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by hinaseno
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カテゴリ:映画( 108 )


牛窓暮色(最終回)


想田和弘さんの『港町』の岡山での上映も今日が最終日。できたら2、3度は見に行こうと思っていましたが、結局1度しか行けませんでした。でも、6月末から大好きな海街の一つである尾道で上映されるので、そちらでぜひ見たいと思っています。

ということで長く続いたこの話も今日が最終回ということにします。牛窓のことになるといつまでも書き続けたくなるので、そろそろきりをつけないといけないので。


今日最初に紹介するのは、映画を見るひと月前(3月末)に牛窓に行ったときに撮った写真を。牛窓で撮った写真の中では個人的にはお気に入りの1枚です。

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映画を改めて見直してきちんと確認しようと思っていたんですが、『港町』にはたぶん子供の姿が1度も映っていなかったはず。出てくるのは老人ばかり。過疎、そして高齢化という日本の地方のどこにでも見られる姿が映し出されています。

確かに牛窓に行くと、海沿いにいる観光客は別にして、一歩路地に入るとめったに子供の姿を見ることはありません。ましてや何人かの子供達が遊んでいるところには今まで出くわしたことがなかったけど、この日、この場所で、5、6人の子供が遊びまわっていたんですね。本当にめずらしい風景。


向こうの正面に見える3階建ての家はこのブログでも何度か紹介していますね。窓に映画俳優を描いた絵が貼られたものが残っている例の建物です。個人的には現在牛窓に残っている中で最も貴重だと思っています。いつ取り壊されてもおかしくない状態ですが、とにかくこの建物は失われないでほしい。

で、右手にあるのが、この写真を撮った数日前に放送された『鶴瓶の家族に乾杯』で、鶴瓶と蛭子さんが立ち寄った正本写真館。遊んでいる子供の何人かはそこの子供かな。


この正本写真館は何代にもわたって写真館を営んでいるのですが、その先代か先々代の人が撮った写真を集めたのが以前も紹介したことのある『あるく みる きく 231号』(1986年5月)。そこには、昔の牛窓の貴重な写真が満載。で、このページに掲載されている左の写真はまさにこの場所を撮っているんですね。

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これは昭和25年ごろに撮影された写真とのこと。もしかしたらこの写真、あの3階建ての建物の3階の部屋から撮ったものかもしれません。

それにしても子供の数の多いこと。ちなみに右の写真はニコニコ食堂のある広場で行われている盆踊りを写したものなのですが、遊女屋であった建物の2階にまで子供が上がりこんでいます。

その遊女屋の建物に新しくできた匙屋さんの2階から見えるのがこの風景。こんな風景が見られるなんて思ってもみませんでした。

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さて、一番上に紹介した子供たちを撮った場所から、少しだけ歩いて反対側を撮ったのがこの写真。

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右に見える白い建物は正本写真館の旧館。正面には昔牛窓で撮影された『カンゾー先生』のポスターが貼られたままです。

で、この正面に見える階段を上ったところにあるのが『港町』のクミさんが想田さんたちを連れて行った丘の上の病院。以前は国民宿舎で、あの井伏鱒二が昔療養を兼ねて泊まったところ(「備前牛窓」)。

ということでこちらの階段からは何度か丘に上がっていましたが、あんな裏道があったとは知りませんでした。


知らなかったと言えば『港町』ではこんな路地も映りました。

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白い猫が歩いていますが、この猫は『港町』に何度も映るシロではありません。

この路地、どこだろうと調べたら、以前紹介した地図からは外れた場所にありました。

ここですね。猫もいっぱいいました。

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ちなみにこの路地、実は牛窓に1軒だけある本屋さんの裏側にあったんですね。本屋さんの正面にはホテル・リマーニの真っ白な建物があるんですが、まさか裏にこんな路地があるとは知りませんでした。

実は去年、この本屋さんに行ったときに店内に猫が何匹かいてびっくりしたんですね。本の間で平気でごろごろしている。

で、何枚か写真を撮っていたんですが、想田さんの『港町』に映ったのはこの猫じゃないかな。

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写真を撮るときに、猫の後ろに飾られている『kotoba』という雑誌の表紙の池澤夏樹、山極寿一の名前が並んでいるのが目に入ったので買いました。


