入れました。

日本語で「人生」と歌われるものには”重い”曲が多いと。もう少し言えば、「人生」という言葉が曲の中で歌われるときの言葉の響きにちょっと、いや、かなり抵抗があるんですね。でも、不思議なことに外国人であるバートン・クレーンさんが片言の日本語で歌った「人生」という言葉には全然抵抗がない。

で、選曲をしているときに、大瀧さんの曲の中に「人生」と歌っているものがあるんだろうかと考えたんですね。でも、全然浮かばなかったので、きっと1曲もないんだろうと思っていたら、なんとあったんですね。まさに『ロング・バケイション』の中に。B面2曲目に収録された「スピーチ・バルーン」という曲。


動き出した甲板(デッキ)は
君の人生運び去る


と。詞はもちろん松本隆さん。

この「スピーチ・バルーン」の「人生」について大瀧さんがこんなことを語っていました。大瀧さんも相当抵抗があったみたいです。


「スピーチ・バルーン」じゃ、「人生」まで出てくるんだよ。俺もう嫌でさあ。「君の人生」だよ。カンベンしてよって思ったけどね。自分の中のプロデューサー的部分としては、そんなの歌えばいいじゃない、って思ってんだけど、歌手として嫌なの。だから1人でブツブツ言ってんの。でも後で聞くとねえ、ちょっと他の人が歌う「人生」や「お前」とは違うっていう風に自分では思うんだよね。嫌な言葉ほど表現のしかたが上手いんじゃないかと思うんだよ。

ということで改めて「スピーチ・バルーン」のその部分を聴いてみたら、確かに日本語の歌にありがちな”重さ”とか”湿り気”が全くないですね。気がつかないはず。「じんせい」の「せい」にあたりの息の抜き方はさすが、という感じです。


でも、改めて考えてみると、松本さんって大瀧さんが「人生」なんて言葉を嫌いだってことはきっと知っていたはず。そこをあえて入れているんでしょうね。大滝はどう歌うかって。


ところで益田ミリさんの「今日の人生」のタイトルがときどきこんなふうに「人生」という字が白抜きの言葉にされているの気づいてました? ほかにも「の」が白抜きになっていたり「今日」が白抜きになっていたりと、いろんなパターンがあります。

この白抜きの人生にはどんな意味があるんだろう。

動き出した甲板(デッキ)は 君の人生運び去る_a0285828_21123808.jpg


# by hinaseno | 2017-05-07 08:00 | ナイアガラ | Comments(0)

先日おひさまゆうびん舎で購入した益田ミリさんの『今日の人生』、毎晩寝る前に少しずつ読んでいます。ときに笑わせてもらったり、ときにどきっとさせられたりしながらも、ほとんど共感を覚える話ばかり。本当にいい本ですね。

さて、その最後のページに収められたこのセリフが空白になっているマンガ。

「2017年5月9日の人生」_a0285828_12324183.jpg

右側の「2017年5月9日の人生」が3日後に迫ってきたので、今日書いておきます。きっとすごいことをいくつも経験した余韻で放心状態でいる一日になるはずの2017年5月9日今日の人生です。

「2017年5月9日の人生」_a0285828_15301979.jpg

それでは少し未来の5月9日に。


# by hinaseno | 2017-05-06 12:33 | 雑記 | Comments(0)

BREEZEがつながる


大瀧詠一→ペリー・コモとつながった「BREEZE」つながりの話の続き。

以前、ペリー・コモが歌ったジャック・ケラー作曲の「Beats There A Heart So True」という曲にまつわるかなり長い話をしたとき、その最終回でこんな願いを書きました。


いずれにしても、これほど数々の名曲を作っている偉大な作曲家でありながら、ドン・カーシュナーが語っていたようにジャック・ケラーほど過小評価されている人はいないですね。同じアルドン系のスタッフライターの作品を集めたコンピレーションが山ほど出ているのに、彼の作品集は1つもない。宮治さん、やってくれないかな。日本独自編集で。ジャック・ケラーが選曲したあの80曲に、そこからもれた素敵な曲を20曲集めたCDをもう1枚プラスして5枚組計100曲で。お金いくらでも出します(上限はあるけど)。
それから野口久和さんにはビッグバンド with BREEZEで「Beats There A Heart So True」を演奏し続けてほしいですね。一度生で聴いてみたいけど、願わくば次に出されるCDに収録してもらえたらと。

この2つめに書いた願いが実現することになったんですね。このゴールデンウィークの最終日に野口久和さん率いるビッグバンドであの「Beats There A Heart So True」が再演されることになったんです。

この曲で歌を歌っているのがBREEZEというコーラスグループ。グループの名付け親はあの和田誠さん。つながってます。


実は5年前に演奏されたときからBREEZEのメンバーがお一人交代されているということだったので再演は難しいとの話を伺っていたんですね。無理らしいと。ところが、どうやら新たなメンバーを入れて歌われるようになったんですね。素晴らしい。

「Beats There A Heart So True」という曲については僕とアゲインの石川さんの二人(だけ)でワーワーと騒いでいて、僕のワーワーは大して影響力はないけど、石川さんは最近では”声を普通にして”しゃべっただけでも何かを動かす影響をもってきているようです。あるいはもともと奇跡を呼ぶ力をもっているのか。

こうなった以上行かないわけにはいきません。楽しみすぎて心が張り裂けそうです。その瞬間、号泣するかもしれません。


さて、最後に、もうひとつBREEZEつながりの話を。先日手に入れた『A LONG VACATION』の話です。

何度か書いていますが『A LONG VACATION』でいちばん好きな曲はA面2曲目の「Velvet Motel」という曲。1曲目の「君は天然色」と3曲目の「カナリア諸島にて」という超強力な曲に挟まれてちょっと目立たない感じになっていますが、「君は天然色」も「カナリア諸島にて」もこの「Velvet Motel」という曲があればこそさらに輝きを増しているんですね。僕としては「君は天然色」のピアノのエンディングから「Velvet Motel」という曲は始まっています。そしてこの曲があってはじめて次の「カナリア諸島にて」が始まる。そう、「Venus In Blue Jeans」の前には「Don’t Ask Me To Be Friends」がなくてはならないように。

で、この「Velvet Motel」の原題が「Summer Breeze」。『NIAGARA SONG BOOK』に収録された「Velvet Motel」のタイトルが「Summer Breeze」となっていて、一体どういうことなんだろうと思っていたら、実は大瀧さんがアン・ルイスのために「Summer Breeze」というタイトルで書いた曲がボツになって、で、ちょっとメロディーを書き足して自分で歌ったのが「Velvet Motel」。このあたりの事情は「君は天然色」と同じ。

今にして思えば『A LONG VACATION』の帯に「BREEZE」という言葉を入れたのは大瀧さんなりのメッセージだったのかもしれません。

BREEZEがつながる_a0285828_12512738.jpg

というわけで『NIAGARA SONG BOOK』の「Summer Breeze」を貼っておきます。

この音源の2曲目(このアルバムでもA2ですね)に収録。4:18あたりから「Summer Breeze」が始まります。




# by hinaseno | 2017-05-05 12:53 | 音楽 | Comments(0)