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by hinaseno
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The Blendersの「Little Small Town Girl」が収録された『Street Corner Symphonies: The Complete Story of DOO WOP Volume 3: 1951』の話を少し。

先日「第1項・第1章をとばしました」と書きましたが、実際にはこのあたりも「第1項・第1章」でしょうね。ロックンロール、ドゥーワップの序章の一つです。例のレイヴンズ、オリオールズは当然収録。
1曲目に収録されているのはThe Dominoesの「Sixty-Minute Man」。大瀧さんを講師に迎えた例の坂本龍一さんの「コモンズ:スコラ」の「ロックへの道」で2曲目にかかった曲です。歌詞が笑えるんですね。選曲はもちろん大瀧さん。



それから『アメリカン・ポップス伝パート4 第2夜』で、ジョニー・オーティスがらみでかかったロビンズ(のちのコースターズ)の「That's What the Good Book Says」も収録されています。これは大好きな曲。タイトルもいいですね。”book”にももちろん反応します。
曲を書いたのはリーバー=ストーラー。彼らの最初期の作品ですね。もちろんロビンズに書いた最初の曲。イントロのヴィブラフォンを演奏しているのはジョニー・オーティスだと大瀧さんは言ってました。



そういえば『アメリカン・ポップス伝パート4 第2夜』ではこの曲の前にRoyalsの「Every Beat of My Heart」がかかりました。こちらもイントロのヴィヴラフォンが印象的な曲でやはり演奏はジョニー・オーティス。曲を書いたのもジョニー・オーティス。これも本当に素晴らしい曲で一時期こればっかり聴いていました。
ちなみにRoyalsの「Every Beat of My Heart」は『Street Corner Symphonies』の「Volume 4: 1954」に収録されています。大瀧さんもBear Familyのファンだったので、おそらくこのCDを持たれていたように思います。



さて、話はようやくThe Blendersの「Little Small Town Girl」のことに。
曲を書いたのはHugo RubensとJules Lomanのコンビ。最初はグループのメンバーかと思っていましたがそうではなくちゃんと楽譜も作られていて他の歌手にも歌われていました。
曲が書かれたのはどうやら1945年。第二次世界大戦終結の年ですね。書かれたのが終結する前だったのか終結後だったのかはわかりません。作詞がJules Lomanで作曲がHugo Rubensとのこと。でも、このコンビの曲は他に全くといっていいほど見当たりません。どういう人たちなんでしょうか。

The Blenders以外にこの曲を歌っているのが確認できたのは次の三組。いずれも1950年前後に歌われています。
一番古いのは1947年にデルタ・リズム・ボーイズの歌ったもの。



それからエラ・フィッツジェラルドをフィーチャーしたインク・スポットのバージョン。The Blendersと同じ1951年のリリース。



やはり1951年にエディ・ハワードという歌手も歌っていました。きっとどちらかがヒットしたんでしょうね。



どのバージョンもそれぞれに魅力があります。曲がいいからこそです。
by hinaseno | 2015-12-16 11:43 | 音楽 | Comments(0)

いつもチェックしている写真投稿サイトで、今朝貼られていた写真。たぶんどこかの田舎の小さな町の朝の風景。
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本であれ、映画であれ、写真であれ「小さな町」には反応してしまいます。『Street Corner Symphonies: The Complete Story of DOO WOP』に収録されたThe Blendersというグループの「Little Small Town Girl」という曲に惹かれるきっかけとなったのも、そこに「Small Town」という言葉があったから。

