今年、もっとも衝撃を受けた曲はやはり寺尾紗穂さんの「楕円の夢」。もう何度聴いたかわからない。
その3番からの歌詞をときどき口ずさみます。こんなふうに。
楕円の話を聞きたいの
ほんとはどちらか知りたいの
どちらもほんとのことなんだ
そんな曖昧を生きてきた
明るい道と暗い道
おんなじひとつの道だった
あなたが教えてくれたんだ
そんな曖昧がすべてだと
明るい道と暗い道
スキマの小道を進むんだ
あなたが教えてくれたのは
楕円の夜の美しさ
楕円の夜に会いましょう
月の光で踊りましょう
世界の枯れるその日まで
楕円の夢を守りましょう
明るい道と暗い道
スキマの小道を進むんだ
あなたが私においてった
楕円の夢をうたいましょう
実はこの歌詞、いくつかの部分が本来の歌詞と違っています。
最初の「楕円の話を聞きたいの」は本当は「私の話を聞きたいの」。でも、いつのまにか僕の中では「楕円の話を聞きたいの」になってしまっていて、ずっとそう口ずさんでいたんですね。間違えて歌詞を覚えていたんです。
間違えていたといえばそのあと「ほんとはどちらか知りたいの」。ここ、歌詞カードを見たら「ほんとはどちらか聞きたいの」となっていたんですね。でも、紗穂さんはそこでははっきりと「知りたいの」と歌っています。どうやら歌詞カードの方が間違えたようです。
いずれにしても、
楕円の話を聞きたいの
ほんとはどちらか知りたいの
どちらもほんとのことなんだ
そんな曖昧を生きてきた
って歌詞。悪くないですよね。紗穂さん、ごめんなさい。
もうひとつ、僕が口ずさんでいる歌詞と本来の歌詞と違っているのは「明るい道と暗い道/スキマの小道を進むんだ」の部分。「スキマ」は本当は「狭間」。でも、僕のブログの流れ的には「狭間」ではなく「スキマ(隙間、透き間)」という言葉を使いたくなってしまうんですね。
さて、「楕円の話をききたいの」といえば、やっぱり平川克美さんですが、なんとその平川さんが来月、岡山にいらっしゃって講演を、さらに「スキマ」の松村圭一郎さんとスロウな本屋さんで対談することが決まったんですね。超ビッグニュース。
昨年の秋にミシマ社から出版された松村さんの『うしろめたさの人類学』を読んで深い感銘を受け、さらに今年の初めにやはりミシマ社から出版された平川さんの『21世紀の楕円幻想論』で衝撃を受けたわけですが、僕がなによりも驚いたのはほんの数ヶ月の時を隔てて出版された2つの本に、あまりにも重なる部分が多かったことでした。それぞれの著者が本を書くまでは面識がなく、専門分野も全く違い、親子ほどの年の差があるにもかかわらず、これほど似たようなことを考えている人がいることに感動すら覚えました。
しかも興味深いのは松村さんは現在岡山に住んでいて、平川さんは以前から岡山に関心を持たれていること。
さらに言えば、僕は松村さん経由でスロウな本屋のことを知ったんですが、そこで初めてスロウな本屋さんのサイトを覗いた時に最初に目に飛び込んできたのがこの写真だったんですね。
そこには平川克美さんの『言葉が鍛えられる場所』が飾られていました。
2016年に大和書房から出たこの本の「嘘 ーー 後ろめたさという制御装置」という章で僕は「うしろめたさ」という言葉をキーワードとして捉えるようになったんですね。
なんというつながり。でも、すべて「たまたま」。
たまたまにしてはあまりにも運命的すぎるこの不思議なつながりを考えたとき、これはぜひスロウな本屋で平川克美さんと松村圭一郎さんの対談をやってもらわなくてはならないなと、勝手な願いをこのブログのどこかに書いたはずですが、それが実現することになったわけです。感涙。
ということで、こちらが11月2日の夜にスロウな本屋さんで開かれるトーク・イベント。
詳しくはスロウな本屋さんのサイトで確認してください。予約受付は今日の20:00からです。平川さん、松村さんそれぞれの人間的な魅力はいうまでもありませんが、それぞれの対話から楕円とスキマが膨らんでいくのを目の当たりにできる機会はめったにないです。
ということで、楕円の夜に会いましょう。高橋和枝さんの「トコトコバス」に登場した月が出ていれば最高だけど、残念ながらその日は満月ではありません。
それから、もうひとつ、平川さんは翌11月3日には岡山大学で講演もされるんですね。講演のタイトルは「考えるための文学 ~移行期的混乱を生き抜くために~」。
こちらは無料で見ることができます。
僕はもちろんどちらも参加します。
いや、参加どころか追っかけ以上ストーカー未満のようなことになりそうだけど。ああ、楽しみすぎる。