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by hinaseno
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『麥秋』、『チボー家の人々』、そして『チェーホフ全集』のこと


「井伏鱒二」と「Daddy Long Legs」。

この二つの言葉のつながりが気になって、この言葉を目にした本が置かれていた古書店に行ってきました。2階の、海外文学が並んでいる棚のあたり…、でも、ない。どこにも。

その古書店でまずはチョコレート・ガール探偵をしたあと(収穫はほとんどなかった)、今度はあしながおじさん探偵になって「井伏鱒二」と「Daddy Long Legs」と書かれた本を目にしたはずの棚を何度も往復したけれど見当たらない。「井伏鱒二」も「Daddy Long Legs」も。

売れたんだろうか、それとも僕の勘違い?

あきらめて帰りかけたときに目に留まったのがこの本でした。

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装丁が素敵だなと思って手に取ったらチェーホフでした。訳は松下裕。松下裕は筑摩書房から出ているチェーホフ全集の訳者。中央公論社から出ている神西清訳のチェーホフ全集を手に入れる前に何冊か持っていましたが、でも、この本は筑摩書房からのものではありません。どこから出ているのかと見たら…。


「麥秋社」

ムギは「麦」でなく「麥」。小津安二郎監督の映画『麥秋』と同じ。

「麥秋社」という名前の出版社があるなんて知りませんでした。これも縁、ということで全集を持っているのに買ってきました。どんな「幸福」が描かれているんだろう。


さて、今日6月17日は原節子さんの誕生日。生きていれば99歳。来年は生誕100年ということになるので、またいろいろと動きがあるんでしょうね。

一昨日から見始めた『麥秋』、主演はもちろん原節子さん。彼女の役名は紀子(のりこ)。紀子三部作の2作目ですね。

紀子三部作の1作目の『晩春』では紀子がほとんど恋愛感情といってもいいような思いを父に抱いているのですが、この『麥秋』では紀子は兄の省二に対して恋愛感情に近い思いを抱いているのを知ることができます。でも、その省二は戦争に行ったまま消息不明になっている。紀子の家族それぞれが次の段階に踏み出せない原因となっているのが省二の不在。

逆に言えば省二が永遠に戻ってこないこと(=死)を受け入れたときに、それぞれが次の段階に歩みを進めることになる。紀子が省二の幼馴染の謙吉と結婚を決めるきっかけとなったのも省二。紀子があのニコライ堂の見える喫茶店で謙吉から省二の手紙を受け取ったときに省二の死を受け入れたんだろうと思います。


ところで、ちょっと久しぶりに見ている『麥秋』、好きなシーンがいっぱい出てくるんですが、そのほとんどはやはり原節子さんが登場しているシーン。

映画が始まって10分くらいのあたりで出てくるこのシーンも大好き。

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場所は北鎌倉駅。紀子はホームで電車を待っているとき、少し離れたところで本を読んでいる謙吉に気づいて近づいて声をかけます。挨拶を交わした後、謙吉はその本の話を始めます。


謙吉「面白いですね『チボー家の人々』ーー」
紀子「どこまでお読みになって?」
謙吉「まだ四巻目の半分です」
紀子「そう」

映画に登場した『チボー家の人々』は白水社から山内義雄訳で出ていたもの。全11巻ですが全巻の翻訳が完成したのは映画が公開された翌年の1952年。映画公開段階で10巻までは出ていたようですね。謙吉はまだ半分も読めていなかったわけです。


ところで『チボー家の人々』といえば確か一昨年、夏葉社の島田潤一郎さんが読んでいることを知って、いいきっかけなので僕も読んでみようかと思ったんですが、結局、手に取らないまま。

で、その島田さん、先日、『チェーホフ全集』を読み始めたとツイートしていました。おおっ!と思って、いいきっかけなので僕も読んでみようかと思ったんですが、結局、手に取らないまま。こればっかりです。

そういえば中央公論社の『チェーホフ全集』は小津の『秋刀魚の味』に映っていました。


by hinaseno | 2019-06-17 13:15 | 映画 | Comments(0)