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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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2013年 05月 27日 ( 1 )



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荷風がミシガン州カラマズーへ行ったのは、そこにあるカラマズー大学でフランス語を学ぶためでしたが、実際には別の場所に行きたいと思っていました。
『西遊日誌抄』(『断腸亭日乗』第1巻に収録)の1904年(明治37年)11月16日にこんな記述があります。
人に勧められてミシガン州カラマヅと呼ぶ一村落の学校に入る事に決心したり。余は元来南方の生活を愛するが故にミスシツピイの流に従ひて南に下りルイヂヤナの大学に入らん事を欲せしなり。彼の地には今も尚仏蘭西人多く移住し日常其国語を用ゐる由聞及び是非にも行きたく思ひしが風土健康によろしからざればと人々切に止むるにより已むを得ず北に向へるなり。

フランス語を学ぶためとはいえ、かなり嫌々だったようです。で、11月22日にカラマズーに到着。
此地は寒気甚しく夜は殆ど骨も凍るかと思はるゝばかりなり。来るべき一月二月の寒気を思ひやりて余は軽々しくかゝる寒国に来りし事を悔い心甚楽しまず。

ところが寒さは次第に増していったはずですが、荷風は次第にその寒さに慣れていくばかりか、10日くらい後の12月3日にはこんな記述も。
衣香扇形うつくしき都会の夢も漸く心より消失せて静寧極りなき雪ごもりの生活却りて楽しくなり行けり。

さらに12月16日の日記にはカラマズーという土地を愛するようになったことがはっきりとわかるようなことが書かれています。
氷点下以下の寒気は余は初めて経験せし処なるが其れと共に故郷にては見る可からざる寒国の景亦頗佳麗なるを知り得たり。雪白々たる広野のはてより光なき太陽悲しげに上らんとする時或は雪積りし深林に月光の蒼然とさし込みたる時、殊に余の心をチャアムするは短き冬の日の正に暮れなんとする頃雪に埋れたる静なる街路に橇を馳する鈴の音を聞く事なり。この鈴の音を聞く時は身は恰も露西亜小説中の人物なるが如き心地するなり。

「余の心をチャアムする」なんて表現が素敵ですね。荷風らしい詩情あふれる風景描写。
で、この月の終わりに「岡の上」という短編小説を書き上げています。舞台は間違いなくカラマズー。でも、春の訪れを描いているところを見ると、どうやらこの作品も創作のようです。最初読んだときには随筆かと思っていましたが。

そして、この寒い土地にもようやく春がきます。
3月7日の日記。
暖し。夜図書館より帰る時我国にて云う「春雨」の如き小雨音もせで積れる雪を潤す。枯木のかげなる人家の燈影うつくしく漏れ聞ゆるピアノの響そゞろに一家団欒の光景を想像せしむ。

さらに4月23日の日記。この日は日曜日ですね。ランディ・ニューマンがかいた「デイトン、オハイオ 1903」も日曜日の午後の歌。ミシガン州カラマズーの日曜日の午後の風景が描かれています。
午後独歩岡を下り青草茂る牧場に出て小流の辺に佇立む。村娘日曜日の晴衣着て若き男の腕によりつゝ歩めり。

村人に会って、「お茶でも飲みにいらっしゃいませんか」と言われたわけではありませんが、のんびりとした田舎の素敵な日曜日の午後の風景。
ランディ・ニューマンの歌になぞらえればこうなりますね。

It's a real nice way
To spend the day
In Kalamazoo, Michigan
On a lazy Sunday afternoon in 1904

ところで、ネットで調べていたら、この時期、荷風が住んでいたカラマズーの家が載っていました。どうやら今もそのままあるようです。これですね。なかなか素敵な家です。

それからもうひとつ、「カラマズー」という歌がいくつもある事がわかりました。
最も有名なのは「(I've Got A Gal In) Kalamazoo」という曲。
1942年にはグレン・ミラー・オーケストラの演奏したものがポピュラー部門でナンバー1になっていますね。曲を作ったのはHarry WarrenとMack Gordon。Harry Warrenは僕の好きな作曲家のひとり(大瀧さんもお好きなはず)。このコンビでも、たくさんの素敵な曲をつくっています。
というわけで「(I've Got A Gal In) Kalamazoo」を貼っておきます。グレン・ミラーのものにしようかと思いましたが、スティーブ・ローレンスとイーディ・ゴーメ夫妻の方がよかったのでこちらをはっておきます。


Harry Warrenの特集もいつかやってみたいですね。
とりあえずHarry Warrenの作った大好きな曲を3曲ほど並べておきます。
まずは山下達郎もカバーしたこのドゥーワップの名曲。
「I Only Have Eyes For You」。この曲はもう最高です。

次は「The More I See You」という曲。やはり何といってもクリス・モンテスの歌ったものが最高です。これからの季節にぴったりですね。

それから「I Had The Craziest Dream」。これは誰が歌ってるものでもいいのですが、アストラッド・ジルベルトがボサノヴァっぽく歌ってるのがやはり今の季節にあいそうなのでこれを貼っておきます。


話は例によってどんどん逸れてしまっています。
by hinaseno | 2013-05-27 09:18 | 音楽 | Comments(0)