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by hinaseno
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「(いい)図書館があると本を買わないといけなくなります」


前川恒雄さんの『移動図書館 ひまわり号』で、いちばんよかった話を。「本屋」のことをずっと考えられている島田さんが「図書館」の本を出されたときにはちょっと意外な気がしたのですが、ここにこそ「本」を読むということの本質があるようにおもいました。

日野の古い分館を建て直したときの開会式で、市議会の文教委員長がこんな挨拶をします。

「私たちは、私立図書館によって、皆さんのふところから本代を出さなくてもいいようにしたいと思っています」

このあと、利用者の代表の人がこんなあいさつをします。これが素晴らしいんですね。

「いま、議員さんは、私たちのふところから本代を出さなくてもいいようにしたいと言ってくれました。しかし、図書館があると本を買わないといけなくなります。私も日野に引越してきてから、いい図書館があるので本を読むようになり、子供も本好きになりました。そうすると、どうしても手もとに置いておきたい本が出てきます。借りるだけではすまず、買うことになります。私の家は小さな家ですが、いまは本でいっぱいです」


さらにこんな話が続きます。

 式が終ると、参列していた数人の書店主が私をとりかこみ、口々にいった。
「図書館のおかげで店の売上げがのびた」
「うちは支店を出せるようになった」
 何より嬉しかったのは、
「図書館ができてから店の品ぞろえが変った。いい本が売れるようになった」
 と一人が言うとみんながうなずいたことである。

この話、僕自身も利用者として心から理解できる話。本当にこの通りなんですね。でも、本にほとんど触れることのない無知な為政者にはそれがわからない。そしてその無知な為政者に、昨日紹介したような「みんなをあんまり賢くしてもらうと困るんだよなあ」と考えるような人がくっつくとどういうことになるのか。その状況が今できつつあるんですね。で、とんでもない図書館を作る。
この巨大な動きは全国に広がって、どうやら岡山の高梁市にもそうした図書館が作られるようになったようです。
高梁市はその名の通り高梁川沿いにあって、永井荷風も乗った伯備線(伯備線から眺められる高梁川の美しいこと!)で行ける町。今年の春には川本三郎さんも行かれていて、一度はゆっくり訪ねてみたいと思っていた町だったのですが。
頭が痛いです。
by hinaseno | 2016-09-03 10:50 | 文学 | Comments(0)