話は少しそれてしまいますが、僕は「小さな町」というものに対して二通りのイメージを持っています。
ひとつは文字通りの小さな町。アメリカではそれをスモールタウンといいます。人口が1万にも満たない小さな町がアメリカには星の数ほどあるんですね。僕が「スモールタウン」という言葉を強く意識するようになったのは駒沢敏器の『語るに足る、ささやかな人生』という本。単行本の副題には「アメリカの小さな町で」という言葉がついています。
スモールタウンを舞台にした最も代表的な小説と言えば、なんといってもシャーウッド・アンダスンの『ワインズバーグ・オハイオ』。この小説には「A Group of Tales of Ohio Small Town Life」という副題がついています。「オハイオ州のスモールタウンの生活についての物語の集まり」という意味ですね。講談社文芸文庫から出ている文庫本では「オハイオの田舎町についての一群の物語」と訳されています。
ちなみに講談社文芸文庫の『ワインズバーグ・オハイオ』を翻訳しているのは小島信夫と浜本武雄。小島信夫と浜本武雄といえば夏葉社から復刻されたバーナード・マラマッドの『レンブラントの帽子』の翻訳者でもあります(『レンブラントの帽子』にはもう一人、井上譲治が翻訳者に加わっています)。『レンブラントの帽子』は僕が夏葉社という出版者と出会った記念すべき本。この本によってバーナード・マラマッドという素晴らしい作家を知りました。
実は最近、マラマッドにどっぷりとはまっていて、日本で翻訳されたマラマッドの小説を集めている最中。でも、なかなか見つからない。
今、読んでいるのは『アシスタント』。夏葉社の『冬の本』で柴田元幸さんが冬の本として紹介、絶賛していたのがこの『アシスタント』でした。
『アシスタント』の舞台はニューヨーク。大都市ではあるけれども、この小説に描かれているのは大都市の中の小さな町。
そう、僕が「小さな町」というものに対してもっているもう一つのイメージがこの大都市の中の小さな町。
このイメージを持ったのは以前にも紹介した川本三郎さんの『それぞれの東京』という本の中でのこの言葉でした。

大都市である東京も、よく見れば小さな町、歩いて暮らすことの出来る「わが町」の集積である。大きな東京の中の小さな東京にこそ惹かれる。

小山清の『小さな町』に描かれた作品の舞台は、まさに大きな東京の中の小さな町。

川本三郎さんはもちろん「スモールタウン」を舞台にした小説が好きで、その代表的な作品として必ず挙げられていたのがシャーウッド・アンダスンの『ワインズバーグ・オハイオ』とソーントン・ワイルダーの『わが町』でした。

そういえば世田谷ピンポンズさんの『紅い花』の最後に収められている曲のタイトルは「わが町」。このタイトルを見たときに思ったのは、ああ、きっと世田谷ピンポンズさんも僕の考えるような小さな町が好きなんだろうなということでした。

美しく生きていきたいな 美しく生きていきたいな
身の丈に合った幸せ抱えて
美しく生きていきたいな 美しく生きていきたいな
身の丈以上の幸せ噛みしめて
(世田谷ピンポンズ「わが町」より)

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by hinaseno | 2015-12-15 14:50 | 音楽 | Comments(0)

世田谷ピンポンズさんの「南の国から来た女の子」というチャーミングな曲の流れで、先日このブログで「〜から来た女の子たちと男の子たち」を特集したら、その1曲目に紹介したボブ・ディランの「Girl From The North Country(北国の少女)」が先週の日曜日の山下達郎さんのサンデー・ソングブックでかかってびっくり。
サンソンの特集は「〜から来た女の子たちと男の子たち」ではなくて「北」。で、昨日はその流れで「東南東」特集。「南」の曲として世田谷ピンポンズさんの「南の国から来た女の子」がかかればと思ったけど、やっぱりかかりませんでした。あの番組でフォークと呼ばれるジャンルがかかることはめったにありません。ボブ・ディランの曲がかかるのも本当にめずらしいことなんですね。日本のフォークでかかったことがあるのは高田渡だけじゃないでしょうか。高田渡だけは達郎さんは好きだと言っていました。いつかサンソンで木山捷平の詩をもとにして作られた「長屋の路地に」がかかったらいいですね。

さて、北の国から来た女の子も南の国から来た女の子も以前住んでいたのはおそらくは小さな町。彼女たちの夢はその小さな町では実現できなくて大きな町にやってきたんでしょうね。
という話の流れで最近いちばん気に入っている曲のことを。

