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by hinaseno
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大竹英洋さんの星野道夫との出会い


小田川だけでなく身近なところにも被害があって、気持ち的にもゆっくりと音楽を聴いたり本を読んだりすることがしづらい状態が続いています。

日々、ほんのちょっとずつ読み進めている大竹英洋さんの『そして、ぼくは旅に出た』という本、ようやく半分くらい読みました。全然、進んでないけど。

読むのが遅い理由はもちろん読む時間があまりとれていないこともありますが、例によって地図を見て場所を確認しながら読んでいるため。でも、この本の舞台となっているカナダとの国境に近い北米のノースウッズと呼ばれる地域を航空写真で見たらこんな場所なんですね。

大竹英洋さんの星野道夫との出会い_a0285828_14542056.png


湖と森が広がっているだけの地域。すぐに場所を見失ってしまいます。でも、大竹さんのカヤックでの旅をちょっとずつ辿っているうちに少しずつ地形が自分の中に入ってきて、フィシギなもので大竹さんと自分が同化していくんですね。旅行記とか探検記を読むのは昔から好きですが、そんなふうに同化できる人もいればぜんぜんできない人もいる。多分大竹さんの行動形式は僕のそれに似ているところがあるんでしょうね。たまたま起きたことや思いつきで行動するところなど。


さて、この本を開いて最初に見た巻末に掲載された「この本に出てくる書籍や雑誌のこと」のリストにあった星野道夫の『旅をする木』がいつ出てくるかと気になっていたんですが、ようやくその話が。大竹さんに写真家になるというきっかけを与えたのはやはり星野道夫でした。


大竹さんが星野道夫という存在を知ったのは、きっと多くの人がそうであったように彼の訃報がきっかけだったようです。

それは大竹さんが大学2年の夏休みのとき。当時大竹さんはワンダーフォーゲル部に入っていて昼下がりの部室で夏合宿の準備をしていたとき、その年に入部したばかりの後輩が新聞を手に持って部室に現れたそうです。でも様子がおかしい。無言で悲しげに新聞を見つめる後輩に声をかけたら、彼が好きだった星野道夫という写真家がヒグマに襲われて亡くなったことを聞かされる。で、大竹さんは早速その帰り道に書店に行き、星野道夫の写真集を見て心打たれる。それから手にしたのが『旅をする木』。


自然のことを伝えるという仕事がいったいどんな形をとり得るのか、それまではよくわかりませんでした。しかし、星野道夫という写真家の存在を知り、写真と文章という表現の可能性を目のあたりにした気がしました。

で、大竹さんは大学3年の冬、周りが就職活動の話で騒がしくなってきた頃に、はじめて一眼レフのカメラを買います。そして今があるんですね。


塩屋で余白珈琲の大石くんから大竹さんの話を聞きながら、さらにその日のもらった『たくさんのふしぎ』に載った大竹さんの文章や写真を見ながら星野道夫との近さを感じていたんですが、やはりこんなきっかけがあったんですね。そしてこういうつながりを本当に嬉しく思います。


ちなみに何度か書いたように僕が星野道夫のことを知ったのは池澤夏樹の1986年5月に出た『未来圏からの風』を読んで。あの本を読んでいた時の気持ちの良さはなかったですね。で、池澤さんと星野道夫との対談を読んで、彼の本を買い集めました。もちろん最初に買ったのは『旅をする木』。

そして、その3ヶ月後に新聞(朝日新聞)に載ったこの記事で彼の死を知ることになります。

大竹さんの後輩がその日見たのもこの記事だったんでしょうか。


大竹英洋さんの星野道夫との出会い_a0285828_14565028.jpg


by hinaseno | 2018-07-09 14:55 | 文学 | Comments(0)