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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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小川さんに似たひと


昨日の最後に、次回はルーマーというアーティストのレコードにつながる話を、と書きましたが、それは改めてということで今日は別の話を。これもずいぶん前に書こうと思っていたことです。それは小川洋子さんに関する話。
この日、世田谷ピンポンズさんの「鳴るは風鈴」という曲にからめて小川洋子さんの「メロディアス ライブラリー」というラジオ番組のことに触れて、最後に「考えたら小川洋子さんについて書こうと思っている話もお蔵入りしかけています」と書いていたのが今日の話です。

ところで小川洋子さんの「メロディアス ライブラリー」というラジオ番組は毎週日曜日の朝10:00〜10:30の放送。この時間、結構聴き逃してしまうんですね。
実は今日も。
この番組はその日どんな本が取り上げられるかはあらかじめ番組サイトで予告されているので、今日のは絶対に聴こうと思っていたのに、気がついたら11時近くなっていました。オリンピックには興味がないといいながら、たまたまテレビをつけたら男子の水泳をやっていたのでつい見ちゃいました。萩野選手が金メダルをとった400m個人メドレー。日本人初の金メダルですね。
おおっ、やったな〜と思って、しばらくしてはっと気がついて時計を見たら10:30を過ぎていました。

今日の小川さんの番組で取り上げられたのは朽木祥さんの『八月の光』。朽木さんのことは高橋和枝さんが絵を描かれた『とびらをあければ魔法の時間』という素敵な本で知りました(この『とびらをあければ魔法の時間』のことはまた改めて)。
朽木さんは広島出身で被爆二世の人。『八月の光』はあの原爆が落とされた日の話とのことで、近いうちに読んでみようと思っていたら小川さんの番組で取り上げられることがわかったので、いいタイミングと思っていたのに。残念。

さて、小川洋子さんの話。
数ヶ月前のある日、古書五車堂さんで何冊か古い『東京人』を買ったら、その中に小川洋子さんの随筆があって少しびっくり。小川さんと『東京人』という雑誌はちょっと結びつかなかったので。
随筆のタイトルは「1984年、雪。」。タイトルから、おっ!でした。掲載されていたのは『東京人』2001年4月号。

1984(昭和59)年は、前年の暮れから3月くらいにかけて、ふつうはあまり雪が降らないところでも記録的な積雪が続いたんですね。「五九豪雪」とよばれているようです。
当時、小川さんは早稲田大学の4回生で卒業間近。岡山での就職も決まっていました。
こんな話から始まります。

 大学時代、中野坂に住む女子中学生に勉強を教えていた。地下鉄の駅からなら近いのだが、電車賃がもったいなくて、定期の使える国鉄(懐かしい響き……)中野駅から二十分以上歩いて通っていた。
 卒業を間近に控えた1984年の冬は東京に大雪が降った。一体私は何回転んだろうか。岡山育ちの私は、雪が滑るものだということを、その時まで知らなかった。

この随筆には書かれていないけど、当時小川さんはきっとウォークマンを聴きながら歩いていたのではないかと思います。ヘッドフォンから流れていたのは小川さんの大好きな佐野元春。『SOMEDAY』、『No Damage』、そして『Niagara Triangle』。大瀧さんの『A LONG VACATION』もたぶん聴いていたはず。もう間もなく『EACH TIME』という新譜が出るという情報も入っていたでしょうか。いや、それよりもニューヨークに行った佐野さんのニューアルバムの発売を今か今かと待っていた頃かもしれません。

そんな小川さん、家庭教師を終えるとたいてい途中の蕎麦屋に立ち寄っていたとのこと。で、合格発表の日に教え子の家に行ったら彼女は見事希望校に合格。彼女がめざしていたのは音楽大学の附属高校だったので、その日は勉強はしないで彼女の弾くピアノをはじめて聴かせてもらったそうです。そして、帰りのこと。

 帰り、やはりお蕎麦屋さんに入った。いつもよりお客さんが少なかった。食べ終えてお茶を飲んでいると、おかみさんが珍しく声を掛けてきた。
「いつも旦那と話していたんだけど、お客さんとそっくりな顔の人を知っているんです。この人、どう、似ているでしょ?」
 見せてくれたのは雑誌の表紙に映った若い女性だった。彼女が自分に似ているかどうかはよくわからなかったが、私は何度もお礼を言った。見ず知らずの私を、遠くからちゃんと見ていてくれた人がいたことに、感謝したい気持ちだった。


この随筆を読んだ頃、僕は小川さんによく似た一人の少女のことを考えていました。
実は小川さんは、昔から人に「あなたは〇〇に似ている」と言われることが多いようで、この随筆のほかにもそんな話を書いていたような気がします。彼女の『人質の朗読会』に収められた「死んだおばあさん」で、主人公の女性がいろんな人からあなたは私の死んだおばあさんに似ているという話も、いくつかは小川さん自身が実際に体験したことではないかと思います。

僕もたぶん10年くらい前から意識するようになったのですが、小川洋子さんに似た人というのは確かにいるんですね。いろんな所で見かけました。
不思議なことに小川さんに似た人は幼い少女からかなりお年を召された人まで幅広い。手元にある『ユリイカ』の2004年の小川洋子の特集号に収められた写真を見ると、小川さん自身が少女の頃から現在に至るまでほとんど変わらない顔をしています。この写真なんか大学時代の写真かと思いきや2002年、彼女が40歳のときの写真。びっくりですね。
小川さんに似たひと_a0285828_15283472.jpg

別に小川さんの顔が好みのタイプというわけでもないのですが、小川さん似の人を見るとそれだけで好感を持ってしまうようになりました。
で、数ヶ月前に小川さんに似ているというのは卓球の伊藤美誠ちゃん。
ってことで、オリンピックにはあまり興味はないけど、彼女は応援するつもりでいます。
by hinaseno | 2016-08-07 15:29 | 文学 | Comments(0)