昨日はイギリスのACEという再発レーベルから出たCDの話でしたが、今日はドイツのBear Familyから数年前に出たCDの話から。
Bear Familyといえばブックレットも充実した大きなBoxですが、それ以外の単独のCDでも流通の関係かアマゾンでも値段がかなり高くてAceほどには気軽に買えない状況。国内盤なら3枚買えるくらいの値段になっています。
そのBear Familyから最近出たコンピレーション物で一番欲しいのが『Street Corner Symphonies: The Complete Story of DOO WOP』というシリーズ。ドゥーワップの前夜の時代から1963年(ビートルズ登場の前年ですね)まで年ごとに1枚のCDにまとめています。全部で15枚。素晴らしい企画ですね。選曲も素晴らしくて、押えるべき曲は押えつつ、知らない曲も収録。Rhinoの『THE DOO WOP BOX』に関わっていた人もいるようなので、いろんな意味で信頼がおけます。

YouTubeにはVol.1からVol.15までの紹介の映像があるのでずらっと並べておきます。これを聴くだけでもわくわくしますね。ドーワップの歴史もよくわかります。
Vol.1: 1939-1949


Vol.2: 1950


Vol.3: 1951


Vol.4: 1952


Vol.5: 1953


Vol.6: 1954


Vol.7: 1955


Vol.8: 1956


Vol.9: 1957


Vol.10: 1958


Vol.11: 1959


Vol.12: 1960


Vol.13: 1961


Vol.14: 1962


Vol.15: 1963
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全部欲しい、と思いつつ、とりあえず買ったのが「Volume 3: 1951」でした。第1項・第1章をとばしました
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理由はこのCDの中にお気に入りの曲がいくつもあったことともう一つ。先日「Never In A Million Years」の素晴らしいカバーを紹介したThe Blendersというグループの曲の素敵なタイトルの曲が収録されていたんですね。
タイトルは「Little Small Town Girl」。「Little Small Town Girl (With the Big Town Dreams)」と括弧つきの副題がつくこともあるようです。
YouTubeで試しに聴いてみたら詞だけでなく最高に素敵な曲でした。


by hinaseno | 2015-12-14 11:45 | 音楽 | Comments(0)

A Few Of The Things We Love


オールディーズの再発レーベルとして最も信頼しているのは何度も書いているようにイギリスのACEとドイツのBear Family。昔はアメリカのRhinoがダントツだったんですが、今やRhinoはなんだかわけのわからないレーベルになってしまいました。
イギリスのACEはふた月に1度くらいのペースで新譜が何枚かリリースされていて、そのうち1枚くらいは欲しくなるものが必ずあります。先日届いたのはマーメイズ(The Murmaids)という3人組のガールグループのCD。
マーメイズといえば何といっても「Popsicles And Icicles」。まだ無名だったデヴィッド・ゲイツが書いたとびっきりドリーミーな曲で、昔から大好きでした。



「Popsicles And Icicles」は全米3位の大ヒット。でも、結局これが唯一のヒットなんですね。
「Popsicles And Icicles」の大ヒットを受けてデヴィッド・ゲイツがもう1曲同じタイプの「Heartbreak Ahead」を書いています。これもいい曲なんですが全くヒットせず。「Popsicles And Icicles」がヒットしたのは1963年暮れ、そして「Heartbreak Ahead」がリリースされたのは翌64年2月。この間、何があったかといえばビートルズの登場。ビートルズによってふっとばされてしまったわけです。本当にビートルズさえいなければと思ってしまいます。にっくきビートルズ、です。
というわけでマーメイズに関しては「Popsicles And Icicles」はいろんなコンピレーションに収録されていますが、それ以外の曲はほとんど知らなかったので、マーメイズの単独のCDが発売されるなんて思いもよりませんでした。
デヴィッド・ゲイツが書いた未聴曲、未発表曲が収録されているかなと期待していました、残念ながらそれはありませんでした。
でも、1曲素晴らしい曲がありました。2曲目に収録された「Wild And Wonderful」という曲。「Heartbreak Ahead」に続く第3弾シングル。曲が発売されたのは1964年5月。



