Nearest Faraway Place nearestfar.exblog.jp

好きなリンク先を入れてください

Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

カテゴリ:音楽( 438 )



去年の暮れ、例年のように「今年の10枚」とか「今年の10曲」とかを書こうと思ってたんですが、選びかねているうちにすっかり年も明けて1月も後半に入ってしまいました。もういいか。

まあほとんどは昨年のブログで取り上げたものになるように思いますが、ブログでは取り上げなかったけど「今年の10枚」に必ずや(いや「今年の5枚」、あるいは「今年の3枚」でも)入れたはずのCDを紹介します。本当は年末に紹介する予定だったんだけど。

作品のタイトルは『Columbia Groovy Songbirds(コロンビア・グルーヴィー・ソングバーズ)』。

a0285828_14555437.jpeg


女性シンガーの作品を集めたコンピレーション。レーベルをコロンビアに絞ったというのもよかったです。

監修は長門芳郎さん、ってことで絶対にいい作品であることはわかっていたけど、でも、いつもながら何から何まで素晴らしい。

特に40ページのブックレットには貴重な写真、情報が満載。解説を書いているのも長門さん。もちろん歌詞・対訳つきです。


まずは選曲ですが、正直、女性シンガーのコンピレーションは数年前からタネが尽きかけてるという印象を持っているんですが、これが本当に素晴らしい曲だらけでびっくりでした。知っていたのはジョニー・ソマーズの2曲(「Never Throw Your Dreams Away」は最高)とエイプリル・ヤングの「Gonna Make Him My Baby」(曲を書いたのはアンダース&ポンシア)くらい。

曲を歌ったときの年齢がそれぞれ何歳なのかはわかりませんが、ドリス・デイやペギー・リーなどの曲も含まれていてガールというよりは大人の女性が歌ったものが多いのかな。


いきなりびっくりさせられたのがこの1曲目の「Hush, Don't Cry」。これだけでつかみはOK。




歌っているのはシンガーズ・アンリミテッドの紅一点、天使の声の持ち主、ボニー・ハーマン。この作品はグループに加入する前年とのこと。シンガーズ・アンリミテッドのイメージとはかなり違いますが、いい曲です。プロデュースはジョン・サイモン。いいはずだ。

ちなみにこのYouTubeのビデオにはシンガーズ・アンリミテッド時代の彼女の天使の声が集められています。これがいいんですね。一時期ずっと聴いていました。




ドリス・デイの2曲では「Rainbow's End」がよかったな。アレンジはジャック・ニッチェ。プロデュースには息子のテリー・メルチャーも。

テリー・メルチャーはビーチ・ボーイズに途中から加入したブルース・ジョンストンとブルース&テリーというグループを組んでいた人。ちなみにブルース・ジョンストンはこのブログの名前になっている「Nearest Faraway Place」という曲を書いた人。以前、彼の「ディズニー・ガール」という曲に出てくるパティ・ペイジの「オールド・ケープ・コッド」のことを書きましたが、長門さんのパティ・ペイジの解説のところにその話が出てきてにっこり。


知らなかったシンガーではジョディ・フォスターに似た美形のルグラン・メロンが写真を見て素敵だなと。テオ・マセオがプロデュースした「Growin' My Own」もなかなかいい曲。スーザン・クリスティというシンガーの曲もよかった、と書けばきりがないけど、最高によかったのはなんといってもこの曲。




パティ・マイケルズの「Mrs. Johnny」。

作曲、プロデュースは大好きな作曲家ヘレン・ミラー(「俺はヘレン・ミラーでもあるんだ」という大瀧さんの名言もあります)。パティ・マイケルズはもう1曲「They’re Dancing Now」も収録されていて、そちらもヘレン・ミラーの作曲でそちらは知っていたんですが、「Mrs. Johnny」は「They're Dancing Now」のA面。こっちの方がはるかにいいですね。

ヘレン・ミラーといえばレスリー・ゴーアの「All Of My Life」、ボビー・ヴィーの「Charms」、ジョニー・クロフォードの「Rumors」、トミー・サンズの「Connie」、アンドレア・キャロルの「The Doolang」など最高にロマンチックな曲を作っている人ですが、それらと並ぶくらいの素敵な曲。イントロのドラムの音はレスリー・ゴーアの「All Of My Life」と同じですね。




ってことで昨年暮れにこんなものを作ってずっと聴いていました。もうそろそろヘレン・ミラーの作品集がきちんと出てもいい頃だけど。

a0285828_14573677.jpeg


ヘレン・ミラーの作品集は5年くらい前に作ったことがありますがパティ・マイケルズの「Mrs. Johnny」以外に新たに見つけた曲を何曲か入れています。

そのうちのひとつがスティーヴ・ローレンスのこの「I'm Making the Same Mistakes Again」。これもコロンビアから出てますね。




ところでブックレットの最後のページを見たら、

a0285828_14585307.jpeg


Supervisor: Yoshiro Nagato


ここのところスーパーヴァイザーを意識することが多かったのでにっこりでした。そういえば去年出たCDでは『ケニー・ランキン/コンプリート・コロンビア・シングルズ 1963-1966』も素晴らしかった。そちらも「Supervisor: Yoshiro Nagato」です。


by hinaseno | 2019-01-20 14:59 | 音楽 | Comments(0)

先週の土曜日、アン・サリーさんのライブに行ってきました。場所は岡山市内にある蔭凉寺(西大寺商店街の入り口から西に600mほど行ったあたり)。蔭凉寺というお寺でいろんなイベントをしていることを知ったのは最近のこと。寺尾紗穂さんの『楕円の夢』リリースツアーの岡山公演が蔭凉寺で行われていたのを知ったのはつい最近。青葉市子さんも何度かライブをしてました。音楽以外でもいろんなイベントをしているようで、去年の暮れには松村圭一郎さんがここで行われたイベントに出演されていました。