さて、最後に『港町』のパンフレットのことを。これがまた最高に素晴らしいんですね。映画のいろんなシーンをとらえた写真も素晴らしいし、多方面から寄せられたコメントも素晴らしい。

是枝監督、内田樹先生、平川さん、そして寺尾紗穂さん…。

で、このパンフレットには大好きな詩人である小池昌代さんと想田さんの対談まで掲載されています。

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牛窓を舞台にしたこんな素晴らしい映画が作られて、さらにそのパンフレットに大好きな人たちの名前が並ぶ日がやってこようとは、このブログに牛窓を書き始めたときには予想すらできませんでした。本当に信じられない。ただただ驚いています。


牛窓のことはこれからも何度も書いていくだろうと思います。


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by hinaseno | 2018-05-11 15:56 | 映画 | Comments(0)

牛窓暮色(その9)


牛窓が暮色に包まれようとした時間、今は病院となっている大きな建物のある丘の上で(その丘の背後にある山には墓地が広がっている)、クミさんが語り出したのが奪われた息子の物語でした。


クミさんは頰に当てた手(彼女が話しをするときの癖)を何度も震わせ、坂を一気に登ってきたためとは思えないような荒い息を吐きながらその物語を語り続けます。それはどこまで信じたらいいのだろうかと思えるような話の連続。明らかに不自然で矛盾する部分はいくつもあるけれど、カメラを持つ想田さんは、ときどき相づち程度の言葉をはさむだけでクミさんの話を聴き続けます。

日はどんどんと暮れていき、その場にいた想田さんとともに、見ているこちらも異界へとひきづられていきそうになってしまう。おそらく想田さんも危険なものを感じていたはず。


そんなときその場に現れたのが白髪の年老いた女性でした。彼女は少し離れたところからクミさんと想田さんの姿を眺めている。

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   *    *    *


このときに現れた白髪の年老いた女性は『港町』で何度か登場しているものの、ほとんど語りません。ただ、日が経つにつれて、この女性の存在が大きなものとなっていきました。


彼女はいつもクミさんといっしょにいるけれど、クミさんが語っているときにその話に加わってくることは決してしません。少し離れている場所からクミさんの話している様子を見つめているだけ。

実はクミさんは想田さんに向かって彼女の悪口をずいぶん言ったりしているんですね。聞こえているのかどうなのかはわからないけど、クミさんがときどき向ける視線を見れば自分に関わる、あまり好ましくない話をしていることはわかるはず。でも彼女は立ち去るわけでもなく、その場に立っている。


昨日紹介したクミさんが海沿いの道を歩いて知り合いの家に干物を届けに行くシーン、実はクミさんは白髪の女性に一緒に行こうと声をかけているんですね。でも、足の悪い彼女はその誘いを断ります。杖をついた彼女の歩きぶりを見ると、とてもクミさんのあのスピードについて行くことはできないことがわかります。


ところが彼女、クミさんが丘に上ったときには付いてきていたんですね。そのことが何日か経ってとても重要に思えてきました。

なんで足の悪い彼女が、海沿いの起伏のない平らな道を歩いて行くのは拒んだのに、上り坂が続く道を、しかもかなり日が暮れているのにもかかわらず付いてきたんだろうかと。

もちろん彼女はクミさんと同じスピードで歩くことはできないので、側に付いていた想田さんの奧さんと一緒にかなり遅れて丘に到着します。


彼女の姿が見えた瞬間、ああ助かったという気がしたんですね。彼女が助けたのはクミさんなのか想田さんなのかはわからないけど。でも、彼女はそこにだれかを助けにきたのではないかと。

これ、ちょっと村上春樹的ですね。物語的にしすぎているでしょうか。


丘の上で奪われた息子のことをクミさんが語り続けるこのシーン、精神的に問題を抱えた老婆が作り話をしているだけだと処理して何も感じない人もいたのかもしれません。実際、映画館では、あの語りが続くシーンで、ときどきクスッと笑い声が聞こえたりもしていました。僕にはとても笑えないようなところでも。


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by hinaseno | 2018-05-09 15:12 | 映画 | Comments(0)

牛窓暮色(その8)


今日は、丘の上でクミさんが語ったことについての話を書こうかと思いましたが、それは次回ということで、もう一つクミさんが『港町』の中で歩いていたルートを紹介することにします。