曲を書いたのはマーク・バーカンとベン・ローリー(ラレイではありません)のコンビ。このコンビは1963年暮れから1964年にかけてレスリー・ゴーアに優れた曲をいくつもかいています。「She's A Fool」、「That's The Way Boys Are」、I Don't Wanna Be A Loser」など、どれもヒットしています。レスリー・ゴーアってやっぱりすごいですね。もちろん曲がよかったからこそですが。

さて、マーメイズの「Wild And Wonderful」、クレジットを見るとアレンジがペリー・ボトキン・ジュニア。悪かろうはずがありません。「Popsicles And Icicles」なんかのドリーミーな雰囲気は残しつつ、耳の超えた人たちにも十分に納得させる曲に仕上がっています。特にサビの部分が素晴らしいですね。
結局、これも全くヒットしませんでした。

でも、彼女たちはもう少しシングルを出し続けています。
びっくりしたのは最後に収録された「How Do You Do It」という曲。ある女性をメンバーに加えて4人のグループにしてビートルズみたいな曲を歌っています。グループ名はThe Lady-Bugs。この加わった女性というのがジャッキー・デシャノン。確かに彼女の声が聞こえます。
YouTubeには彼女たちが歌っている映像があってびっくり。でも、画像が悪すぎてジャッキー・デシャノンがどれだかわかりません。



ところでこのマーメイズのCD。アルバムタイトルは「A Few Of The Things We Love」。「わたしたちが大好きなもののほんの少し」。いいタイトルですね。これは「Popsicles And Icicles」の歌詞の中に出て来る言葉。コンピレーションアルバムのタイトルというのは、たいていは一番有名な曲のタイトルを付けたりするんですが、
ACEはときどきこんなふうに有名な歌詞の印象的なフレーズを取り出してタイトルにします。こういうのもACEの好きなところ。

「Popsicles And Icicles」の歌詞を書いたのもデヴィッド・ゲイツ。女の子の気持ちになって書いてるんですね。こんなティーンエイジャーのためのたわいのない歌詞の曲が1963年には大ヒットしていたわけです。

Popsicles, icicles, baseball and fancy clothes
These are a few of the things he loves
He loves Levis and brown eyes
And wind blowin' through his hair
These are a part of the boy I love

Bright stars and guitars and
Drive-ins on Friday night
These are a few of the things we love

ポプシクル、アイシクル、野球、そして派手な服
これらは彼が大好きなもののほんの少し
彼の好きなリーヴァイス、茶色の瞳
彼の髪の毛を吹き抜ける風
これらはわたしが大好きな男の子の一部

明るい星とギターと
金曜日の夜のドライブイン
これらはわたしたちが大好きなもののほんの少し

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by hinaseno | 2015-12-12 12:48 | 音楽 | Comments(0)

今朝、毎朝見ているブログを見たら世田谷ピンポンズさんの話が書かれていて思わずにっこりでした。
まずはこちらの林哲夫さんのブログ。林さんが善行堂を訪れたら世田谷ピンポンズさんがやってきたとのこと。で、善行堂さんのブログを見たらそのことが書かれていました。夏葉社の島田さんも立ち寄られたとのこと。
林さんには「世田谷ピンポンズ君」、善行さんには「世田ポン」と呼ばれてるんですね。

ところで昨日、ブログを書き上げた後、ある方からの手紙が届きました。そこには驚きの内容が。
昨日のブログで木山捷平の単行本に未収録の作品の話を書きましたが、どうやら来年の1月に木山捷平のすごい本が出るようです。
連絡をいただいたのは『木山捷平資料集』を作成された清音読書会のNさん。講談社文芸文庫で木山捷平の作品が出続けているのはNさんのご努力があってのこと。Nさんの手紙によると、数年前に上林暁の『ツェッペリン飛行船と黙想』を出版した幻戯書房から木山捷平の単行本未掲載の作品を集めた本が出版されるのが決まったようです。どうやら2冊。昨日紹介した「ヰナカの話」の話は収録されていないようですが、この日に紹介した「小田川」は収録されているとのこと。