アン・サリーさんのライブに行くのはもちろん初めて。2003年に出た彼女の2枚のアルバム『Moon Dance』と『Day Dream』は「超」を10個くらい並べてもいいくらい大好きで、2000年代には一番よく聴いたアルバムだと思います。夕方の3時か4時くらいに、ちょっと一服してコーヒーを、ってときにはたいていこれを聴いていました。ということでこの日のブログに書いたように「昼下がりから夕方に、コーヒーを飲みながら聴きたい音楽」といえばすぐに彼女のアルバムを思い浮かべたわけです。

その話をブログに書いた少し後くらいに、ふと今、アン・サリーさんは何をしているんだろうかとチェックしたら、彼女がライブ・ツアーをしていることを知ったんですね。

でも、そのときには岡山でのライブの予定は入っていなかったんですが、数日後にチェックしたら岡山でのライブが決定していて、チェックした日が予約の初日だったので即予約。少しでも遅かったら予約が取れなかったかもしれないのでラッキーでした。


蔭凉寺に行くのも初めてでしたが、あの西川沿いの道は好きなので、何度も近くを通っていました。これは西川にかかる「ほたるばし」という名の橋から見た蔭凉寺。

a0285828_15310138.jpeg


開演時にはすでに50人近くの人が並んでいました。すごい人気。

a0285828_15311463.jpeg


堂内に入ると新しいアルバムが置かれていてびっくり。一昨年に出てたんですね。Amazonでは販売していないので知らなかったはず。もちろん購入。

ところで、お寺でライブ!? でしたが、ライブが行われたお堂は100人くらいが入れるようになっていて、大型のミキサーなど機材もすごいのが置いていました。お寺のお堂なので寒いんじゃないかと思って着込んで行ったら床暖房でぽかぽか。いろいろとびっくり。


さて、アン・サリーさんのライブ、まず最初にギタリストの人が舞台に出てギターを弾き始め(このギタリストには後で驚くことに)、そのあとにアン・サリーさんが登場したときには、やはり興奮しました。ずっとCDを聴き続けてきたあのアン・サリーがすぐ目の前に立っているわけですから。


死ぬほど好きな曲「蘇州夜曲」を歌ってくれたのがやはり一番うれしかったですね。それから「こころ」も。

新しいアルバムに収録された曲からも何曲か。そのうちの1曲、ハース・マルティネスの「Altogether Alone」が歌われたときには、おおっ!と。『Moon Dance』にもハース・ハース・マルティネスの「5/4 Samba」が収録されていましたが、アン・サリーさん、ハース・マルティネスが好きなんですね。小沢健二の「ぼくらが旅に出る理由」のカバーも素晴らしかった。


ところでギタリストのこと。1曲目からこの人の演奏すごいなとは思って、アン・サリーさん以上にそのギタリストの演奏を見ていました。驚いたのはアン・サリーさんのライブにずっと帯同されているわけではないのに楽譜を一切見ないで演奏していたこと。

何曲目かでアンさんがギタリストに向かって「ようもう!」「ようもう!」って叫んだりしてたんで「ようもう」という名前の人なんだなと思っていたら、実は羊毛とおはなの羊毛さんでした。羊毛とおはなは一時期ずいぶん聴いていたのでびっくり。でも、数年前におはなさんが亡くなったんですね。ニュースで知ったときにはびっくりでした。

ってことでCDにはアン・サリーさんといっしょに羊毛さんにもサインしてもらいました。

a0285828_15321354.jpeg


そういえば大好きな「スマイル」が聴けたのもうれしかった。昔、「『スマイル』がつながる」という話を書いたのは青葉市子さんが細野さんと「スマイル」を歌ったのがきっかけ。青葉さんのライブでも「スマイル」聴きたかったな。


by hinaseno | 2019-01-15 15:32 | 音楽 | Comments(0)

昨日ようやく「朝妻一郎 MY MUSIC ON THE RADIO 僕とラジオと音楽と」を全部聴きました。

放送の最後、「この先、音楽というのはどういうふうになっていきますか」という質問に対して朝妻さんはこんなふうに答えていました。


「音楽自体はもう絶対になくならないと思うんですよね。ただ、レコードとか、CDではちょっと違うんだけど、昔のシングル盤とかアルバムとかというのにはちゃんとこの曲は誰が書いたとかね、プロデューサーが誰で、アレンジャーが誰でとかっていう、ミュージシャンも誰とかって書いてあって、そういうのから学ぶ人たちがいっぱい多かったんだけど、そういうことが今度配信やストリーミングなんかになるとそういうことを知ろうと思ってもなかなか知れなくなっちゃってるんで、若い人たちが音楽に入る道っていうのがちょっと狭くなっちゃうんではないかっていう心配はありますね。ぜひ、これから音楽を知ろうという人たちにもいろんなことを調べるっていう姿勢を持ってほしいなという気がしますね」

確かにおっしゃられる通り。大瀧さんなんかはまさにそういったところから学んだ一番の人と言えるんだろうと思います。それによって見つけたつながりを形にしたのがゴー!ゴー!ナイアガラでありアメリカンポップス伝ですね。

ってことで配信とかでは何も学べない、と言いたいところですが、今便利なのはネットでシングル盤の画像を見ることができるようになっていること。僕が最もよく見ているのは「45cat」というサイトです。ここは僕のような人間にとっては本当にありがたいサイトなんですね。YouTubeで何か曲をダウンロードしたときには必ずここを見て曲を書いた人が誰で、プロデューサーが誰で、アレンジャーが誰なのかを必ず確認しています。その逆、つまり、気になるプロデューサーやアレンジャー、作曲者などの作品をここで見つけてダウンロードすることもあります。ジャック・ケラーの曲を集めるときにはここを大いに利用しました。きっと大瀧さんも利用されていたはず。