それはワイちゃんが作業をしている場所からニコニコ食堂のある広場(牛窓の終点のバス停がある場所)の少し向こうにある家に行く海岸沿いの道。クミさんは自分が作った干物を届けに行くんですね。


これは『港町』の本予告編の0:54で映るシーン。

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クミさんは地図で紫の星印で示したあたりを矢印の方向に向かって歩いています。

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パンフレットの表紙やポスターに使われているこの写真はまさにクミさんがニコニコ食堂の前の広場のあたりを通過している時です。向こうに見える駐車場にたいてい車をとめます。

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で、これは本予告編の最後に映るクミさん。

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干物を届けに行った家に人が誰もいなくて、仕方なく引き返しているところ。クミさんが立っているのはニコニコ食堂のある広場のバス停のすぐそばです。


ということでこのルートもビデオで撮ってきました。実際にはワイちゃんが作業する場所から歩きましたが、時間の関係で紫の星印のあたりからニコニコ食堂のある広場までをアップしています。

昔、川本三郎さんが宿泊された川源、それからかつて女郎屋だった建物、そしてニコニコ食堂が見えてきます。

この道も何度歩いたことやら。





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by hinaseno | 2018-05-08 12:31 | 映画 | Comments(0)

牛窓暮色(その7)


かなり「知っている」と思っていた牛窓の”あの”場所に、自分の「知らないこと」がこんなにもあったことを映画を見て思い知らされました。

知らない路地、知らない人の営み、知らない音、知らない風景、そして思いもよらなかった異界の存在。


映画の終盤、この映画の主役の一人であるクミさんによって想田さん夫婦は丘の上に連れて行かれます。そこはまさに異界ともいうべき場所。そしてそこでクミさんがひとつの物語を語り始めます。この映画で最も強い衝撃を受けたシーンでした。


そのシーンの話をする前に、その丘に行くまでのクミさんが歩いた路地のことを少し。

改めて『港町』の本予告編を。冒頭にその丘へ歩くシーンが映ります。




牛窓を高台から見た景色とともに聞こえてくるのは、クミさんの歩く足音。かなりのスピードです。で、次に緩やかに登る路地をそのスピードでクミさんが歩く後ろ姿をとらえたシーンが映り、そのあとクミさんが丘の上で語る場面がちらっと。


実はこの予告編を見ただけではクミさんが歩いた路地がどこにあるのかはわかりませんでした。で、映画を見て場所がわかったんですが、それは通ったことのない路地(路地のそばにある街角ミュゼ牛窓文化館には何度か入ったことがありました)。それが前日、地図で示した場所ですね。改めてその地図を。赤い矢印がクミさんが歩いたところです。

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これはやはりひと月前に撮った写真。地図の星印の場所から海の方を撮っています。まさかここが異界への入り口だったとは。

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向こうの堤防の近くにいつもワイちゃんやクミさんがいて、クミさんはここに入ってきたんですね。左手の角には小さな祠があって、その前に真っ赤な鳥居があります。この鳥居、映画でもちらっと映ったはず。

で、街角ミュゼ牛窓文化館からクミさんの速度で歩きました。




坂になる手前に井戸があるんですね。歩いている途中で、そういえば映画でクミさんが想田さんにこの井戸のことを説明していたなと。

近くに大きな川もなく、雨も少ないことから牛窓近辺には井戸があちこちにあります。あとで改めて立ち寄ったら、「朝鮮通信使ゆかりの井戸」という看板がついていました。

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さて、その井戸から丘の上まで。ここからはかなり急な坂道で、ちょっと息が切れました。途中にある地蔵も映画でクミさんが紹介していました。



この坂は本予告編の1:33あたりから再び映ります。そのあと丘の上での語りが少し。

彼女が語るのは「死」につながる話。


ところで、あとで確認してわかったんですが、ここの裏山の頂上辺りには墓地が広がっていたんですね。地図のオレンジ色で囲んだ辺りに墓地があります。実はこの墓地、猫たちがいっぱいいる場所を偶然通りがかった「DOG HUNTING」のジャンパーを着た女性が花を供えに行ったところなんですね。僕は想田さんが写した墓を探すために、矢印で示したあたりの山の道を歩きました。で、その道がクミさんが話していたあたりに通じていることがわかったんですね。


