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by hinaseno

神戸のはずれの小さな海街で珈琲を飲む日のこと(その17)ー 煙のある風景(前編) ー


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毎週一回、家からはそんなには遠くはないけど、風景的にはかなり田舎のパン屋さんに行っています。このパン屋さんを見つけたのは3年前の冬だったかな。たまたまいつもとは違う曜日の夕方にランニングをしていて、すっかり日が暮れてしまったときに、田んぼや畑の広がる風景の中にぽつんと、まるで童話に出てくるような明かりのついた一軒の家を見つけたんですね。なんだろうと近づいて見たら古い民家をそのまま使っているパン屋さんでした。

ちょうどその年の夏に勝山にあったタルマーリーという田舎のパン屋さんに行って、手作りのパンをおいしさというものを知ったばかりだったので、例によって「これも縁」と思ってそこでパンを買うようになりました。

このパン屋さんに行く楽しみは、もちろん焼きたての手作りパンが食べられるということもありますが、もう一つは周辺の風景。これはつい先日撮った写真。

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もうすっかり晩秋の風景。遠くの方では煙が上がっています。

ついでにこちらの写真も。やはり煙のある風景です。

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これは2年前の秋に、同じあたりから撮ったものです。ランニングの途中で撮りました。


昔から煙のある風景が好きで、特に晩秋から冬にかけて、田舎の山あいの町に行ったときにあちこちから煙が立ち上っているのを見るとなんともいえない穏やかな気持ちになります。太古から続く風景ですね。

そんなときに思い出すのは万葉集に収録された舒明天皇の「国見の歌」。


大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば国原は 煙立ち立つ 海原は 鷗立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は

大和にある天の香具山から国を見渡したら、あちこちの家のかまどから煙が立ち上っているのを見て、ああ大和はなんと美しい国だろうと思ったという内容の歌ですね。こういうのを感じ取れる天皇が為政者としていた時代があったわけです。


ところが今の時代、煙はかなり嫌われる存在となっています。洗濯物を干しているときなんかに、近所でだれかが何かを燃やしていたら匂いがついていやですからね。

そういえばずっと昔に書いた大好きだっただるまストーブの話。実家の工場に置いていたものを人にあげちゃったんですが、人にあげた一番の理由は以前は田んぼだった周辺の場所が住宅地になって、家がいっぱい建てられたことでした。一日中燃やし続けていて、工場の上の煙突からは煙を出し続けていたので、きっと苦情のようなものが耳に入ってきていたんでしょうね。

ただ、僕が最後にだるまストーブを燃やして、本(佐藤泰志の『海炭市叙景』でした)を読んでいたときには煙のことは全く忘れていました。後で何か苦情来たかな。


さて、長かったこのシリーズの話もとりあえずは今日と明日くらいで終わりそうです。あいかわらず行き当たりばったりで本題から外れること(珈琲豆的楕縁の内側には入っていたけど)も何度もありましたが、書いているうちに思わぬ発見があったりと、僕個人としてはとても楽しむことができました。で、その最後の話はまさに「煙」の話。


塩屋のイベントで余白珈琲さんに会って話をしていたときに、ちょっとした話の流れで「煙」の話になったんですね。目の前で実演してもらいながら、どうやったら美味しい珈琲を淹れることができるかの話をしていたんですが、そこからいつものように「そういえば」って感じで話が逸れて。

でも、そのときにたまたま逸れていった話が、数日後に思わぬ偶然が結びつくことになったんですね。こういう予想外のことが何度も何度も起こるのが、この珈琲豆的楕縁の世界の不思議です。


ところで話はまた逸れますが「セレンディピティ」という言葉があることを、つい先日知りました。

ウィキペディアにはこう説明しています。

「素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである」


偶然というものに関するものとしては「シンクロニシティ」という言葉が知られていて僕もよく使っていましたが、「セレンディピティ」なんて言葉があったとは知りませんでした。僕の場合の縁はまさにこの「セレンディピティ」でした。


この「セレンディピティ」という言葉を知ったのはこちらのページ。かの有名な「ほぼ日」ですね。最近、ほぼ日の学校長を務められるようになった河野通和さんの「ほぼ日の学校長だより」の1番新しく更新された話「出合ったときが新刊」の話の中に書かれていました。河野さんは「セレンディピティ」を「ふとした偶然から思いもかけない幸運にめぐりあうこと」としていますね。

その河野さんの話も、近いうちに書くことになりそうです。これがまたすごい縁なんだ。


さて、塩屋で余白珈琲さんと話した煙の話ですが、長くなってしまったので、また、次回に。


by hinaseno | 2017-12-05 11:42 | 雑記 | Comments(0)