ところで昨日聴いた朝妻さんの話でおっ、と思ったのはスティーヴ・バリとのつながりのこと。朝妻さん、スティーヴ・バリのもとでひと月ほど働いていたことがあるんですね。

そういえばと思ってアメリカン・ポップス伝パート4の第5夜を聴いたら、やはり。スティーヴ・バリがらみのちょっとした秘話が紹介された後で「この話はスティーヴ・バリと直接交流があった朝妻一郎さんからうかがいました」と。


さて、その結果的に最後の最後となってしまったアメリカン・ポップス伝パート4第5夜に、ルー・アドラーとハーブ・アルパートが再び登場します。彼らが手がけたのはジャン&ディーン。このあたりの大瀧さんの紹介の仕方、かなり印象に残るような言葉遣いをされています。文字にしてしまうとニュアンスが消えてしまうんですが。


(ディーン・トーレンスが兵役から戻ってきて)正式にジャンとディーンとなってからはレコード会社を移籍してプロデューサー・チームがつきました。それがサム・クックを手がけていたルー・アドラーとハーブ・アルパート。新生ジャン&ディーンのデビュー曲は「ベイビー・トーク」!




ここでちょっとジャン&ディーンの「Baby Talk」の話を。

僕が初めて「Baby Talk」を聴いたのは1984年9月13日に放送された山下達郎サウンドストリートのサーフィンホットロッド特集でした。で、この特集で初めて聴いて大好きになったのがこのブルース&テリーの「Summer Means Fun」。




この曲を書いたのがP.F.スローンとスティーヴ・バリなんですね。で、この次にこのコンビが作ったファンタスティック・バギーズの「A Surfer Boy’s Dream Come True」。これがまたいい曲なんだ。




この「A Surfer Boy’s Dream Come True」をさっき紹介した45catで調べるとこんな感じでシングル盤のレーベルを見ることができます。

a0285828_13273787.png


曲を書いたのはP.F.スローンとスティーヴ・バリ。プロデュース&アレンジもスローン=バリ。でもその上にSupervised by Lou Adlerとの文字が見えます。そう、実はP.F.スローンとスティーヴ・バリにコンビを組ませたのもルー・アドラーなんですね。プロデューサー以上の存在。

“Supervised by”といえば松田聖子の『風立ちぬ』のアルバムのA面は大瀧さんがプロデュースしているのですが、その歌詞カードにはこう記載されていました。


Side A is supervised by Eiichi Ohtaki

僕はここで初めてsuperviseという言葉を知りました。


by hinaseno | 2019-01-12 13:26 | 音楽 | Comments(0)

Keenレコードに移っってきたサム・クックをプロデュースしたルー・アドラーとハーブ・アルパート。もちろん2人の名前はよく知っていましたが、1950年代末に一緒にプロデュース活動をしていたというのは、あまり認識していませんでした。アメリカン・ポップス伝で語られていたのにもかかわらず。

ところでハーブ・アルパートといえば、なんといってもこの曲ですね。




深夜のラジオ番組オールナイトニッポンのテーマソングとして使われた「Bittersweet Samba」という曲。オールナイトニッポンを聴いていた世代の人にとってはこの曲が流れてきただけでワクワクしたんですね。改めて聴いてもワクワク感に溢れた曲。ただ、これがハーブ・アルパートの曲と知ったのはずいぶん後のことですが。


ところで、新春の1月2日にラジオで放送されたのが「朝妻一郎 MY MUSIC ON THE RADIO 僕とラジオと音楽と」。僕は数日後に知ったのですが、radikoで無事録音して、今も少しずつ聴いています。「少しずつ聴いている」というのは、この番組、なんと4時間もあったんですね。ようやく3時間分聴きました。

朝妻一郎さんのことはもう改めて説明はしません。今、ちょっとGoogleで「朝妻一郎」と入れて検索したら、なんと僕のブログがトップページに出てきていますね。びっくり。

それはさておき、朝妻さんの話はへえ~の連続。あんな曲にもこんな曲にも朝妻さんが絡んでいたとはと、ただただ驚くばかり。そんな中でとりわけ驚いたのがハーブ・アルパートの「Bittersweet Samba」のこと。オールナイトニッポンが始まるとき、そのテーマソングとしてハーブ・アルパートの曲を使うことを上司の高崎一郎さんに進言したのがまさに朝妻さんだったと。

ただ、そのときに朝妻さんが提案したのはこの「あめんぼうとバラ(Lollipops And Roses)」。




でも、高崎さんはイマイチだなと思って、「あめんぼうとバラ」が収録されたハーブ・アルパートのアルバム『Whipped Cream & Other Delights』を聴いていて、で、見つけたのが「Bittersweet Samba」。「これだよ!これ」ってなったようです。

でも、このあと「Bittersweet Samba」のシングルを日本で出したとき、そのB面には「あめんぼうとバラ」を入れてもらったそうです。


a0285828_15375832.png


さて朝妻さんといえばもちろん大瀧さんとの話が出てきました。『ロング・バケーション』を作るときのことと「幸せな結末」を出したときの話。時間は10分くらいで、いずれも知った話だったのでちょっと物足りなかったけど。

以前にも書いたような気もしますが「幸せな結末」を出したときに、朝妻さんが「大瀧くん、この『幸せな結末』がヒットしたんだから、すぐアルバムを作ろうよ」と言ったら、「朝妻さんはいっつもそうなんだ。商売のことしか考えてないんだから」と大瀧さんにすっごく怒られたというエピソードを紹介していました。大瀧さんは金ではなく縁で動く人だってことを朝妻さんが知らないはずはないけれど、ついお金の話をしてしまって大瀧さんを傷つけたという思いがずっと残っているんですね。


by hinaseno | 2019-01-11 15:39 | 音楽 | Comments(0)

その年の早春にとんでもない災害が起きた2011年の12月、僕は何年ぶりかで姫路駅から姫路城近くの大手前公園まで続く商店街の一番北のあたりを歩いていた。

a0285828_12491874.jpg


姫路に暮らすようになって最初に住んでいたのは姫路城のすぐ近くだったので、そのあたりはよく通っていた。でも、文字通り「通っていた」だけ。80年代後半か90年代始めの僕にとっては、そこはあまり魅力的なところではなかった。しばらくして駅の南に住むようになって、そのあたりまで来ることは全くなくなった。来ていたのはせいぜいヤマトヤシキのある二階町の通りまで。だからその一つ北の筋の、みゆき通りから少し離れた場所にある茶房大陸は知らなかった。