背後の山に墓があることはクミさんはもちろん知っていたはず。彼女がこの場所に来て「死」につながる話をしたのも、そうした場所との関係があったからなのかもしれません。


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by hinaseno | 2018-05-07 12:33 | 映画 | Comments(0)

牛窓暮色(その6)


想田和弘監督の『港町』本予告編をYouTubeで初めて見たときに、一番おっと思ったのはこのカットでした。

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すぐに思い浮かべたのは小津の『東京物語』の、あの福善寺で撮影されたこのカット。

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物語には「とみ」と「しょうじ」の墓。すごく気になってこのカットが撮影された場所を探しました。写真と見比べながら、かなりの時間をかけて。


想田さんの、あのカットを見たときに、これは絶対に『東京物語』のあのカットを意識したに違いないと思いました。

でも、墓がどこかは皆目見当がつかない。以前ブログにも書きましたが、今村昌平監督の『黒い雨』に映った墓のシーンは本蓮寺の裏の墓だとすぐにわかりました。でも、あそこの墓地とは全然風景が違う。いったいどこだろうと気になっていました。それがあの猫たちのいる井戸のそばの坂道を上がったところにあったとは。


想田さんがその墓に行くきっかけになったのは、猫に餌を与えている人のところに偶然通りがかった例の「DOG HUNTING」のジャンパーを着た女性。彼女は菊などの花を供えるために自分の墓に行く途中だったんですね。

これは「花くらべ」という岡山に現在も残っている風習。僕もここ数年、母親を連れて「花くらべ」に行っています。

「墓に花が並べられてきれいですよ」と女性に誘われて想田さんたちも付いて行ってみることにしたんですが、結果的には映画的にというか物語的にそれがとても重要なシーンになったんですね。

興味深かったのはその女性の墓のそばに上から落ちてきたという墓があって、そのだれのものだかわからない墓の世話も女性がしていたこと。たぶんそういうことのできる人だからこそ、野良猫に餌を与えていることに対して迷惑そうな目を向けることがなかったような気もします。


このシーンに関しては先日紹介した想田さんと中島さんの対談でもかなり語られていました。想田さんも「お墓に行き着いたのは全くの偶然だったのですが、撮影している時から『これは今回の映画にとって非常に重要な部分になるだろうな』と思っていました」と語っていますが、そんな重要な出来事が生まれるきっかけが、あの猫たちのいる場所で起こっていたということに、ただただ驚きました。


ということで猫たちのいる場所から坂道を登って墓のある場所までビデオで撮ってきました。




実は猫たちのいる場所に行くまでも緩やかな坂で、そこから立ち止まることなく結構急な坂を登って行ったので、正直息が切れかけていたんですが、ハアハアと息しているのが入らないようにするのって大変ですね。観察映画の大変さを少し知ることができました。


さて、墓のある場所に着いたものの、あのカットが撮られた場所は見当たらない。もう少し山を登ってみたら、もっと大きな墓地が広がっていたので、あちこち歩き回ったんですが、残念ながら見つかりませんでした。墓はさらにその山の向こうにも点在していて、それらをくまなく探すのは無理だなとあきらめました。戻って改めてあのカットをよく見たら、左の奥に見える山がポイントだったなと(山の入れ方も『東京物語』と似ています)。また、改めて行ってみます。


それはさておき、この山の上の方が墓地になっていたということは、物語的にあとにつながっていたんですね。


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by hinaseno | 2018-04-30 12:35 | 映画 | Comments(0)

牛窓暮色(その5)


昨日の夕方、ちょこっと牛窓に行ってきました。いくつか確認したい場所があったので。暮色までの時間はいれなかったけど。

その話の前に、ひと月前に牛窓に行ったときに撮った写真をもう一枚。『港町』に倣ってモノクロで。

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牛窓にはいい路地がいくつもありますが(まだ歩いたことのない路地もいっぱい)、ここは一番好きな路地の奥の方。牛窓で最もディープな感じの場所といってもいいかもしれません。古い街並みが続くしおまち唐琴通りから入るんですが、何度行ってもどこから入るんだっけ、となります。

