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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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2012年 10月 06日 ( 1 )



木山捷平は歩く人です。
僕はまだ木山さんの作品を読み始めたばかりですが、詩でも小説でも、登場人物がかなり長い距離を歩くものが多いことに気づきます。また、同時に、そのような作品を僕は好んでいるようです。

木山さんの作品で一番最初に読んだのは「軽石」という短編小説です。短編というよりも小品。素敵な小品です。考えてみると、音楽でも文学でも、僕は「大作」よりも「小品」を好みます。きっとこれは、音楽においては大瀧詠一さん、文学においては川本三郎さんの影響が強くあるように思います。

「軽石」は、その川本さんが木山捷平の中で最も好きな作品ということで読み、大好きになりました。これを読まなければ木山さんに関心を持つことはなかったように思います。
a0285828_874670.jpg「軽石」が書かれたのは昭和42年(1967年)。木山さんが63歳のときの作品。木山さんが亡くなられる前年に書かれています。のちに『去年今年』に収められて木山さんの死の直後に出版されることになります。
調べてみると、この年の9月にNHKラジオの「私の本棚」という番組で「軽石」が朗読されています。朗読していたのは何と東野英治郎。僕の世代では、「畏れ多くも先の副将軍」である水戸黄門様ですね。「水戸黄門」が始まるのはその2年後の昭和44年(1969年)のこと。東野英治郎は最近見直している小津安二郎の映画「お早よう」でもそうなのですが、小津の映画では端役を演じていることが多く、しかもたいてい老年にさしかかった愚痴ばかりこぼすさえない男なんですね。後追いで小津の映画を見たとき、水戸黄門世代としては大いに戸惑いました。でも、黄門様の声で「軽石」が読まれるのは是非聴いてみたいですね。ライブラリーに残っていないのでしょうか。

その「軽石」。前段に関しては後日また触れますが、3円(昭和42年ですから、今で言えば30円くらい?)という金額で何が買えるかということであちこち歩き回る話です。何でもいいというわけではなく、それなりに価値のありそうなものを探すのですが、なかなか適当なものが見つからず、かなりの距離を歩くことになります。で、結局見つけたのが「軽石」。それを持ち帰ってからの妻とのやりとりも何ともおもしろい。
まさに味わい深い小品。

この話、当然、いくらかは創作が入っているのでしょうけど、多くの部分は実話なんでしょう。きっと木山さんはこの小説の主人公の正介(木山さんの小説の主人公によく出てくる名前。「捷平」からきてるんでしょうね)がしたように、3円で探せるものをあちこち歩き回ったに違いありません。

木山捷平は若いときからとにかく歩く人でした。

木山さんは大正6年(1917年)、岡山県立矢掛中学校(当時の岡山の名門校の1つ)に入学します。家から学校までの8キロ(当時の表現で言えば2里)の距離を当時13歳の木山少年は毎日歩いて登校します。冬は寒いので、途中で何度か焚火をして(学校に着くまでに5、6回)体を温めていたそうです。しかも彼は走らなかった。他の子たちが遅刻しそうになって走っていても、木山さんは歩き続けます。ウォーク、ドント・ランですね。当然遅刻は何度もしたみたいです。
ある日、担任の教師から「なんで遅れたんだ?」と注意されたら、「走らないから遅れた」と答えて周囲を爆笑させたとのこと。愛すべき木山さんの一端が見えます。

そして木山さんは、姫路にいた昭和3年に、3里(12キロ)の道のりを歩く日々を過ごします。

THE VENTURES - Walk Don't Run

by hinaseno | 2012-10-06 08:15 | 木山捷平 | Comments(0)