2011年の冬のある日、二階町の通りを越え、国道を越えたとき、そのときの自分の気持ちにぴったりの街並みがそこにあった。たぶん自分にぴったりくる街並みを探していたらそこにたどり着いたんだと思う。

で、ひとつの路地が目に入る。そのあたりには路地がいくつもあるけど、なぜか惹きつけられるようにこの路地に入っていった。

a0285828_12493509.jpg


上の2枚は昨日撮ったものだけど、その日もたぶんイチョウの木はこんなふうに真っ黄色に黄葉していたはず。

その日、この路地で二つ並んだ古本屋を発見する。ツリーハウス、そしておひさまゆうびん舎。

あれから何度、ここに来ただろう。ここに来るといつも心がやすらぐ。ここはまちがいなく自分のふるさとになっている。


おひさまゆうびん舎ではいろんな出会いがあった。おひさまゆうびん舎の窪田さんが紹介してくれた人もいれば、たまたまの出会いをした人もいる。

たまたま出会ったといったら何と言っても世田谷ピンポンズさん。

そのピンポンズさんのライブが昨日姫路でありました。場所はいつものおひさまゆうびん舎ではなく、駅南のARBRE MARKET。

ピンポンズさんは駅南に来るのは初めてだと言ってましたが、僕もあのあたりまで来るのはすごく久しぶり。街並みが変わっていてびっくりしました。

ARBRE MARKETがある場所にはMOKUという雑貨屋があって、そこでは何度か買い物、あるいは食事に来たことがあったけど、いつのまにかそれが大きく、おしゃれな建物になってたんですね。ピンポンズさんのライブはその建物の2階でありました。

ピンポンズさんの歌を聴きながら、ふと、ああこのあたりは木山捷平ゆかりの場所でもあるなということに気づきました。そんなことを知っているのは日本広し、木山ファン多しといえども僕だけだろうと思っています。いつか姫路文学館で「姫路の木山捷平展」でもやる日が来たら、いろんな情報をお伝えしようとは思っているけど、そんな日は来ない、かな。


木山さんが荒川小学校に勤めていた昭和2年、彼は駅南の南畝町288で「野人」という詩集を第五輯まで発行します。彼が住んでいたのは別の場所。では、一体、その南畝町288には何があって誰が住んでいたんだろうという疑問から僕の木山研究というか姫路の木山探索が始まりました。そこで目をつけたのが彼の昭和2年に書いた「秋」という詩。「この土地でたつた一人の友」の話。タイトルの横には「大西重利に」という言葉が書かれていたので、この大西重利が鍵をにぎっているにちがいないと。その直感は見事に当たっていろんなことがわかったんですね。それがわかっていく過程の面白かったこと。

当時、大西重利が住んでいたのが南畝町288にあった家。実際にはそこにあった部屋を借りて彼の奥さんと幼い娘さん2人と暮らしていた。木山捷平は大西重利の助けを借りて(きっと金銭的な助けが多かったはず)、勤めていた学校には内緒で詩集を出していた。


その当時、大西重利が勤めていたのが駅南の東の方に少し行ったところにある城陽小学校。昨日ピンポンズさんがライブをしたのはその城陽小学校から南に500mほどいった場所だったので、久しぶりに城陽小学校の前を通りました。


僕が世田谷ピンポンズさんの歌を聴きながら思い返していたのは、木山が昭和2年に書いた「友の秋」と題された詩。こんな詩です。


友の秋

つとめからかへると
洋服に柾歯の下駄をひつかけて
がたがたの乳母車に里ちやんをつんで、
ゐなか郊外の午後を
行きつもどりつする友である。
今は道ばたの
やなぎの細葉も色づいて
しみじみ後妻のほしい秋十月。
日がだんだんとかたむくと
痩せてのつぽの友の姿は
乳母車をおしたまま
ひよろひよろと地球の皮をはふのである。


木山捷平が書いた詩には「友」がいくつか出てくるんですが、この「友の秋」の「友」がまさに大西重利のこと。それをつきとめたポイントは「里ちゃん」でした。

「友」、つまり大西重利が勤めていたのは駅南の城陽小学校。そこから姫路駅のすぐ南にあった南畝町288の家に帰る。で、生まれたばかりの娘「里(さと)ちゃん」を乳母車に乗せて「ゐなか郊外」に行く。この時期、大西重利しかこの土地には友達がいなかったので、木山さんも荒川小学校での勤めを終えたらすぐに大西重利の家に会いに行ったんでしょうね。で、きっと何度かは乳母車に乗った里ちゃんと一緒に「ゐなか郊外」を歩いたはず。

これが当時のこのあたりの地図。

a0285828_13091458.png


千代田町は昭和2年に木山さんが住んでいたところ。で、船場川を渡って南畝町があって、さらに東に城陽小学校。

地図を見ての通り、城陽小学校の南には田んぼが広がっていました。昨日、ピンポンズさんがライブをしたのは「北條」と書いているところの下あたり。そこは当時、まさに「ゐなか郊外」でした。


でも、木山さんに色々と協力してくれた大西重利も、いろんな事情からだんだんと木山さんに協力することができなくなってくる。南畝町の家に会いに行ってもそこに大西重利はいない。そのときの気持ちを書いたのが「船場川」。

残念だけど、昨日のライブでは「船場川」が歌われませんでした。でも、2年前のやはり12月におひさまゆうびん舎で開かれたライブで歌ってすごく気に入った「タウン」を久しぶりに聴くことができました。この曲、ピンポンズさんのCDには未収録なんですが、詞も曲も最高なんですね。僕はこのような叙景詩と叙情詩が入り混じったような詩が好きです。木山の詩にもいえることだけど。