で、昨日、そのしおまち唐琴通りからこの場所までの風景をビデオで撮ってきたのでそれを貼っておきます。途中、別の路地からおじさんが出てきて、ちょっと動揺しています。



ビデオに映っているように、この路地、突き当たりに階段があるんですね。それを登ると妙福寺というお寺があります。そのお寺には木蓮の木があって、3月末になるとそれを見に行ってます。

ここの一番の見所は、その階段の手前にある井戸。そこにいつもびっくりするくらい多くの猫がいるんですね。

でも、先月、久しぶりに行ったときにはそこに猫が一匹もいなかった。一体どうしたんだろうと。

ちなみに上に貼った写真はその階段の手前を左に曲がって山の上に登る坂道を撮ったもの。いい感じの坂道だったので、また今度来たときに登ろうと思っていたら、『港町』でまさにそこを登っていくシーンが出てきてびっくり。


ところでこの場所を見つけたきっかけのこと(以前書いていたような気がしましたが書いていなかったですね)。想田さんが牛窓でいろいろと撮影しているのを知った少し後、ニコニコ食堂のそばの小料理屋さんに行ったら、最近牛窓を舞台にした映画が撮られて、それが上映されたばかりだということを教えてもらいました。それが『晴れのち晴れ、ときどき晴れ』という映画。主演はEXILEの人ですがよく知りません。

DVDが発売されてすぐに借りて観ました。この映画、あのニコニコ食堂が舞台になっていてびっくりだったんですが、正直ストーリー的にはどうでもいいような映画(怒られる?)。

ただ、ひとつ印象に残った場所があったんですね。それが主演の白石美帆さんが座っていたこの石段のある路地。

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次にこの石段の上から下の路地を撮ったシーンも映りました。

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ここはいったいどこだろうと思って、この写真を持って小料理屋さんに行き、場所を教えてもらいました。

妙福寺というお寺の近くだと。でも、見つけるのは大変でした。で、ようやく見つけたらそこに猫がいっぱいいたんですね。20匹くらいはいたんじゃないかな。

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そしてそこで撮った写真を一枚投稿しました。たぶんこの写真。

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そうしたらなんと想田さんからリプが来たんですね。「そいつ、知ってる」と。びっくりやら、うれしいやら。それがちょうど5年前のことでした。

でも、その猫たち、3年前に公開された『牡蠣工場』には出てこなかったんですね。


それが今回の映画では、しっかりと映っていました。あんなに多くの猫がそこにいる理由も。

その理由がよくわかっただけに、ひと月前に行ったときに猫の姿が全く見えなかったことが気になったんですね。もしかしたら何らかの事情で猫への贈与のラインが閉ざされる事態が生じたのではないかと。


というわけで今回、改めてその場所に行ったら、上のビデオに映っているように井戸のそばに2匹の猫がいました。少なすぎるけど。

しばらくその場にいたら、隣の家の、猫用に作られた通り道からこちらをのぞいている猫を発見。警戒しながらも大丈夫と思ったようで、一匹出て来たら、さらにもう一匹。どうやら家の中で贈与が行われているようでした。



ところで『港町』では、猫に餌を与えている人に「色々とトラブルがあるんじゃないですか」と聞いていたときに一人の女性がその場に登場します。女性の着ているジャンパーの背中には「DOG HUNTING」との文字。どきっとするけど、でも何だか笑えるシーン。映画館でも笑いが起きていました。

この女性の登場はもちろん偶然だったはずですが、最初に貼った坂道はまさにこの女性が登っていくことになるんですね。で、登って行ったところにあったのが、予告編でどこだろうと一番気になっていた場所でした。

ということでその坂道を登ってきました。


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by hinaseno | 2018-04-29 13:08 | 映画 | Comments(0)

牛窓暮色(その4)


ひと月前に牛窓で撮った写真をもう1つ。前回とは別の建物から撮ったものです。

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ここはとにかく感動しました。

いつものようにニコニコ食堂の近くに車をとめて、そのあたりを歩いていたら、ニコニコ食堂の並びの一番奥の建物(川源のそば)の二階の窓に人の姿が見えたんですね。窓の方を向いて座って外を見ながら何かを飲んでいるような感じ。なんだろうと思って近づいてみたらどうやら新しくできた店。

