ちょっと話がそれてしまいますが、僕が是枝裕和という映画監督のことを意識するようになったのはこの雑誌がきっかけでした。
『東京人』2009年11月号。
そう、大瀧詠一さんと川本三郎さんが成瀬巳喜男の映画について話をするという夢のような対談が実現したときのもの。僕の運命を変えた一冊といってもいいかもしれません。何度読み返したことやら。
実はその号にもうひとつ興味深い対談が掲載されていました。これです。
はっぴいえんど時代のメンバーの一人で、『ロング・バケーション』や『EACH TIME』などで作詞を担当された松本隆さんと是枝裕和監督との対談。是枝裕和という人の名前は評判になった『誰も知らない』で知りましたが、写真で顔を見たのはこれがはじめて。この対談の話題の中心になったのが、当時公開中だった『空気人形』でした。
松本さんと是枝さんが対談されるのはこれが初めてではなく、以前にも何度か話される機会を持っていたらしく、お二人はかなり親しい関係になっているようでした。松本さんは主演のペ・ドゥナに関心を持っていたようなので、是枝監督が撮影のときに松本さんを呼ばれたとのこと。その日撮影していたのはペ・ドゥナがレンタルビデオ店で働くときのシーンだったそうなので、もしかしたら彼女の空気が抜けて、そのあと空気を吹き込まれるシーンだったかもしれません。
『東京人』には『空気人形』のワンシーンをとらえたこんな写真が掲載されていました。
隅田川沿いの塀の上を歩くペ・ドゥナの姿。向こう岸にはビルが建ち並んでいます。「My Baby」のこの部分の詞につながる風景ですね。
風が揺らしてる白いワンピース
ビルとビルの間に海を見てる
この対談で松本さんがこんなことを語られていました。
「はっぴいえんど」ので活動していたときは、「心が空っぽ」というのがテーマになっていました。「空気人形のように」と言えばわかりやすいでしょうか。そんな点にも、今回の映画との共通点が感じられて、面白いなぁと思いました。
「空っぽ」といえばこの「Velvet Motel」に「空っぽ」という言葉が使われていますね。