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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

お先にどうぞ


昨日の朝、ネットにつないだら、かまやつひろしさん(ムッシュ)の訃報が目に飛び込んできました。体がかなりお悪いのは知っていましたが、でも残念な気持ちでいっぱいです。


考えてみたらこのブログではついひと月ほど前にかまやつさんのことを書きました。最近はずっと小泉今日子さんのことを書いていますが、例の「快盗ルビイ」の話を書いていたときに何度も紹介していたのがこのCDでした。

お先にどうぞ_a0285828_15132955.jpg

英題は「EIICHI OHTAKI Song Book Ⅱ」、邦題は「大瀧詠一作品集 VOL.2 (1971-1988)」。邦題にあるように、このCDは大瀧さんが他のアーティストに提供した作品を集めたもの。1988年の、歴史的にはこの作品の最後の作品が小泉今日子さんに提供した「快盗ルビイ」でした。で、1971年の最初の作品は金延幸子さんの「時にまかせて」。ただしこれはプロデュースのみということなのでボーナストラックの扱い。実質的に最初の詞・曲を提供した曲は1975年にかまやつひろしさんが歌った「お先にどうぞ」でした。CDの曲目解説で大瀧さんはこんなことを書いています。


 ムッシュの軽いロカビリー・スタイルのボーカルは、やはりあの当時の人でなければ出ない味があり、私個人としては詞曲の〈提供曲・第一号〉という記念的なこともあり、演奏・歌・コーラスを含めてかなりの〈お気に入り〉の楽曲です。この作品集を〈歴史的〉なものにするため、この曲で始めるのパターンも考えたのですが、今回はレディー・ファーストで女性陣を先頭に持ってきました。

残念ながらこの曲はYouTubeにないのでリンクできませんが、曲調は大瀧さんお得意の、大瀧さんが大好きな〈お囃子ソング〉。♫お先にどうぞ どうぞお先に♫というお囃子が何度も繰り返されます。こんな歌詞。


 お先にどうぞ どうぞお先に
 お先にどうぞ どうぞお先に
 お先にどうぞ どうぞお先に
 お先にどうぞ

 8つの春に恋をした それがぼくの初恋さ
 だけど 破れた恋心
 それもぼくが内気なせい

 16の頃 青春を賭けて燃やしたあの恋も
 夢もはかなく 消え失せた
 それもぼくが照れ屋のせい

 先を急ぎすぎて 遅れをとったこのぼくは
 ぽつんと一人 ただただ佇むだけ

 32にもう間近 あいつもこいつも妻帯者
 ぼくはいまだに 一人者
 それもぼくが内気なせい
 お先にどうぞ どうぞお先に
 お先にどうぞ どうぞお先に

この詞に関してアルバムのプロデューサーからはもっとドラマチックな内容の詞にという要望があったようですが、大瀧さんが書いたのはコミカルなブロークン・ラブソング。で、こんな言葉。


ムッシュは「スパイダースからはマチャアキや井上順と有名になって行き、オレだけが残ったというような歌だね」などと笑っておられたのを記憶しています。皮肉にもこの後、残ったのは〈このワタシ〉だけだったという、笑うに泣けない歴史的事実が待っていようとは夢にも思っていませんでしたが。「お先にどうぞ」と言って自分が残り、「ロング・バケーション」と言ってその後長く休んでしまうという、ナント、自作のタイトルに影響を受けやすいミュージシャンなのでしょうか、ワタシは。

そういえば小泉今日子さんはかまやつひろしさん作曲の「やつらの足音のバラード」(テレビアニメ『はじめ人間ギャートルズ』のエンディングテーマ)をカバーしているんですが、これが素晴らしいんですね。


by hinaseno | 2017-03-03 15:14 | 音楽 | Comments(0)