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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

雨の中の庭、雨の中の笑い声(その4)ーー 雨に微笑むのって変だよね


小西さんが『冬の本』として紹介していた大竹省二の『世界の音楽家』という写真集、ネットで注文したらすぐに届きました。小西さんが手に入れたという朝日ソノラマの写真選書版(1979)ではなく、最初に朝日新聞社から1955年に出た方のもの。

カラヤンの写真は最後の方にようやく出てきました。全部で4枚。でも、小西さんが「トレンチコートに黒のスウェーター姿の指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンが劇場の観客席に座り、厳しい表情で虚空を見つめている」と表現している写真は見当たらない。

この写真は「黒のスウェーター」を着ているけど「トレンチコート」は着ていない。虚空も見上げていない。言うまでもないけど、「冬」の感じはどこにもない。

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小西さんの記憶違い? あるいはソノラマ写真選書には違う写真が掲載されているんでしょうか。まあ、でも記憶違いというのも一つの確かな真実の形。

ちなみに『世界の音楽家』で一番良かったのは、大好きなチェリストであるピエール・フルニエ。あのフルニエ先生です。

この日のブログでも紹介していますが、僕がフルニエ先生と出会ったのは村上春樹の『海辺のカフカ』の喫茶店(四国の高松駅近くにある)のシーン。喫茶店のマスターが星野青年にフルニエの話をするんですね。あの場面は何度読んでも最高です。


さて、2011年6月30日放送の『これからの人生。』、この日の放送の中で将来は喫茶店のマスターになりたいと言っていた小西さんが「では、ロック喫茶のマスターから、とっておきのレコードをお届けします」の言葉の後に紹介していた曲は…。


実は流れてきたのはこんな言葉。

「わたしがどういうふうに作曲するかご覧にいれましょう。だいたいピアノの前に座って、いろいろ弾いてみます。たいていはビート、音楽業界で言うところのフィールから始めます」

この言葉、実際には英語で喋っているところに日本語の言葉をかぶせているんですね。

で、ピアノの演奏が始まります。でも、ビートを刻むだけなので何の曲なのかはわからない。

そのビートを刻みながら、さらに言葉は続きます。

「そして歌いながら、気に入るメロディを探ります」

そこで聞き覚えのあるメロディをピアノのビートに合わせて歌い始めます。まだ、歌詞はないので「ラッタッタッタ~」と。その歌声とメロディを聴いて、ピアノの弾き語りをしていたのがだれだかわかります。

ニール・セダカ。曲は「Laughter In The Rain」。

観客も曲が何かわかって大きな拍手をします。それがライブの場であることもわかる。

で、サビの部分の前でピアノを弾くのをやめる。

「ここで一旦止めて、私が言うところのはっとするようなコードを見つけなければなりません。つまり心臓が止まりそうになるほどのコードを見つけるのです」

そして、あの♫Ooh, I hear laughter in the rain♫と歌われる、まさに心臓が止まりそうな美しいメロディが演奏されます。

次にメロディに歌詞をつけるときの話。

「その日はちょうど雨が降っていました。窓を開けて、愛する人と手を繋いで、田舎道を歩いている歌なんてどうだろう。タイトルは『雨に微笑を』」

このあと曲がフルコーラスで歌われます。演奏はセダカのピアノだけ。とてもインティメイトなコンサート。


この音源、一体、どのレコードに入っているのか、もちろん探しました。ただ、ニール・セダカのライブ盤っていっぱい出ていて、しかもたいてい「Laughter In The Rain」を歌っているので、これだというのが見当たらない。もしかしたら海賊盤なのかもしれないし。

一応これかなっていうのを1枚取り寄せたんですが、外れ。昨日、もう1枚可能性のありそうなのを見つけたので現在取り寄せ中。さて、当たりか外れか。

ただ、小西さんが番組で流したものとは違うけれど、同じように「Laughter In The Rain」の曲作りの話をしている映像がYouTubeにあったのでそちらを貼っておきます。




ところで小西さんの番組では通訳した部分で「Laughter In The Rain」を邦題の「雨に微笑を」と言ってるんですが、小西さんもやはり曲のタイトルを「雨に微笑を」と紹介していました。

でも、この「雨に微笑を」という邦題、綺麗ではあるんですが、原題とかなり違いますよね。原題の「Laughter In The Rain」は直訳すれば「雨の中の笑い声」。サビの部分で「あ~、雨の中で笑い声が聴こえてくる」って歌っているわけです。別に雨ににっこりと微笑み(smile)を送っているわけではありません(映像的に考えても変ですよね)。でも、もうこの邦題で定着しちゃってるんですね。

ちなみに「サウンドストリート 留守番DJ大瀧詠一」では大瀧さんは一度も邦題を言わず、ずっと「Laughter In The Rain」と言っていました。僕も「Laughter In The Rain」で通そうと思っています。


ところで昔、インターネットをやり始めた頃、よくおじゃましていたサイトで「好きな雨の歌を3曲」と言うアンケートがあったので、僕は迷うことなく「Laughter In The Rain」を入れました。


by hinaseno | 2019-07-18 14:57 | 音楽と文学 | Comments(0)