匙屋と書かれた小さな看板がありました。新しい店とは言っても、以前からそこにあった古民家を再生したもの。匙屋さんは通常は手作りの木製の匙を売っているようですが(1階はたぶん作業場)、ときどき2階のスペースを使ってイベントをしていて、僕が行った時にはたまたまカフェをやっていたんですね。

で、中に入ったら運良く窓際の席が空いていました。ラッキー。


目の前は牛窓の港。向こうには海と島。右手にはやはりかつての女郎屋の風情をそのまま残した建物も見えます。

現在匙屋となっているこの建物もかつてはおそらく女郎屋だったはずで、この2階からは何人もの遊女たちが港にやってくる船を眺めていたにちがいありません。彼女たちが見ていたのと同じ風景が目の前に広がっているわけです。興奮しないわけにはいきません。


ところで下の広場は牛窓行きのバスの終点の場所になっていて、こんなふうに1時間に1回くらいの割合でバスが入ってきます。川本三郎さんもかつてこのバスに乗ってこの終点までやってこられたんですね。

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広場の奥にはバスの停留所とバスに乗る人が自転車を止めるための小さなプレハブの建物が見えます。

このバス停と建物、『港町』でこんなふうにとらえられているんですね。

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向こうに見えているのが、まさに僕が今回入ることができた建物です。映画が撮影されたときにはもちろん匙屋さんはありません。

そして、この建物のすぐそばをあの独特の足音を響かせながら歩いていたのがクミさんでした。

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このシーン、『港町』本予告編のラストに映っています。




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by hinaseno | 2018-04-26 17:56 | 映画 | Comments(0)

牛窓暮色(その3)


『港町』を見るちょうどひと月前、半年ぶりに牛窓に行ったときに、古民家を再生した新しい店やイベントスペースがいくつかできているのを発見しました。そのうちの1つ、御茶屋跡という建物からとったのがこの写真。

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去年の夏、右下あたりに見える海沿いの場所で、『牡蠣工場』に(もちろん『港町』にも)出てくるシロという猫に会ったんだなと思って眺めていたんですが、今回の『港町』のワイちゃんの船が置かれていたのがまさにこの場所でした。停泊している船のひとつがワイちゃんのものかもしれない。

つまりワイちゃんにとってはここが港。漁に出る前や戻ってきてからの作業もすべてここでやっていました。

そしてここにもう一人の主役、クミさんが登場します。


これは今回の『港町』の映画の舞台となった場所の地図。

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僕が牛窓で一番よく歩いていた場所と見事なほど重なっています。ニコニコ食堂も川本三郎さんが初めて牛窓にこられた時に宿泊された川源もこの中にあります。映画に登場する魚屋さん、猫がたくさんいる場所、「DOG HUNTING」と書かれたジャンパーを着た女性が向かった墓、そして映画の最後、クミさんが向かった丘も全てこの地図の中に含まれています。

ちなみに昨日のブログで雨のウェンズデイ的風景を撮影したのは左上の瀬戸内きらり館の前でした。


赤い矢印は丘に向かう時にクミさんが歩いた(性格には駆け足)コース。赤丸はクミさんが”あの話”をした場所。現在、病院のある場所の近くへは南側の石段を登って行ったことはありますが、クミさんが通った道は知りませんでした。


道の途中にある街角ミュゼ牛窓文化館は何度か入ったことがあります。ひと月前、その街角ミュゼ牛窓文化館の前の道を歩いていた時に、その向かいに御茶屋跡(青い四角)という古民家を再生したイベントスペースができていることに気づきました。上に貼った写真はその建物の2階から撮りました。


僕が牛窓にいるのはせいぜいお昼前後から夕方くらいまでですが、『港町』に撮影されている多くの重要なシーンは、早朝や日没後という、僕の知らない時間帯に起こっていることばかり。そしてその時間に異界のような世界が口を開けていたとは…。


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by hinaseno | 2018-04-25 14:43 | 映画 | Comments(0)

牛窓暮色(その2)


『港町』というタイトルについて少し。

以前にも書きましたが、牛窓は昔、帆船の時代には瀬戸内海を航行する船の寄港地、いわゆる「風待港」(この「風待」が僕の中で「風街」につながったことは言うまでもありません)として栄えていました。

これは昭和10年ごろに撮影された牛窓の海の風景。

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こんなふうに風まかせ、潮まかせの船が牛窓に立ち寄っていたんですね。

