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by hinaseno
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2018年 01月 10日 ( 1 )



「2行」問題は資料が届くまでおいておくとして、とりあえず確かなことは大瀧さんとしては『HAPPY END』に収録された「外はいい天気」には納得のいかないものがあって、でも曲としては気に入っていたので、はっぴいえんど解散後に曲に手を入れて、最後に「きみの肩のうえでやさしさが、小さく小さくふるえてる」を入れた形のものを完成形としてとらえていたにちがいないということ。そしてそのタイトルは松本さんの本来の詞に使われている「外はいい天気だよ」。

はっぴいえんど解散後ははっぴいえんど時代の曲をあまり歌わなかった大瀧さんが、唯一「外はいい天気だよ」だけはいろんなライブで歌い続け、さらに『DEBUT』にきちんとした形で収録したことを考えると、大瀧さんが「外はいい天気だよ」を作品としてかなり気に入っていたことがわかります。

確かにこれは『ロンバケ』の作品に並ぶほどの名曲です。


この曲を名曲たらしめている要因は、なんといっても大瀧さんのその作曲法。本当にすごいなと思います。

前回も書いたようにこの曲は詞先。

松本隆さんは最近のインタビューで、詞先で曲をつくれる人があまりいなくなったと何度も語っていました。大瀧さんや細野さん、あるいは筒美京平さんと仕事をしていたときには詞先の作品が多かったけど、それには作曲者の能力が高くないとできないんだと。


ただ、大瀧さんの場合、普通の詞先のやり方ではないんですね。詞をもらっても多くの場合すぐに言葉を分解して、言葉数だけを確認することから始めます。例えば「風にきみの 顔がにじんで」のフレーズであれば「3・3・3・4」として。

ということなのでしばしば本来の詞にあったはずの言葉のつながりが切り離され(ずらされ)、離れていたはずの言葉がくっついて、不思議な世界が生まれる。きっと松本さんもびっくりだったでしょうね。


ちょっと具体的に。

いずれにしても、まず最初にあった詞は、まちがいなく『風のくわるてつと』に収録されていたもののはずなので、改めてその詞を。


 水いろのひかりさしこむ窓に
 きみはひとりぽつん

 風にきみの顔がにじんで……

 水いろの陽に濡れる机に
 きみはほおづえついて
 今朝の夢のつづき思い出す

 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はいい天気だよ

 水いろのひかりあふれる部屋に
 朝は悲しすぎる

 風にきみの夢がにじんで

 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はあんなにいい天気だよ

松本さんは曲が付けられることを想定して詞を書いているので、曲のイメージはこうだったはず。


〈1番〉水いろのひかりさしこむ窓に
    きみはひとりぽつん
    風にきみの顔がにじんで

〈2番〉水いろの陽に濡れる机に
    きみはほおづえついて
    今朝の夢のつづき思い出す

〈サビ〉さあ
    あたまに帽子のせて
    でかけなさいな
    ほら外はいい天気だよ

〈3番〉水いろのひかりあふれる部屋に
    朝は悲しすぎる
    風にきみの夢がにじんで

〈サビ〉さあ
    あたまに帽子のせて
    でかけなさいな
    ほら外はあんなにいい天気だよ


ところが大瀧さんは松本さんがイメージした形を見事なまでにぶっ壊しているんですね。いや、壊したというよりも実際には少しずらしただけなんですが。

驚くのは本来は〈2番〉の1フレーズ目になるはずの「水いろの陽に濡れる机に」を〈1番〉の最後に入れていること。で、〈1番〉の始まりの「水いろのひかりさしこむ窓に きみはひとりぽつん」のフレーズを「きみはほおづえついて 今朝の夢のつづき思い出す」の部分で使っている。切れ目が変わっているんですね。そのために「今朝の」と「夢」が切り離されて「つきけさの」という不思議な言葉が生まれたり…。

一応大瀧さんが歌った形で詞を書いてみます。


 水いろのひかりさしこむ
 窓にきみはひとりぽつん
 風にきみの顔がにじんで
 水いろの陽に濡れる机(テーブル)に

 きみはほほづえつき今朝の
 夢のつづき思い出す

 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はいい天気だよ

大きく見ればここまでが1番ということになるでしょうか。問題は2番ですね。


 水いろのひかりあふれる
 部屋に朝は悲しすぎる
 風にきみの夢がにじんで

ここまで1番同様に歌っても、最後のサビに行くためには、1番の「水いろの陽に濡れる机(テーブル)に/きみはほほづえつき今朝の/夢のつづき思い出す」の3行分に当たる歌詞が足らない。

ということで(松本さんを交えて?)なんらかの試行錯誤があったはず。もちろんそれが例の「2行」問題にかかわる話。


でも、結局大瀧さんは1番と同じ形の2番を作らずに「風にきみの夢がにじんで」の部分を1番の「風にきみの顔がにじんで」とは違うメロディにして、松本さんの本来の詞にあった最後のサビを歌わない形の曲に仕上げました。


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by hinaseno | 2018-01-10 15:46 | ナイアガラ | Comments(1)