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by hinaseno
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牛窓暮色(その2)


『港町』というタイトルについて少し。

以前にも書きましたが、牛窓は昔、帆船の時代には瀬戸内海を航行する船の寄港地、いわゆる「風待港」(この「風待」が僕の中で「風街」につながったことは言うまでもありません)として栄えていました。

これは昭和10年ごろに撮影された牛窓の海の風景。

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こんなふうに風まかせ、潮まかせの船が牛窓に立ち寄っていたんですね。

で、そんな港町に発達したのが女郎屋。今も数件だけ建物が残っていて、『港町』にも何度か映っていました。


大正時代ごろから機械で動く船が登場して、次第に牛窓は寄港地としての役割を失っていきます。今は正直「港町」という感じではありません。前島へのフェリーの港があるくらい。ああ、でもちょっと離れた場所に大きなヨットハーバーがありますね。映画では映らなかったけど。


ところで「港町」の英語のタイトルは「港町」を表す「Port Town」ではなく「Inland Sea」。「Inland Sea」というのは内海、つまり瀬戸内海のことです。

瀬戸内海はとても広いけれど、かりに大阪の方から西に船で進んだとすれば、瀬戸内海らしさが出てくるのは赤穂を過ぎて牛窓に近づいたあたりからなんですね。といっても実際に見たわけではないけど。

ただ、わが荷風が敬愛する成島柳北が例の『航薇日記』で、大阪から岡山に向かう航海の、牛窓の港に入る直前に、こんな言葉を書いているんですね。


「薇陽は風景播州よりも勝りたるところ多し」

今はもう失われてしまっているけど「薇陽」という表現がいいんですね。ここから瀬戸内海は瀬戸内(せとうち)と親しみを込めて呼びたくなるような島々が点在する風景が続くことになります。


ところでひと月前、久しぶりに牛窓に行ってきました。

ワーゲン(「壊れかけ」じゃないけど)が停まっていたので、「雨のウェンズデイ」的風景を撮ってみました。想田さんに倣ってモノクロで。

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でも、なんだかかなりイメージが違う。別れの予感が少しも感じられない。目の前に並ぶ島々が、あまりにも優しすぎるんですね。

ちなみにこの場所、映画でクミさんが魚の干物(だったっけ?)を持っていった家のすぐ隣です。


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by hinaseno | 2018-04-24 15:51 | 映画 | Comments(0)