で、そんな港町に発達したのが女郎屋。今も数件だけ建物が残っていて、『港町』にも何度か映っていました。


大正時代ごろから機械で動く船が登場して、次第に牛窓は寄港地としての役割を失っていきます。今は正直「港町」という感じではありません。前島へのフェリーの港があるくらい。ああ、でもちょっと離れた場所に大きなヨットハーバーがありますね。映画では映らなかったけど。


ところで「港町」の英語のタイトルは「港町」を表す「Port Town」ではなく「Inland Sea」。「Inland Sea」というのは内海、つまり瀬戸内海のことです。

瀬戸内海はとても広いけれど、かりに大阪の方から西に船で進んだとすれば、瀬戸内海らしさが出てくるのは赤穂を過ぎて牛窓に近づいたあたりからなんですね。といっても実際に見たわけではないけど。

ただ、わが荷風が敬愛する成島柳北が例の『航薇日記』で、大阪から岡山に向かう航海の、牛窓の港に入る直前に、こんな言葉を書いているんですね。


「薇陽は風景播州よりも勝りたるところ多し」

今はもう失われてしまっているけど「薇陽」という表現がいいんですね。ここから瀬戸内海は瀬戸内(せとうち)と親しみを込めて呼びたくなるような島々が点在する風景が続くことになります。


ところでひと月前、久しぶりに牛窓に行ってきました。

ワーゲン(「壊れかけ」じゃないけど)が停まっていたので、「雨のウェンズデイ」的風景を撮ってみました。想田さんに倣ってモノクロで。

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でも、なんだかかなりイメージが違う。別れの予感が少しも感じられない。目の前に並ぶ島々が、あまりにも優しすぎるんですね。

ちなみにこの場所、映画でクミさんが魚の干物(だったっけ?)を持っていった家のすぐ隣です。


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by hinaseno | 2018-04-24 15:51 | 映画 | Comments(0)

牛窓暮色(その1)


愛する海街、牛窓(牛窓は「海街」というより「海町」ですね)を舞台にした想田和弘監督の映画『港町』を観てきました。


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素晴らしいの一語。前作の『牡蠣工場』ではカットされていた、僕が牛窓で最も愛している風景が次から次へと。それもとびっきり美しい映像で。そしてそこで展開される物語のすごさたるや。

ただ、ご存知の通り、映画や本などのレビューを書くのは苦手。できればぜひ映画を観てください。


というわけで、ここに書くのは映画そのものについての話ではなく、いつものように映画と自分との関係性を書くことになります。きっと自分一人で「そういえば」「そういえば」を繰り返しながら、話はあっちへ行ったりこっちに行ったりすることになりそうです。


映画が始まって、映画がモノクロであることと、そして今回の映画の主役のひとりであるワイちゃんというかなり高齢の漁師が、小津や成瀬の映画で脇役をやっている東野英治郎に似ていることもあって、すぐに小津や成瀬の映画のことを思い浮かべました。

そういえば今回『港町』のパンフレットにコメントされている是枝裕和監督は、同じ海街である鎌倉を舞台にした映画を撮るときに、鎌倉といえば小津ということになることを知りつつ、あえて成瀬の方を強く意識して撮影したそうですが、もし、想田さんが意識していたとするならば、描かれている風景や物語(死者との向き合い方)を考えると小津に近いかなと感じ、小津の『晩春』から『東京暮色』にかけてのモノクロの映画(『晩春』『麦秋』『東京物語』『早春』『東京暮色』)をぼんやりと頭に思い浮かべながら映画を観ていました。


そうしたら映画の後のトークイベントで、想田さんが当初映画のタイトルは『港町暮色』だったと言われて、小津の『東京暮色』とつながって、思わずわおっ、となりました。ただ、想田さんは映画の重要なシーンが夕暮れ時に起こっていたということからそのタイトルを思いついたということで、小津のことには触れなかったけど。

映画の後、家に戻って想田さんの『観察する男』を開いて(映画を観る前に読み直そうかと思ったけどやめました)、どこかに小津のこと書いていたような思って調べたら、想田さんが映画監督になろうと考えた理由のひとつに小津の映画と出会いがあったったことを書かれているのを発見。ちなみに想田さんが小津の映画と出会うきっかけになったのは川本三郎さんが書かれていた『晩春』に関する小さな記事だったそうです。