2年前のライブの時に録音した音源で聞き取った歌詞を載せておきます。


タウン

世田谷線が横を通る公園で
ホームランバーをほおばりながら
君はコートのフードをすっぽり被り
雪は降ってこないかなと空を眺めてる

赤いビルのてっぺんはうすぼやけ
冬を知らないこの街にも雪は降ってくる
線路を電車がすべってく
いつもの駅から遠ざかってゆく

雪に沈んだこの街で
あなたと私 生きていくのよ

夜が通りを歩いてく
人々は息を潜めて隠れる
どこにも行けない歌だけが
街の広場で鳴り響いてる

線路を電車がすべってく
いつもの駅から遠ざかってゆく
雪に沈んだこの街で
あなたと私 生きていくのよ

雪に沈んだこの街で
あなたと私 生きていくのよ

いやあ、いい詞だな。


最後にこの日のライブで撮ったピンポンズさんの写真を何枚か貼っておきます。黄昏どきの時間だったので、最初はまだ明るかった空が次第に暗くなっていっています(部屋の照明も明るくしたり暗くしたり)。

a0285828_12525427.jpeg

a0285828_12530529.jpeg

a0285828_12531384.jpeg

a0285828_12531864.jpeg

目の前にはいろんなビルが立ち並んでいるけど、ピンポンズさんの歌を聴いていたら、かつて木山捷平が「この土地でたつた一人の友」といっしょに見ていたはずの風景がはっきりと見えてきました。ライブの前に立ち寄った、より城陽小学校に近いカフェで、うるさすぎるクリスマスソングを聞きながらコーヒーを飲んでいた時には木山さんたちのことを思い浮かべることはなかったけど。

きっとピンポンズさんの曲にはすっかり忘れてしまったり、あるいは見ないようにしてしまったような風景や気持ちを呼び起こす力があるんでしょうね。それはときに痛みをともなうことになるのかもしれないけど、でも僕にとっては必要なこと。


by hinaseno | 2018-12-03 12:55 | 音楽 | Comments(0)

平川さんと石川さんが岡山にいた日々から一週間が過ぎ、その時の喜びや興奮、そして三石でお別れした後の、まさに彗星の孤独のようなさびしさを感じていた状態からようやく抜け出して、少し冷静にその時のことを振り返れるようになりました。明日くらいから書き始める予定です。


考えたらちょうど一週間前のこの時間は、岡山大学の控え室となった教室で平川さん、石川さん、そして松村さんと弁当を食べながら、その日の毎日新聞に載った松村さんの『うしろめたさの人類学』の毎日出版文化賞特別賞受賞の話をしていたところでした。実はそのことは松村さん本人だけでなく平川さんも何日か前に知っていたという。それを秘密にして前日のスロウな本屋さんでのトークイベントをされていたわけです。スロウな本屋さんの小倉さんも知っていたということだったので、せめて打ち上げのときくらいに教えてくれたらよかったのに。

ってことで僕は行儀が悪かったけど、買ってきたばかりの新聞を読みながら弁当を食べていました。で、平川さんの岡大での講演が終わった後、牛窓に向かったんですね。


さて、平川さんと石川さんの岡山滞在のことを書き始めたら、相当長い話になりそうなので、後で書いてもいいかなという話を忘れないうちに先に書いておくことにします。

それは三石駅でお別れする前に石川さんから渡された1枚のCDのこと。何枚かあるCDからタイトルを見て選んだような気がします。タイトルは内緒にしておいたほうがいいかな。僕が音楽的に信頼している方がセレクトしたCD。石川さんからは5曲目の曲と8曲目の曲が特にいいよって聴いてたんですが、お別れしてカーステにセットしたら1曲目からツボ。これは最高だなと思っていたら、1曲目の終わり頃で突然ストップ、2曲目以降全く読み取れなくなったんですね。

家に戻って何台かのデッキやパソコンで聴こうとしてもどれもだめ。ってことで、石川さんにメール。暇ができたら送ってくださいと書いたら速攻で翌日送ってくださったんですね。The WillowsのCDの贈り物も付いて。


改めて聴き直したら、どれもいい曲ばかり。中でも一番気に入ったのが15曲目に収録された「Look For The Silver Lining」という曲でした。Rebecca Kilgoreという女性シンガーが歌っているんですが、伴奏のギターが最高なんですね。

ちなみに「Look For The Silver Lining」は僕の愛聴盤の一つであるチェット・ベイカーの『Chet Baker Sings』に収録されているので何度も聴いていました。調べたら、作曲はあのジェローム・カーン。いい曲のはずだ。


YouTubeでRebecca Kilgoreの「Look For The Silver Lining」を調べたらありました。




でも、これ、いただいたCDに入っていたものとは全然違うんですね。僕の聴いたのは伴奏がギター1本。YouTubeに上がっているのはたぶんピアノトリオをバックにして歌っているもの。曲のリズムも全然違う。

実は石川さんから送られたCDの曲目リストではアーティスト名が「Rebecca Kilgore and Jo…」と、最後が省略されていたんです。この「Jo」で始まる人がギターを演奏しているに違いないと。


で、調べたらすぐにわかりました。

僕がいただいたCDに入っていたのは2000年に出た彼女の『It's Easy To Remember』というCDに収録されているバージョン。CDのアーティスト名はBecky Kilgore and John Miller。

John Miller? どこかで聴いたことがあるぞと思ったらこのアルバムの人でした。

a0285828_13111759.jpeg


「Biding My Time (John Miller Plays George Gershwin)」。このアルバム、一時期どっぷりとつかりました。CDも何年か前に出てるんですね。

「Look For The Silver Lining」のギターはジョン・ミラーが弾いていたのか。いいはずだ。

ってことで『It's Easy To Remember』というCDを即ポチ。日本のアマゾンでは星がひとつもはいっていなかったけど、ネットを見たら何人かの人が高い評価をしていました(アマゾンの星よりも数段信頼がおける)。


