
『キネマ旬報』1958年5月下旬号の表紙はスーザン・ストラスバーグという美しい女優。彼女が主演する『女優志願』が公開された頃だったようで、口絵にも写真が掲載されています。

スーザン・ストラスバーグは川本三郎さんの『美女ありき』で知りました。川本さんによれば『女優志願』以降はいい作品にめぐまれなかったとのことで「『ピクニック』と『女優志願』だけの永遠の少女として記憶に長くとどめておきたい」と。『女優志願』は見たことはありませんが、ウィリアム・ホールデン主演の『ピクニック』は好きな映画。素敵なスモールタウン映画のひとつです。
で、『女優志願』の次のページに掲載されているのが『芽ばえ』。主演はジャクリーヌ・ササール。

写真を見る限りではスーザン・ストラスバーグよりも彼女の方が好み。ササールコートというのは彼女の名前からとっているそうです。
『芽ばえ』といえば大瀧さんも大好きな麻丘めぐみさんの曲のタイトルですね。年代は違いますが、つながりがあるんでしょうか。
さて、『新・盛り場風土記』の武蔵小山特集。今日はいよいよ武蔵小山の映画館を紹介。誤植かなと思える部分もありますが、そのまま写しておきます。
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この町の、娯楽と、知識欲を満足させる部分を担当している映画館は、現在全部で5館ある。一番新しくて大きいムサシ小山東映は、小山興行直営の東映封切館。昨年12月28日開館の三階建て定員712名の近代的建築。ロビーの、高野二三男画伯作によるガラスに彫られた海底に泳ぐ裸婦像に、滝が伝わって落下する装飾装置が涼味を呼ぶ名物である。支配人古居正明氏は、周囲の低料金作戦に対抗して、封切料金による興行策を練っている。
鈴木興業に属する南星座、巴里座は、各々定員434名の東宝封切と、定員286名の邦画特選上映館。花井次郎支配人によって総括され、駅に最も近い立地条件を生かして、有利の工業である。
ムサシ小山バラ座は、定員500名の武蔵野映画劇場KK傘下の洋画特選上映館。割引等なしの均一料金興行で、メージャー系米画7割、欧州映画3割の番組。増田耕支配人は、第1・第3日曜に男性向、第2・第4日曜に女性向の番組を組むという苦心のプランをもって興行にのぞんでいる。
荏原プリンス座は定員300名、一般、学割、小人という三段料金による、特選洋画上映館。支配人は鈴木邦夫氏。西部劇、戦争物等がよく、欧州物、ミュージカルは入りが悪いという。
既して、商店街で人出を吸収し、勤労者の多い土地柄から、この地区の興行の比重は、夜の2、3時が主になる傾向のようだ。どの館も昼は入りが思わしくないという。また月初めから15日位に入りが集中するというのもサラリーマン地帯らしい。下駄ばきの人が多く、8時頃から最終回の終るまでをじっくり見る人が多いというのも、商店街の気分と通ずる武蔵小山の観客層の庶民性を語るものだろう。従って、低料金による、庶民層に喜ばれる番組の編成ということが、各支配人の一致した興行目標であった。荏原大映が目下、訴訟係争中で4カ月にわたる休館中であり、近々解決再開の見込というし、目下日活系上映館のないことから、この方面の動きも予想され、この辺が今後、この盛り場興行界の問題であろう。
そして、それ等総ての問題が結局において結びついてくるのは、興行経営の向上と発展を、如何に武蔵小山商店街共同組合によるこの盛り場全体の向上の動きに対応させ、適合させていくかということであるように思われる。
文・白井佳夫
カメラ・日下和時
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では、掲載された写真を。まずは一番新しくて大きいというムサシ小山東映。

東映封切館ということで上映されているのは『大菩薩峠』と『一丁目一番地』。
次はバラ座。

こちらは洋画特選上映館ということで『宇宙への冒険』『マンモスの逆襲』『黒い骰子』が上映されています。どれも見たことありません。
次は荏原プリンス座。

こちらも特選洋画上映館で、西部劇、戦争物等が入りがよいと書かれていますが、上映しているのはジェームス・スチュアート主演の西部劇『夜の道』。これはDVD持ってます。それからもう一つはヒッチコックの『間違えられた男』。これもDVDあるはず。
そしてペット・サウンズ・ビルにあったという南星座と巴里座。まずは南星座。

こちらは東宝封切ということですが、上映している映画はこの写真を見る限りわかりませんね。
で、こちらが巴里座。よく見たら巴里座の右隣に一つお店かなんかの建物があってその向こうに南星座が見えます。つながってるんですね。

巴里座の左に上映している映画の看板が見えます。見にくいんですが看板は二つに分けられているようで右側がたぶん南星座で上映しているもの、そして左側が巴里座で上映しているもののはず。
南星座で上映しているのが『無法松の一生』と『東京の休日』。『東京の休日』のタイトルはたぶん『ローマの休日』からのいただきだと思いますが、これ、池部良が主演しているんですね。ということでもちろん東宝。見たいなあと思いながら、未ソフト化のまま。
巴里座の方でどうにか読み取れるのが『首なし男』。これは『少年探偵団』のシルーズの一つ。巴里座は邦画特選上映館と書かれていますが、石川さんとの対談で森さんがペット・サウンズ・ビルの場所には日活系の映画館があったとおっしゃっていたので、どうやら巴里座で日活系の映画を上映していたんでしょうね。上の記事の中に「目下日活系上映館のないことから、この方面の動きも予想され(る)」と書かれているのでたぶん間違いのないはず。裕次郎とか小林旭の映画がここで上映されてたんでしょうね。芦川いづみに心ときめかしていた人もいたはず。
と、これを書いていたら郵便が届いて、数日前に注文していたキネマ旬報社から出た『映画館のある風景』(2010年)という本が到着。今回これを紹介するにあたって、もしかしたらこの『新・盛り場風土記』というのをまとめた本が出ていないかと調べたら、どうやらこの『映画館のある風景』というのがその可能性が高そうということで注文していたんですね。そうしたら注文した翌日の石川さんのブログにこの本のことが書かれていて(森さんは本をお持ちのよう)、あらあらとなってしまったんです。本を開いてみたら『ミネマ旬報』に掲載されたものをそっくりそのままサイズも同じにして印刷していました。あらあらでしたね。
まあでも、貴重なものなのでこちらで読めるようにしておくのは意味があるだろうと思います。