いやな出来事が多い世の中ですが、名声や冨といったものとは無縁なところでたゆまぬ努力されている方々のお陰で、ときどきこういう幸せに巡り合うことができています。小さいけど確かな幸せです。
総社のNさんに心から感謝申し上げます。

ああ、来年が楽しみ。
by hinaseno | 2015-12-10 09:02 | 木山捷平 | Comments(0)

講談社文芸文庫から来年1月に木山捷平の『酔いざめ日記』が出ることになったようです。新しい作品も出るし、以前の作品も絶版にならない状態が続いているというのはすばらしい、というか本当にすごいこと。現在、講談社文芸文庫から最も多く出ているのは木山捷平の作品ではないでしょうか。
個人的な願いとしては、いつか未発表作品を入れた木山捷平全集が出版されたらいいのですが。

ということで、昨日は12月8日だったので、あの日の日記を見てみました。
あの日とは昭和16年12月8日。太平洋戦争開戦の日ですね。

月、日本晴。 
昼一時頃目をさましたら、近所のラジオがシンガポールとか、ホンコン襲撃とか言っている。それで戦争の始まったのを知った。じっとしていられず平島君の所へ行く。皆ラジオをきいている。十一時とか十一時半とかに、最初のラジオをやったそうだ。原稿書きかけたが進まず。赤い太陽没す。銀杏やポプラの葉を少々のこしている。宮下湯の煙は北へなびく。軒ではブヨがしきりにまっている。
(中略)
灯火管制。フミヤでのんでいたら野村君来り、千代でのみ、家に帰って二人で将棋をした。

中略部分では、朝日新聞夕刊の見出しが引用されています。
「赤い太陽没す。銀杏やポプラの葉を少々のこしている。宮下湯の煙は北へなびく。軒ではブヨがしきりにまっている」と 木山さんの日記にはめずらしく風景の描写が出てきます。不安な気持ちを反映していることは明らかですね。
でも、灯火管制がしかれて真っ暗な中、2軒も飲み屋に行っているのが木山さんらしい。どうやらこの日は、というかこの日もつけで飲んでいたようです。

ところで、この日、書きかけたけど進まなかった原稿というのは何だろうかと気になります。
翌日の日記を見ると、最初に日本軍の奇襲が大成功したことを伝える新聞の見出しを引用した後、こんなことが書かれています。

「月刊文章」稿料十九円。伊勢元で酒四升買う。(一円四銭)夜フミヤに行く、一昨日、昨日、今日と合計四円四十五銭支払う。


この「月刊文章」に掲載されたのは「山ぐみ」という作品。これは現在、講談社文芸文庫から出ている『氏神さま/春雨/耳学問』に収録されています。6歳になる息子を田舎の老婆のもとにあずける話。主人公の老婆が住む田舎はN村。新山村のことですね。
この作品が書かれたのはたぶん数週間前のはず。せっかく原稿料をもらったのにいきなりその3分の1ほどを酒代に使っています。困ったもんです。奥さんもたまったもんじゃないでしょうね。
で、この後、こんな記述が出てきます。
『ヰナカの話』十枚書き上げて三時となる。

どうやら昨日書こうとして書けなかったのはこの作品のようです。この『ヰナカの話』は『木山捷平資料集』(清音読書会)によると『日本農業新聞』の1月号に掲載されたようです。でもその後出版された単行本や全集には収められていません。
開戦のニュースの中、おそらくはかなり動揺した気持ちの中で当時37歳だった木山さんがいったいどんな作品を書いたのだろうかと読んでみたい気がします。タイトルから察すると、やはり田舎に帰郷した子供の話なのかもしれません。

この作品、果たして読める日が来るんでしょうか。
by hinaseno | 2015-12-09 11:21 | 木山捷平 | Comments(0)

ハリー・レヴェルという作曲家の話、最後にいくつかお気に入りの曲を紹介しておきます。作詞はすべてマック・ゴードン。
まずは「Did You Ever See a Dream Walking」。この曲はハリー・レヴェルの代表曲でたくさんの人が歌っていますが、あのフランキー・アヴァロンが歌っているものを。ということはたぶんアレンジはピーター・デ・アンジェリス。