忘れないうちに書いておく話をもう一つ。昨夜、寺尾紗穂さんの『彗星の孤独』を読んでいたらおっという人の名前が「高知」の話に出てきたんですね。

昨日、「高知といえば、」ということで書こうかと思っていた人。僕にとって高知といえばなんといっても上林暁、そして上林の本を僕に教えてくれた夏葉社の島田潤一郎さんの出身地でもあります。

その上林暁の名前が紗穂さんのエッセイに出てきてびっくり。エッセイのタイトルは「戦中の上林暁」。上林が戦時中の昭和19年に書いた「東京に在りて」というエッセイを紹介しています。紗穂さんも上林を読んでいたんですね。上林を引用して紗穂さんが書かれていたことには深く共感。別のエッセイで書かれていた「みかんは早生の青っぽいものが好き」ということにも激しく同意。

でも、紗穂さんが一番好きな果物といえば桃。

桃といえば岡山は…

長くなるのでやめておこう。桃のことを書き出したらきりがない。


by hinaseno | 2018-11-11 13:13 | 音楽 | Comments(0)

先日、毎日覗いているペットサウンズのブログの「今日のこの1曲コーナー」を見たら、The Willowsという女性3人組のグループの『Tea For Three』というCDが紹介されていました。

知らないグループだけど、しゃれたジャケット。きっとこれは東尾沙紀さんが紹介したものに違いないと思ったらやはり。実はずいぶん前から僕とアゲインの石川さんの間で東尾さんが紹介するCDが注目の的になっているんですね。

東尾さんが紹介するのはほとんどが知らないアーティストの作品なんですが、紹介された曲をYouTubeかなんかで聴いてみたらたいてい僕のツボ。今回もiTunesで聴いてみたらめちゃくちゃ好みでした。

ってことで石川さんに別の話ついでにメールで書いたら、なんと翌日にそのCDが僕の手元に。

a0285828_12214737.jpeg


石川さん、旅行後の忙しさの続く中、すぐにペットサウンズに行って買って速達で送ってくれたんですね。なんだかおねだりしたような形になったみたいで申し訳なかったんですが、でもうれしかったです。

ってことで今、車でずっと聴いています。いい曲ばかりで、ジャジーなコーラスもたまりません。特に気に入っているのはラストに収録されたアンドリュース・シスターズのカヴァー「(I’ll Be With You) in Apple Blossom Time」。


さて、その東尾さんが宛名書きをして送ってくれたはずの小包で届いた寺尾紗穂さんのエッセイ集『彗星の孤独』は第4章に入りました。この章はタイトルに県名が入ったエッセイが並んでいて、その県でライブなどをやった時のエピソードを書いています。

最初目次をぱらっと見たときには、一つの県で一つのエッセイかなと思っていたんですが、そうではありませんでした。高知県がずいぶん多いんだなと思って、巻末を見たら高知新聞に掲載されていたものだということがわかりました。残念ながら岡山のエッセイはなし。いつか書いてほしいですね、岡山のこと。


で、昨日読んだ中で一番反応したのが熊本の話でした。タイトルは「熊本 日本の中の異国」。

実は昨日のブログで紹介した松村圭一郎さんは熊本の出身。今まであまり縁のなかった熊本に関心を持ち、とりわけ石牟礼道子さんの本を読むきっかけを与えてくださったのも松村さんでした。

その松村さんと平川さんが今年の3月21日に(ナイアガラデイです!)に隣町珈琲で対談した話の中で熊本の話になるんですね。これの(1/2)の54:00あたりから。

松村さんが「私、熊本出身なんですけど」と言うと、平川さんが「そっか、熊本かあ…。熊本かあ...、熊本なんだ」と感慨深そうに返事をされて、そこから石牟礼道子さんや熊本出身の詩人の話になるんですね。伊藤比呂美、渡辺京二、そして平川さんのエッセイでしばしば登場する谷川雁。

その谷川雁も熊本の人だとわかって、平川さんが一言、

「やっぱ、熊本は変だわ」


この「やっぱ、熊本は変だわ」という平川さんの言葉が僕の中でインプットされていたところに今回の紗穂さんの「熊本 日本の中の異国」だったので、思わずにっこり。


その紗穂さんのエッセイですが、これが嬉しいことに「楕円の夢」の話が出てくるんですね。ああ、おもしろい。

寺尾紗穂さんが熊本で初めてライブをしたのが2011年の秋。で、ライブ後の打ち上げのとき、その会場でDJがダンスチューンの曲をかけたらなんと会場にいた人全員が踊り出したと。これには紗穂さんもびっくり。


私はあっけにとられて、どこを見たらいいかわからなくて、そのうち笑い出してしまった。こんな風景を見たのは初めてで、カルチャーショックを受けた。熊本は日本の中の異国だった。

で、2015年に熊本で行われたのが楕円の夢ツアーの熊本公演。このときに紗穂さんと一緒に全国を回ったのが例のソケリッサ。

ライブの後半、ソケリッサが踊っていると、客の中から踊りに加わる人が次々に出てくたんですね。ソケリッサの人がこれはという人を踊りに呼び込むことはあっても客が自発的に踊りに加わってくるというのは初めてのこと。で、熱気が最高潮の中、アンコールへ。

この日、紗穂さんがアンコール用に用意していたのが僕が紗穂さんの曲の中でとりわけ好きな曲の中の一つである「夕まぐれ」。でも、この曲、すごく静かでしんみりとした曲なんですね。ここからは紗穂さんでなくても笑ってしまう展開。


静かな「夕まぐれ」が始まると、踊りに参加した人たちは、今度は彼らなりのしんみりしたスタイルで踊りに再び加わったのだ。私はアップライトの黒いピアノの体に映る、お客さんの、静かながら表現豊かな踊りをみながら、なんだか面白くなってしまって、笑って音程を外さないように、最後は目をづぶって歌っていた。

