「人生」のことを考える日々。基本的には今日と、ちょっとだけ未来の人生のことだけど。
僕の人生を振り返ってみたときに、小津安二郎の『早春』という映画との出会いは人生を大きく変えたなと思います。映画にまつわるあらゆることの影響の中にどっぷりとはまり続けています。どちらかといえばやや暗い感じの映画ですが、「早春」という明るいタイトルがこの作品をさらに愛着のあるものにしてくれたことは確か。
そして世田谷ピンポンズさんが「早春」というタイトルの、とびっきり素敵な曲を作ってくれたことも大きいですね。
ってことで、いつからか「早春」という言葉に目が止まるようになり、「早春」という作品を集めるようになりました。まさに早春コレクターになりかけています。
文学で言えば最初に目が止まったのは志賀直哉の『早春』。次に藤沢周平の『早春』。
で、つい先日、あの庄野潤三にも『早春』と題された作品があることがわかったので速攻でゲット。
その庄野潤三の『早春』は冒頭、竹久夢二の絵入り詩集『小夜曲』という作品の話が出て来ます。舞台は神戸。どんな話かすごく気になりますね。ちなみに夢二には「早春」という絵があります。
絵といえば、世田谷ピンポンズさんにはぜひ「早春」のシングル盤のレコードを出してもらいたんですね。で、「早春」と題されたジャケットをWacaさんに描いてもらったら最高です。
さて、「早春」というのが本のタイトルになっているものはそんなにないようですが、「早春」と題された作品はあふれるほどあるはず。すぐに頭に浮かぶものでいえば小山清のエッセイ。それから木山捷平にも「早春」という詩があります。昭和7年に書かれたもの。
早春
二位ケ浜の
崩れた防波堤の下に蹲り
さくさくさくと
砂を掘れば
紅色の茎に
黄色う二葉を持つた
香高い浜防風が
砂の中にのびてゐた
「二位ケ浜」というのは「二位ノ浜」のことのようですね。山口県の北のほうにある海岸。結婚して間もない時期に山口県出身の奥さんといっしょに訪れたんでしょうか。
さて、先日、ちょっと「早春」についてネットでチェックしていたら、かなり偶然ですがこんなのを発見しました。「早春」と題された作品を書いているのは僕の大好きな作家。
この作品が掲載されていたのは少女向けの雑誌。可愛らしいイラストもついていてびっくり。
内容は女子高校生のほのかな恋心を描いたたわいもないもの。ちょっと調べたら全集にも入ってないし年表の作品リストにも入っていない。
この作品のことをあの人に伝えたらきっとびっくりするだろうな。