次は「Goodnight, My Love」。ジェシー・ベルヴィンやフリートウッズが歌っているのとは同名異曲。大好きなペトゥラ・クラークが歌っていますがYouTubeになかったのでティナ・ルイスという女性シンガーが歌っているものを。



ペトゥラ・クラークは「Afraid To Dream」という素敵な曲も歌っていますが、残念ながらこれもYouTubeにはありません。仕方がないのでジョセフィン・ベイカーという女性シンガーが歌ったものを。



次は大好きなファッツ・ウォーラーの歌っている「Don't Let It Bother You」を。



興味深いのはShirley Templeという女の子が出演したいくつかのミュージカル映画の曲をマック・ゴードンとハリー・レヴェルが作っていたようで、どれもとってもかわいいです。
いくつか貼っておきます。途中からAlice Fayという女性シンガーが歌っているものもあります。
「But Definitely」



「Oh ! My Goodness」



「An Old Straw Hat」



「When I'm With You」



最後に「Paris in the Spring」という曲を。この曲はいろんな人が演奏していますがミッシェル・ルグランの『I Love Paris』というアルバムに収められたものを。この画像の1曲目におさめられています。ルグランのこの『I Love Paris』と『Vienna Holiday』と『Holiday In Rome』はジャケットが最高に素敵なんですね。ずっと欲しいと思っているものです。もちろんLPで。


by hinaseno | 2015-12-07 12:24 | 音楽 | Comments(0)

ついに『ゴー!ゴー!ナイアガラ』を172回、最初から通して全部聴きました。聴き始めたのが今年の初めだったのでほぼ1年。いろんなことを学ばせてもらいました。自分自身が一番変わったことといえば、それまでどちらかといえば低く見ていたカバーというものを心から楽しめるようになったこと。優れたカバーというのはオリジナルと同等以上のものだと思えるようになったことでした。きっとそれが大瀧さんの最も伝えたかったことではないかと。
たとえば最終回から3回前に放送されたディオンの特集。ディオンのヒット曲、すぐれた曲は山ほどあって、とても30分、1回限りの放送ではかけきれないのですが、でも、かけた10曲のうちディオンの曲をカバーした曲が2曲、カバーではないけどディオンの曲に影響を受けた曲を2曲かけています。つまり、ディオンの曲はたった6曲しかかけていないんですね。このあたりにも大瀧さんらしさがよく出ています。

さて、カバーにもいろいろとありますが、今、一番関心があるのは1930年代あたりに作られたスタンダード・ソングを新しい感覚で1950年代から60代初頭に蘇らせた曲。アメリカン・ポップスにはそんな曲がいかに多かったかというのを思い知らされる日々です。
そういうのを積極的にやっていた最も代表的なプロデューサー、アレンジャーがステュ・フィリップスですね。ジャズにも造詣が深く、新しいジャンルの音楽にも貪欲だったからこそなし得たことだろうと思います。
で、もうひとりの優れた人物がリンダ・スコットの曲のプロデューサー、アレンジャーであるハッチ・デイヴィー。
リンダ・スコットといえば何といっても「I've Told Ev'ry Little Star」。



アレンジはハッチ・デイヴィー。これがスタンダードソングと知ったのはわりと最近のことでした。本来はこんな感じの曲。



そのリンダ・スコットの「Never In A Million Years」。ハッチ・デイヴィーのプロデュース、アレンジ。基本的には「I've Told Ev'ry Little Star」のアレンジを踏襲していますが斬新なアレンジ。本当にいい曲です。作曲ハリー・レヴェル、作詞マック・ゴードン。



ちなみに「Never In A Million Years」というのは「百万年たっても絶対にありえない」ってこと。
歌詞を見ると”Never in a million years / Could there be another you”という言葉で始まります。「あなたの代りになるような人は絶対にあらわれるはずがない」ということですね。
この歌詞をみてすぐに思い浮かべたのはこの「There Will Never Be Another You」。この曲はなんといってもクリス・モンテスのカバーですね。これまた本当に素晴らしいカバーです。