想像するだけで面白い。

「やっぱ、熊本は変だわ」。


でも、ライブをした翌年の4月、熊本で地震が起こり、最初に紗穂さんを熊本に読んでくれた人の店も被害を受ける。

エッセイはこんな言葉で結ばれています。


もし次に呼んでもらった時は、光のような歌を歌いたい。闇から明かりさす世界に向かう、光のような歌を。


by hinaseno | 2018-11-10 12:24 | 音楽 | Comments(0)

まさに楕円の夢の中にいたような3日間が終わり、翌日は放心状態。昨日も放心状態が続く中、ずっと放置していたこと、中断していたことをいくつかやりました。近日中にどうしても仕上げたいことがあるので、このブログもしばらくは中断して、ゆっくりと夢の日々のことを書こうかなと考えています。


…なんて思っていたら、ちょっと書きたいことができたので、やはり中断していた寺尾紗穂さんに関する話を少し。

紗穂さんの『彗星の孤独』は時間がない中でも1日に最低ひとつはエッセイを読んでいました。で、昨夜は3つほど。一気に読むのはもったいないので、2つか3つずつくらい読むのがいちばんいい。


昨夜読んだのが「FMヨコハマに行った日のこと」。このエッセイにおっ思うような話が出てきたので、どうしても書いておきたくなりました。「楕円の夢」のPVで踊っているソケリッサの人が登場するんですね。

ラジオの番組にソケリッサの4人と一緒に出演した後の駅に向かう途中でのこと。ソケリッサのKさんが紗穂さんにこんなことを言うんですね。

「寺尾さんの歌を聴いているとキャロル・キングを思い出すんですよ」


僕は「楕円の夢」に出会って以来、紗穂さんのCDを買い集めていくつも曲を聴いたんですが、キャロル・キングを思い出すことはありませんでした。でも、今回の冬にわかれてというユニットの形、そしてとりわけ「耳をすまして」を聴いてキャロル・キングにつながるものを感じたところだったので、おっとなってしまったんですね。それとともにソケリッサの人がキャロル・キングの名前を口にされたことにも驚きました。

エッセイではそのあとソケリッサのIさんやYさんは登場する話になったので、Kさんのキャロル・キング話はそれで終わるのかと思ったら、再びKさんとの話に戻ったんですね。

帰りに乗る電車が紗穂さんとKさんだけがいっしょということになるんですが、そこからの話がなんとも素敵で。ちょっと引用。


ホームで電車を待っている時、Kさんは『キャロル・キング・ミュージック』というアルバムについて、1曲ずつ解説をしてくれた。そして一番最後に「どうだろうか、私、これを日本語訳してみたのだけど、寺尾さんよかったらどれか歌ってみてくれないだろうか」と控えめに言った。言葉は好きに変えてもらっていいとのことだったのでOKした。

この話、調べたら紗穂さんのブログの2013年10月8日に書かれていました。まだ「楕円の夢」が生まれる前のこと。Kさんというのは、この「楕円の夢」のPVで踊られている小磯松美のようです。ブルーの服を着て踊っている男性ですね。




ところで『キャロル・キング・ミュージック』といえば、僕がキャロル・キングがソロのシンガーソングライターになって出したアルバムの中ではいちばん好きなもの。このアルバムです。ジャケットも最高です。

a0285828_14451583.jpeg


好きな曲がいくつもありますが、いちばん好きなのは「It's Going To Take Some Time」、かな。もちろん「Music」も大好き。でも、紗穂さんが歌ってくれることを考えたら1961年にドリフターズに提供した曲の自作カバーである「Some Kind Of Wonderful」がいいかな。


さて、紗穂さんは小磯さんの訳詞したキャロル・キングの曲をライブで実際に歌ったのかなと調べたら見つかりました。2014年3月25日に渋谷のライブハウスクアトロで行われたソロのライブで披露したようです。

歌ったのはこの「Too Much Rain」。




ちょっと意外でしたが、もちろんいい曲。小磯さんはどんな訳詞をして、そして紗穂さんはどんな感じで歌ったんだろう。ああ、聴いてみたい。

それはさておきこのエピソードを知ることができたことで「楕円の夢」の中に大好きなキャロル・キングが入り込んだようで、なんだか嬉しくなりました。

紗穂さんのエッセイはこんな言葉で終わります。いい言葉だ。


公園で手製の家に横たわってキャロル・キングを日本語訳し、日々販売し、ソケリッサの練習をし、人生の終着点を見つめるKさん。オンリーワンの人生の後半生、素敵としか言いようがない。

by hinaseno | 2018-11-07 14:46 | 音楽 | Comments(0)

平川さんと石川さんが岡山にいらっしゃる日がいよいよ明日になりました。

天気もよさそう。どきどき、わくわく、そわそわ、にこにこ…


ところで加古川でのライブの後、寺尾紗穂さんと話をしたときに、実は紗穂さんに平川さん宛てのメッセージを頂いてたんですね。ちょっと強引ではあったんですが、平川さんの『21世紀の楕円幻想論』に書いてもらいました。明日、そのメッセージを平川さんにようやくお見せできるんですが、僕としてはそのメッセージに書かれていることが実現する日を楽しみにしています。いや、きっと近いうちに実現するはず。


さて、前回、さらっと書いた寺尾紗穂さんの『彗星の孤独』の「楕円の夢」のこと。

心に残った言葉をいくつか紹介できればと思っているんですが、とりあえずその一つを。尾崎翠の「こおろぎ嬢」という作品を紹介した後でこんなことを書かれています。


「社会の役に立たないからなくてもいい」「レベルが低くて中途半端だから価値がない」。こういう硬直した考え方を前に、しなやかに返答し続けるものが、芸術であり文学ではないかとも思う。私はだから、産婆になろうとする女を前に、ためらいがちに逡巡するこおろぎ嬢をいとおしく思うし、確(しか)と出ることのない答えを探してうろうろしている姿にエールを送らざるを得ない。私が尾崎翠を好きなのは、ひとつには食や味覚、嗅覚と感情に訴える表現が多いことがあげられるけれど、ちょっと踏み込んで述べるなら、こういう遠慮がちで鈍くさい人物を描きながらもにじみ出てくる、知性のようなものに共鳴するからだ。

