今日から先日の寺尾紗穂さんのライブの話を書く予定でいましたが、昨夜、さくらももこさんの訃報が飛び込んできたので、取り上げないわけにはいかないですね。
僕にとってさくらももこさんといえばやはりこの『ちびまる子ちゃん』のテーマソングということになります。タイトルは「うれしい予感」。歌っているのは渡辺満里奈さん。
作詞はさくらももこさん、作曲は大瀧詠一さん、そして編曲は大瀧さんの変名としては久しぶりに使われたCHELSEA。
さくらももこさんは大瀧さんの大ファンで、ずっと大瀧さんに主題歌を作ってほしいと思っていたんですね。で、『ちびまる子ちゃん』の第2期がスタートする前年の1994年のたぶん年の初めくらいに大瀧さんにダメ元で依頼します。すると大瀧さんからはこんな返事が。
「もし今年、ジャイアンツが優勝したら、ちびまる子ちゃんのテーマソングを作ります」
と。
このナイアガラー的には有名なエピソードについて、さくらももこさんが語っている話がネットに貼られていたので紹介しておきます。『おめでとう』という本に書かれているようです。
「大瀧さんは大の長嶋ファンなのだ。長嶋さんが一度ジャイアンツを去り、そして復帰してまたジャイアンツの監督になるという事はジョン・レノンが生き返ってビートルズが再結成するのと同じくらいあり得ない事なのにそれが起こったのだからすごいのだ、と熱弁していた姿を思い出す。それで私も、いつもの年よりも必死でジャイアンツを応援した。あんなに白熱して野球を観た事はない。どうか勝ちますようにと神に祈りながら観た。祈りが通じ、ジャイアンツが優勝した。するとすぐに大瀧さんからFAXが届き、『約束通り、まる子ちゃんのテーマソングを作ります』と書かれていた」
ちなみにジャイアンツが優勝を決めたのはかの有名な「10.8」。優勝を決めた後、すぐにレコーディングを開始します。で、その年の暮れに収録された新春放談ではシングル・バージョンとテレビバージョンの両方を流していたので、大瀧さんとしては驚くほど早い仕事になっています。個人的には、前にも書いたかもしれないけど、曲は(あるいはオケは)かなり前に書かれていたのではないかと考えています。もしかしたら『EACH TIME』の前の、『NIAGARA TRAIANGLE VOL.2』を作っていた頃に。ちなみにいえば『A LONG VACATION』と『EACH TIME』のアレンジャーは多羅尾伴内という変名を使っていますが、『NIAGARA TRAIANGLE VOL.2』のアレンジャー名はCHELSEA。「うれしい予感」と同じなんですね。
その「うれしい予感」が『ちびまる子ちゃん』の第2期の最初の放送日に流れます。1995年1月8日。この日のお昼にはこの年の新春放談の第2回目の放送があった日。『ちびまる子ちゃん』の放送に先駆けて「うれしい予感」のテレビバージョンと、番組の挿入歌である植木等さんの歌う「針切じいさんのロケン・ロール」が本邦初公開という形でかかっています。
そしてこの2曲のカップリングしたシングル盤が2月に発売ということになるんですが、放送の翌週の1月17日に阪神淡路大震災が起こります。シングル発売に向けてのプロモーションを前日に始めたばかりだったんですが、大瀧さんとしてはシングルの発売やプロモーション活動を続けることに悩むんですね。大きな災害が起きたときには、一度きちんと立ち止まった方がいいと。「うれしい予感」というタイトルも、大震災や、さらに3月に起こった地下鉄サリン事件を考えると、相当に戸惑ったようです。
とまあ、いろいろと「うれしい予感」が生まれた年にはいろいろと考えさせられることが多かったんですが、曲はとにかく抜群にいいです。久しぶりに聞き返したら、この曲の歌詞には「天使」が登場してたんですね。
「まほうかけてくれた天使が ここにいるんだよ」と。
そういえば昨日さくらももこさんについていろいろと調べていたら、さくらももこさんは大瀧さんの「魔法の瞳」が好きだと。この曲への意識から「まほうかけてくれた天使」という言葉が生まれたのかもしれませんね。
以前、天使ソングをいろいろと探していたときに大瀧さんが「天使」と歌っている曲はないかと探して見当たらなかったんですが、あったんですね。ってことで、今朝から『DEBUT AGAIN 』に収録された大瀧さんの歌う「うれしい予感」を追悼の気持ちでずっと聴いています。
ああ、もう一つ、天使といえば、村上RADIOに出した僕の質問というのは村上さんの好きな天使ソングを教えてくださいというものでした。ちょこっとエンジェルスの大谷くんの話を添えて。
大谷くん、1994年生まれですね。さくらももこさんが巨人の優勝を願い続けていた時に生まれていたんだ。
これは「うれしい予感」をレコーディングをしていた頃の写真。右からさくらももこさん、大瀧さん、そして渡辺満里奈さん。写真が載ったのは『ミュージック・マガジン』という雑誌。