作詞は同じマック・ゴードン。作曲はハリー・レヴェルではなくハリー・ウォーレン。「There Will Never Be Another You」の歌詞の中には”I may dream a million dreams”なんて言葉も出てきます。もしかしたら同じ時期に書かれた詞なのかもしれません。

「Never In A Million Years」という曲がスタンダード・ソングだとわかっていろいろと調べたところ、僕がこの曲を最もよく聴いたのはジューン・ハットンという女性シンガーの『アフターグロウ』というアルバムの1曲目に収められたものでした。
このアルバムはとってもロマンチックでよく聴いていましたが、どうもCDが見当たらない。たしかジャケ買いしたはず。ここで全曲聴けますね。



1曲目が「Never In A Million Years」。これが本来の曲の雰囲気で、たいていは女性シンガーにこんな感じで歌われています。
最初期に歌われたもので一番ヒットしたのは、1937年にミルドレッド・ベイリーによって歌われたもののようです。



「Never In A Million Years」のドゥーワップ・タイプの曲のカバーはないかと調べたらありました。The Blendersというグループが1952年にカバーしたもの。



The Blendersというグループはドゥーワップ前夜に活動していたグループのようですが、他の曲を聴いてもかなり実力があることがわかります。リード・シンガーの声も素晴らしいなと思ったら、どうやらあのレイヴンズのオリジナルのメンバーのひとりだったようです。どおりで。

で、これはリンダ・スコットの曲が出たすぐ後にカバーされたものようです。そのまんまですね。


by hinaseno | 2015-12-05 13:04 | 音楽 | Comments(0)

ステュ・フィリップスが1955年に日本から帰国して間もなくハリー・レヴェルから新しいアルバムのプロデュース、アレンジをしてほしいとの連絡が入ります。ハリー・レヴェルはステュ・フィリップスよりも20歳以上も年上のヴェテラン・ミュージシャン。優れたスタンダード・ナンバーをいくつも作っていることも知っていたので、ステュ・フィリップスは彼といっしょに仕事をすることに興味を持ちます。ハリー・レヴェルはその前にレス・バクスターのアレンジによる『Perfume Set To Music and Music from One of the Moon』というアルバムを出して、それがなかなか好評だったようなので、ステュ・フィリップスは彼と仕事をすることは自分が飛躍できるチャンスと考えたようです。
で、つくられたのが『Music from Out of Space』というアルバム。ありがたいことにYouTubeで全曲聴くことができました。



このアルバムでピアノを弾いているのがなんとサイ・コールマン! サイ・コールマンはステュ・フィリップスのハイスクール時代からの仲のいい友人だったようです。
サイ・コールマンは僕の大好きな女性ジャズ・シンガーであるブロッサム・ディアリーが彼の曲をいくつもとりあげているので知りました。どれもいい曲なんですね。特に好きなのはこの「I Walk a Little Faster」という曲。



この曲はもうひとりの大好きな女性ジャズ・シンガーであるビヴァリー・ケニーも歌っています。



そのビヴァリー・ケニーも歌っていますが、これまた大好きなジョニー・ソマーズが歌っている「Why Try To Change Me Now」という曲もサイ・コールマンがかいた曲。



そしてこのとってもチャーミングな「Doop-Doo-De-Doop (A Doodlin' Song)」という曲でブロッサム・ディアリーとデュエットしているのはサイ・コールマンとのこと。



サイ・コールマンの話をしているときりがないですね。またいずれ。

『Music from Out of Space』はもともとあまり資金がない中で制作され(資金を出したのはステュ・フィリップスの父親だったとのこと)、発売してもほとんど宣伝されることもなかったので、無惨な結果に終わってしまいます(ステュ・フィリップスの表現では”died a horrible death”)。彼にとって最初の大きな失敗となってしまったんですね。でも、このアルバムの制作で彼は多くのことを学んだようです。
残念な思いはハリー・レヴェルも同じだったはず。で、ハリー・レヴェルはこの3年後に亡くなっています。もしかしたらステュ・フィリップスとの仕事が最後だったのかもしれません。