これを読んで思い浮かべたのが平川克美さんの『21世紀の楕円幻想論』に書かれたこの部分でした。


「ためらい」とか「言いよどみ」だとか「恥じらい」だとかそういうことがこの社会の中になければ、社会は実は、平穏な人間の住処ではなくなってしまうということです。確かに、きれいごとの社会は、それが永遠に実現できないかもしれないということで、ごまかしなのかもしれない。
 このごまかしをやっているといううしろめたさは、非常にネガティブな、「自分はひょっとしたら間違ってるんじゃないか」とか「これはつくり事じゃないか」という自覚ですね。でも、この自覚が自らの欲望の歯止めになり、生活に規矩を与える。
 よくよく考えてみると「文化」ってそういうことなんだと思うのです。文化の異名は「ためらい」なんです。「うしろめたさ」ということです。

平川さんと紗穂さんが花田清輝の「楕円幻想」に、恐らくは運命的に出会ったのは、それぞれがそれまでに体験したことと、こうあってほしいという理想の社会の姿があってのことだろうと思いますが、僕はそれぞれが書かれていることに深く共感を覚ると同時に、それぞれのどちらがどちらの文章を参照にしたわけでもないのに、言葉と言葉が重なり、響き合っているのを面白く感じています。


by hinaseno | 2018-11-01 15:26 | 音楽 | Comments(0)

もう半月くらい前になるんですが、ある店から1冊の本と1枚のCDが同時に届きました。

本のタイトルは『彗星の孤独』。著者は寺尾紗穂さん。

a0285828_15152790.jpg


CDのタイトルは『なんいもいらない』。アーティスト名は〈冬にわかれて〉。冬にわかれてのメンバーは寺尾紗穂さん、伊賀航さん、あだち麗三郎さん。

a0285828_15153899.jpg


本とCDが同時に届いたのは同じ店に予約注文していたから。注文したのはもちろん武蔵小山のペットサウンズ。いつものようにおまけもどっさりと入っていました。


いずれも待ちわびたもので、本とCDの両方のことを書くにはたぶんかなりの時間がかかりそうだったので、書くのを後回しにしていました。そして今週金曜日からのイベントのことを考えると、またしばらくブログを中断することになりそうなので、今日書くのはさわりだけ。

でも、先に言っちゃうと、本のほうは今年の読んだ本のベスト3に、そしてCDのほうも今年出たアルバムのベスト3に入ることは間違いありません。とにかくどちらも素晴らしいの一語。

といってもCDはすでに100回くらいは聴いたけど、本はまだ3分の1ほどしか読んでいないのですが。


とりあえずまずはCDのことを。

バンド名の冬にわかれてについてですが、「冬にわかれて」という言葉は紗穂さんが好きな作家尾崎翠の詩から取っているんですね。そして尾崎翠は、紗穂さんが花田清輝の楕円幻想に出会うきっかけにもなっています。

実は花田清輝の楕円幻想との出会いについては、8月の加古川でのライブの後、紗穂さんと話ができたのでそこで少し聞いていましたが、今回『彗星の孤独』の「楕円の夢」というエッセイでより詳しく知ることができました。

紗穂さんが何かと出会うのも偶然、たまたまが多いようですが、鳥取というのがポイントかなと。鳥取というのはこれから強く意識する県になりそうです。


表題作の「なんにもいらない」は加古川でのライブで披露された曲。このアルバムの代表曲といってもいいですね。

これがそのPV。日常の、少しだけ喪失感の感じられる風景がたまらないです。




紗穂さんの曲というのは第一印象はそれほどでなくても何度も繰り返して聴くうちに好きになる曲が多いんですね。5回くらい聴くうちに好きになる曲、それから10回も20回も繰り返して聴いているうちにある日突然その素晴らしさに気づく曲…。


今の段階で一番好きなのは2曲目の「耳をすまして」。

そういえば女性1人、男性2人というユニットを紗穂さんが作ったと知ったときに最初に思い浮かべたのがキャロル・キングがダニー・コーチマーとチャールズ・ラーキーとつくったThe Cityというバンドでした。そのバンドの唯一のアルバム『Now That Everything's Been Said』(邦題は『夢語り』)の1曲目に収められた名曲「Snow Queen」にどこか雰囲気が似ています。




ちなみに第一印象で一番良かったのはポップな「月夜の晩に」。これも最高です。

考えたら昨日紹介した青葉市子さんの新しいアルバム『qp』で最初に気に入ったのも月がタイトルについた「月の丘」。昨日紹介しそびれたので貼っておきます。




月の曲っていい曲が本当に多い。


さて、紗穂さんのエッセイ集『彗星の孤独』について。僕はミュージシャンとしての寺尾紗穂という人と文章家としての寺尾紗穂という人を同時に惹かれて好きになったんですが、今回『彗星の孤独』を読んで、エッセイスト、文章家としての紗穂さんの力量に感服しました。

とりわけ最初に読んだ「楕円の夢」は言葉を失うほど素晴らしい。平川克美さんの『21世紀の楕円幻想論』と重なる部分もいっぱい。生きて助かって戻ってきたジャーナリストに対して「自己責任」という言葉で批判している人たちの何人かに届いてほしい言葉がちりばめられています。


そして、その次に読んだ最後の「長いあとがき」も心打たれるエッセイ。そのエッセイは今年の8月16日の出来事から始まります。その日亡くなったのが以前紹介した吉原聖洋さん。で、このエッセイが書かれたのがその5日後の8月21日。僕が行った加古川のライブはその4日後のことでした。


by hinaseno | 2018-10-31 15:17 | 音楽 | Comments(0)