さて、映画を観て気がついたことといえば、観ているとき、あるいは観た直後に気づいたこと、1日経って気づいたこと、2日経って気づいたことなど、いくつもあるんですが(こういうのがあるからレビューって書けない)、今日、つまり2日たって気付いたことを。


僕はここ数日、平川さんと松村さんの対談をずっと聴き続けていたんですが、実は映画館に行く車の中でも聞いていました。で、面白いことに、そこで語られていた話が不思議なほどに映画と共鳴していたことに気がついたんですね。お二人が語っていたこと、時間があればきっと語ったであろうことを、牛窓という場所を舞台にして映画にしたら、きっとこうなるんじゃないかと思ったくらいに。


想田さんの牛窓を舞台にした前作『牡蠣工場』には、グローバル経済という大きな市場が岡山の外れの、小さな海辺の町にも押し寄せているという話だったんですが、今回の映画に描かれているのは、かなり縮小したとはいえ、牛窓にずっと昔から続いている小さな経済の循環。そして忘れてはならない贈与。平川さんや松村さんの話につながっているなあと、ふと今朝、思いついて、で、ブログに貼る写真を探していたら、たまたま見つけたのがこの中島岳志さんと想田和弘さんの対談でした。

前回、中島岳志さんのことも書いたばかりだったんでびっくり。で、その中でこんな会話が出てくるんですね。ぼんやりと考えていたことを見事に言葉にしてくれていました。


中島:お墓の近くで猫に餌をあげている人も登場しましたが、あの「猫」の存在も重要だと思いました。ただ和むというだけではなくて(笑)、想田さんがおっしゃるように、カメラが魚の行方を追ううちに、経済の円環と言うべきものが見えてくるのですが、その円環の最終地点がここでは実は猫に魚を与えるという「贈与」なんですね。漁師から市場、市場から魚屋までは一般的な貨幣経済なのですが、魚屋さんがさばいた魚のアラをバケツの中に入れ、それをもらっていったお客さんが、わざわざ料理して猫にやっているわけです。
 つまり、この社会の経済のサイクルのどこかには、マーケットとは違う別の原理が働いていて、それも含めて一つの経済の円環をつくり上げているということを象徴している場面だなと思いました。その「マーケットと違う原理」は、現代社会の主流ではないかもしれないけれど、長い歴史の流れの中で見れば主旋律になるような部分なのではないかと思います。
想田:おっしゃるとおりですね。経済サイクルの中のその「贈与」の部分がなくなった時に、社会は非常に生きにくくなるんじゃないかという気がします。
 現代における「経済」というと、なんというか「奪う」イメージですよね。モノを少しでも高く売りつけて自分のお金を増やすことが大事で、「自分の利益は他者の損」というようにイメージされることが多い。でも、本当の「経済」というのはそうではないのではないか。「奪う」経済だけの社会には、あまり楽しい未来は待っていないのではないかと思っています。

この猫への「贈与」に関してはパンフレットに掲載された平川克美さんのコメントにも書かれています。確か中島さんはこの対談の少し前に平川さんとも対談されて平川さんの『21世紀の楕円幻想論』についての話もされているんですね。そのあたりの影響がどれだけあったかわかりませんが、ここで二人が語っていることは、僕が今、聴き続けている平川さんと松村さんの対談の話と驚くほどぴったり重なっています。それだけでなく、その前で語られている「死者」のまなざしの話も、そのあとの「近代」のことも、すべて平川×松村対談の重要なキーワードとして出てきているんですね。

というわけで、次なる平川×松村対談ではぜひ『港町』の話をしていただけたらと思います。


さて、映画には、僕にとってたまらない風景がいくつも出てくるんですが、一番心を打たれたシーンは、獲った魚がセリにかけられたあと、その漁協を立ち去る時のワイちゃんの後ろ姿。貨幣というものが支配する場(そこにはまだ言葉の贈与を行う人もいる)を後にして自然からの贈与の場へと戻るワイちゃんのかなり曲がった背中は何を語っているんだろう。


ところでこれは想田さんが自撮りされたもの。想田さん、あちこちでされてたんですね。この中に映っていたので記念に貼っておきます。

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by hinaseno | 2018-04-23 16:13 | 映画 | Comments(0)