ということでステュ・フィリップスとハリー・レヴェルとサイ・コールマンの貴重なスリー・ショットを。ピアノを弾いているのがサイ・コールマン。真ん中でサイ・コールマンに指示しているのがステュ・フィリップス。そしてピアノにひじをついて二人の様子をうれしそうに眺めている眼鏡のおじさんがハリー・レヴェル。
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ところでステュ・フィリップスは、当時、まだたいした実績も残していない彼のもとになぜハリー・レヴェルから声がかかったのかいまだにわからないそうです。
by hinaseno | 2015-12-03 11:54 | 音楽 | Comments(0)

ステュ・フィリップスの話に戻ります。といっても「ステュ・フィリップスって、だれ?」だと思いますが。
今日はそのステュ・フィリップスさんが本の中で「あなたがたの多くはその人の名を知らないはず」と書いている作曲家の話です。でも、僕はその人の名を知っていました。
少し前に聴いた「ゴー!ゴー!ナイアガラ」でかかったある曲に惹かれて、その作曲家を調べたらその人だったですね。で、その人の曲をいろいろと調べていた時期にステュ・フィリップスの本でその人の名が出てきたのでびっくりでした。

その作曲家の名はハリー・レヴェル(Harry Revel)。マック・ゴードン(Mack Gordon)という作詞家と組んで1930年代から魅力的な曲をいくつも書いています。マック・ゴードンといえばこのブログでも何度も紹介してきたハリー・ウォーレン(Harry Warren)とコンビを組んでいた人。
実は最初に「ゴー!ゴー!ナイアガラ」でかかったある曲に興味を持ってその曲のクレジットに「Mack Gordon/Harry Revel」と書かれているのを見たとき、この Harry RevelというのはHarry Warrenの間違い、あるいは変名なのではないかと調べたんですね。でも、そうではなく、いくつもの曲を書いた優れた作曲家であることがわかったんです。

ただ、本国アメリカでもかなりマイナーな人のようで、例の『イージー・トゥ・リメンバー』でもハリー・レヴェルの名は取り上げられていません。まあ、あの本はハリー・ウォーレンが大きく取り上げられていただけでも奇跡的な本ではあるのですが、そのハリー・ウォーレンですら「曲がよく知られているのに対して、ウォーレンの名前はあまり知られていなし」と書かれているので仕方がない気もしますが。
大瀧さんもしばしば語られていたことですが、大切なのは曲が残ること。そして曲が残ることこそが音楽家にとって幸福なことなんだと。ということで僕も名前を語るよりは曲を語っていきたいと思います。

ステュ・フィリップスがハリー・レヴェルの代表曲として紹介しているのは「Stay as Sweet as You Are」と「With My Eyes Wide Open I'm Dreaming」。
「Stay as Sweet as You Are」はナット・キング・コールの『恋こそはすべて(Love Is the Thing )』に収録されていて知っていましたが「With My Eyes Wide Open I'm Dreaming」という曲は知りませんでした。
ということでナット・キング・コールの「Stay as Sweet as You Are」を。



それからパティ・ペイジの歌う「With My Eyes Wide Open I'm Dreaming」も。



ハリー・レヴェルの曲を調べたらいくつも知っている曲があって、しかもどの曲もドリーミーでロマンチックなんですね。
たとえばチェット・ベイカーが歌っている「There's A Lull In My Life」は大好きな曲。



それからランディ・ニューマンが歌っている「Underneath The Harlem Moon」も最高にチャーミングな曲。



ランディ・ニューマンの「Underneath The Harlem Moon」は、『12 Songs』というアルバムのA面の最後に収録されているのですが、この曲だけカバー。しかもハリー・レヴェルの曲ではそれほど有名ではない曲をあえて取り上げているんですね。このあたりどういういきさつで取り上げたのか興味深いものがあります。

さて、僕がハリー・レヴェルという作曲家に興味を持ったのはこの曲でした。リンダ・スコットの「Never In A Million Years」。



この曲のクレジットを見て、ハリー・ウォーレンの間違いではないかと思ったところから始まりました。
by hinaseno | 2015-12-01 13:41 | 音楽 | Comments(0)