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by hinaseno
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Two Blue Books(その1)


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今年に入って読み始めたこの2冊の本。一昨日に同時に読み終えました。

一冊は夏葉社から自費出版された『見える光、見えない光 朝永作品と編集者』(中桐孝志著)、そしてもう一冊は「Title」という本屋の辻山さんのアイデアから生まれた『ことばの生まれる景色』(辻山良雄 文、nakaban 絵)。

どちらも昨年暮れに出た本ですが、手に入れたのは今年。読み始めたのもあまり変わらないかな。いっぺんに読み終えるのがもったいなくて(どちらも本を目にしたり手に触れる日数を少しでも長くしておきたかったので)、それぞれちょっとずつ読み進めていました。

ということなのでこの2冊はずっと机の上に一緒に置かれていたわけですが、ふと気がついたら、2冊ともブルー。いつもどっちかの本がどっちかの本の上に乗っかっていて、まさにBlue On Blue。それぞれ本当に素晴らしい本で、新年早々、素敵な読書時間を過ごさせてもらいました。


『見える光、見えない光 朝永作品と編集者』は朝永振一郎の著作に尽力した編集者、松井巻之助の仕事を紹介したものですが、著者の中桐さん(岡山のお生まれ)の言葉に、おっと思わせるものがいくつかありました。内容とは直接関係がないんですが、最近のキーワードになっている言葉がいくつか出てきたので。まずは「スーパーバイザー」、そして「セレンディピティ」。


 スーパーバイザーは、自由な雰囲気の場をつくり、実際に手を動かす研究者・技術者に任すことである。一方研究者・技術者はそれにこたえ、自由の精神をもちつづけセレンディピティを養い決して諦めないことである。なかなか難しいであろうが、つねに念頭に置いて心掛ける努力が必要である。
 スーパーバイザーはそのほかいろいろと考え、ホイットニーにも聞きながら実行していくとよいであろう。


実は唐突にスーパーバイザーという言葉が出てきてびっくりしたんですが、あとがきを読んで著者の中桐さんは理学博士となって中央研究所でスーパーバーザーをされていたと知りました。セレンディピティについてはひとつの章で語られています(この本の前に読んだ仲野徹さんの『(あまり)病気をしない暮らし』にもセレンディピティが出てきました)。1998年版の広辞苑によると「思わぬものを偶然に発見する能力。幸運を招きよせる力」と載っているそうです。僕もここで書いていますね。スロウな本屋さんで行われた河野通和さんと松村圭一郎さんのトークイベントで河野さんにセレンディピティの話を伺えたのは一昨年の最高の想い出。


それから『見える光、見えない光 朝永作品と編集者』で、もう一つ、おっと思った部分。


 まさに仁科(仁科芳雄)は、楕円思考の人であったことを語っている。ここで云う楕円思考の人とは、東洋的なものと西洋的なものをそれぞれ楕円の焦点として楕円を形づくり、東洋的なものと西洋的なものを共存させながら考え、行動する人をさしている。
 仁科研究室を運営するさいの一つのポイントは、前述したように理論グループと実験グループを共存させてすすめたことであり、これも先生の楕円思考の然らしめるところであったと思われる。
 このように楕円思考は、両価性のもの・ことをそれぞれ楕円の焦点におき、楕円内に共存させながら、ものごとに対処する考え方である。これは、非常に重要であり、さまざまな局面で役立つであろう。いつの世においても、もっと強調されてよいのではなかろうか。
 楕円思考について、続刊でより詳細に言及していきたい。

楕円思考はもちろん平川克美さんの『21世紀の楕円幻想論』を読んで僕の中に入ってきた考え方。中桐さんが最後に「楕円思考は、両価性のもの・ことをそれぞれ楕円の焦点におき、楕円内に共存させながら、ものごとに対処する考え方である。これは、非常に重要であり、さまざまな局面で役立つであろう。いつの世においても、もっと強調されてよいのではなかろうか」と書かれているのは平川さんが主張されていたのと同じ。その通りですね。

僕の考えでは、真円思考の人にはあまりセレンディピティは起こらないんだろうなと。たぶん、いや、きっと。


『ことばの生まれる景色』についてはまた次回ということで。それにしても中桐さんの言葉で一つ気になったのは「スーパーバイザーはそのほかいろいろと考え、ホイットニーにも聞きながら実行していくとよいであろう」に出てきた「ホイットニー」。いったいだれ? どこかで読み飛ばしたかな。


by hinaseno | 2019-01-17 11:03 | 文学 | Comments(0)