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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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2018年 02月 08日 ( 1 )



平川克美さんの『21世紀の楕円幻想論』に書かれていた「市とは、「無縁」の原理によって貫徹されている場所」という言葉を見て、パッと思い浮かべたのがこの絵でした。だれもが絶対に見たことがあるはず。

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鎌倉時代の市として、小学校から高校に至るほぼすべての歴史の教科書に昔からずっと載り続けています。例えば現在使われている中学校の2種類の教科書にもカラーでこのように大きく。

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この絵は教科書だけでなく、日本中世の歴史書の表紙にもたくさん使われていて、平川さんの本でも紹介されている日本の中世研究の第一人者である網野善彦の本の表紙にもこのように数種類。

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描かれた場所は備前福岡。

そう、まさにあのうどん屋さんがある場所なんですね。絵に描かれている吉井川との距離を考えると、うどん屋さんはこの絵の風景の中に入っていることになります。気づかなかった。


明治時代のこの辺りの地図で確認すると、市があったのは赤丸で記したところと考えられます。

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近くに一日市とか八日市とかの今も残る地名があることからもわかるようにこの辺りにはあちこちに定期市がつくられていましたが、中世においては福岡の市が最も栄えていたようです。


地図には福岡の市につながる道に渡しの船が描かれていますね。今からちょうど740年前の1278年(元寇の2つの役の間の時期です)の冬、一人の遊行・遍歴する僧侶が、船を渡ってこの福岡の市のあった場所にやってきました。

その名は一遍。

そう、あの踊念仏を始めた人。時宗の開祖ですね。


上に紹介した絵は『一遍上人絵伝』(または『一遍聖絵』)の一場面。絵の中に一遍がいると知ったのはわりと最近のことですが、それ以来この絵に興味が俄然増してきて、で、一遍のことをいろいろと調べているうちにいつの間にか一遍ファンになってしまったんですね。特に踊り念仏というのがなんともロックンロール的。


さて、上の絵の中のどこに一遍がいるかというと、ここです。

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かなり粗末な服を着て、日焼けのためか顔が黒くなっているのが一遍。

その一遍を今にも斬りつけようと刀を抜きかけている男が目の前に立っています。向こう側には履物や布を売っている店が並んでいて客と商談らしきことをしていて一遍たちの方には目もくれない。それに対して手前にはそれを心配そうに見つめている人が並んでいます。さらに手前には一遍か、一遍を切りつけようとしている男が乗ってきたと思われる川船が川岸に泊まっています。流れている川はもちろん吉井川。


ちなみにここからは少し離れた場所にはたぶん商売とは関係のなさそうな男が琵琶を弾いていたりするんですね。

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男の身なりはかなりきちんとしていて、盲目の琵琶法師ではありません。彼は一体どんな音楽を奏でていたんだろう。そして彼のほうを向いている人物が彼のすぐ後ろに二人いますが、この二人はどうやら乞食のよう。


ところで一遍はなぜ切りつけられようとしているのか、あるいは一遍はこの後どうなるのかを説明すると話は長くなるので詳しくは割愛しますが、一遍を切りつけようとしているのはあの吉備津神社の神主の息子。その人物はなんと次の場面ではこのように一遍に頭髪を切られているんですね。

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そう、この男は一遍を殺すのをやめたばかりか、出家して時宗の信徒になったんですね。さらにはこの様子を見て300人近くの人がこの地で出家したそうです。

でも、以前も書いたようにこの地ばかりか岡山には現在一つも時宗の寺はありません。


さて、平川さんが『有縁』社会と『無縁』社会」の章で引用していた網野善彦の『無縁・公界・楽』には、時宗は「無縁」の原理を身につけた人だと書いています。さらにこんな言葉も。


こうした遍歴・遊行する時宗が、「宿」「市」などの「無縁」の場を布教活動の舞台としていたことは、乞食・非人を伴い、備前の福岡市(中略)を遍歴した祖師一遍の行動によって明らかであろう。

そう、僕が縁でつながった人たちと会った場所は、かつて中世の市があり、一遍も訪れたまさに「無縁」の地だったわけです。これはあまりにも興味深い発見でした。


ところで、うどん屋さんの近くには「福岡の市跡 一遍上人錫の地」と書かれた石碑が建っています。

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看板にはもちろんあの絵が。この向こうの土手の上にうどん屋さんがあります(店の幟が立ててあるのが見える、かな)。

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そのうどん屋さんの店主が中心になって2006年から毎月第4日曜に定期市「備前福岡の市」を開催しているんですね。目的は地域のつながり作り。つまり「有縁」的な試みと言ってもいいんでしょうね。ちなみに先月末に開かれた市が第143回目。すごいですね。この市、行こう行こうと思いながらまだ行けていません。


さて、直接的には松村さんの縁がきっかけでつながった余白珈琲さんたちですが、たまたまとはいえ、一遍がちょうど740年目にやってきた場所で、しらさぎうどんを始めてちょうど20年目になるうどん屋さんで松村さんと一緒にうどんを食べることになるなんて、思いもよらなかったでしょうね。

でも、これも縁ですね。「無縁」の地で生まれた縁です。

ああ、縁といえばこの前日が余白珈琲の大石くんの誕生日。なんと太田裕美さんも誕生日。これも縁です。


ということで長い話になりましたが、一遍といえば踊念仏なので、最後にレキシの「踊念仏」をと考えましたが、YouTubeになかったので、ちょっと考えてビートルズとビーチ・ボーイズの踊りの曲を最後に貼っておきます。

まずはビートルズの「I'm Happy Just To Dance With You(すてきなダンス)」。

これもやはりジョン・レノンの曲。




それからビーチ・ボーイズの「ダンス・ダンス・ダンス」。曲を書いたのはもちろんブライアン・ウィルソン。こっちのほうが踊念仏できそうです。




by hinaseno | 2018-02-08 15:01 | 雑記 | Comments(0)