「九月になれば」の話をいくつか書こうと思っていますが、♪三月に入ったら~♪の季節、つまり「早春」も僕にとって9月と並んで大事なとき。
以前「早春コレクター」ということを書いて、いくつか集めていた「早春」というタイトルの作品を紹介しましたが、実はそのとき、最後にちょっとだけ秘密という形にした話を載せたたんですね。別に秘密にする必要はなかったんだけど、なんでだろう。
その日のブログ、タイトルは「「早春」をあつめて」。
暇を見つけてはジャック・ケラーの未聴曲をチェックしては集めているように、「早春」というタイトルの作品も探しています。で、ある日見つけたのがこれでした。
小沼丹の「早春」。
載っていたのは1958年に出た『女学生の友』という雑誌の3月号。まさに早春ですね。
その日のブログではこの写真を載せただけでコメントは何も書いていません。すごい発見をしたぞ!って気分だったんです。写真の下には秘密めかした形でこう書いています。
この作品が掲載されていたのは少女向けの雑誌。可愛らしいイラストもついていてびっくり。
内容は女子高校生のほのかな恋心を描いたたわいもないもの。ちょっと調べたら全集にも入ってないし年表の作品リストにも入っていない。
この作品のことをあの人に伝えたらきっとびっくりするだろうな。
というわけで早速「あの人」、つまり小沼丹の大ファンである龍野のYさんにお見せしようと思ったんですが、いろいろと用事が立て込んで、その雑誌もどこかにしまいこんで忘れてしまっていたんですね。
で、今年のゴールデンウィーク前にYさんから連絡があって、岡山に仕事で来ているということで、そんなに遠くない場所だったので久しぶりにお会いしましょうとなって、ときにその雑誌のことを思い出しました。もちろんYさんにプレゼント。かなり驚かれていました。
ところがそれから間もなく、びっくりするような情報が飛び込んで来たんですね。2年前に木山捷平の未収録作品を集めた短編集を2冊出した幻戯書房から小沼丹の未収録作品を集めた短編集が2冊出るという情報。
目にとまったのは副題についている「小沼丹未刊行少年少女小説集」という言葉。もしやと思ったらやはり。まさにあの「早春」をはじめ『女学生の友』に掲載された作品や同じく若い女性向けの雑誌である『それいゆ』に掲載された作品を集めた作品集。すごいのがすごいタイミングで出るんだとびっくりでした。
その2冊、先日ようやく入手しました。
で、さらに驚いたことに、幻戯書房からは今月末にはもう1冊『不思議なシマ氏』というタイトルの小沼丹の短編集が出るんですね。こちらもたぶん全集に入っていない作品を集めたもののはず。
こんな本が出るなんてって感じですが、理由があるんですね。実は今年は小沼丹の生誕100年。今回出た3冊も「生誕百年記念」となっています。
小沼丹生誕百年といえばこのときのために早くから動いていた人がいます。それが龍野のYさん。
Yさんは相当前から小沼丹生誕百年祭をすることを言われていたんですね。でも、それは遥か先のように思っていたんですが、ついにその年が来たんです。
小沼丹が生まれたのは1918年9月9日。
ということで今年の9月9日から龍野にあるYさんの九濃文庫でその小沼丹生誕百年祭が開かれます。お近くの方、ぜひ足を運んでください。もちろんお近くでない方も。龍野は本当にいい町です。