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by hinaseno

「信号待ちの風景を三拍子に合わせて」


自宅のプレイヤーにはジミー・クラントンの「ビーナス・イン・ブルー・ジーンズ」が載っかったままで何度もリピート。ときどきはクリフ・リチャードの「ネクスト・タイム」に置き換えてやはり同様に。どちらも何度聴いても聴き飽きないですね。

何度聴いても聴き飽きないといえば、今、カーステ(死語?)に入れっぱなしにして聴き続けているのがマイクロスター(microstar)の先日出たばかりのニュー・アルバム『She Got The Blues』。もうたぶん50回以上は繰り返して聴いているはず。
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マイクロスターという大好きなグループについては、このブログでは一度も書いたことがありませんでした。海外に同じ名前のグループがあるみたいですが、こちらは佐藤清喜さんと飯泉裕子さんのユニット。お二人は夫婦。佐藤清喜さんが作曲とすべての楽器の演奏、飯泉裕子さんが作詞とボーカルを担当しています。

マイクロスターの音楽を初めて耳にしたのは8年前の2008年に出たファーストアルバム『microstar album』。これがとにかく素晴らしかった。
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特に1曲目の「feelin'!」と2曲目の「Sweet Song」は、超を10個くらい並べてもいいくらいの名曲。大瀧さんや達郎さんをきっかけにして聴くようになった音楽(ポップスというべき音楽)にをこれほど見事によみがえらせた曲に出会えるなんて奇跡としかいいようがありませんでした。
もちろんそれっぽい曲はたくさんあったし、今もあることは知っていて、まめにチェックしています。でも、それらほとんどの曲は残念ながら何かに不満を覚えてしまう。メロディやサウンドはよくても歌詞やボーカルの声が気に入らないとか。あるいは1曲よくてもほかはだめとか。
でも、マイクロスターの音楽には不満を覚えることが全くありませんでした。なにもかもが完璧。怖いくらいに。

ただ気になっていたのは、これほど完璧なものを作り上げてしまったら、果たして次があるんだろうかとということ。
実際、ファーストアルバムをリリースしたあと、マイクロスターとしての活動は見えにくい状態になっていました。

そんなある日、突然2枚の45回転のシングル盤が発売されます。
「夜間飛行」と「夕暮れガール」。発売されたのは2011年。
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3年前のアルバムとはサウンドの方向性が少し変わっていたものの、でも、文句なしの極上のポップス。特に「夕暮れガール」は詞も曲も何から何まで最高の曲。死ぬほど好きです。



ところで、今、ネットでチェックしたらこの2枚のシングル、すごい値がついているんですね。びっくりしました。
それはさておき、この2枚のシングルが出たことで、いよいよニュー・アルバムという期待が高まったんですが、再び何年もの歳月が流れることに。
マイクロスターの8年ぶりの新作がこの7月に発売されるという情報が入ってきたときには狂喜乱舞。すぐにアマゾンで予約注文(でも、そのあとペットサウンズの特典を知って死ぬほど後悔)。

で、ようやく手に入った新しいアルバム。
全部で10曲。
タイトルに「ブルース」という言葉が入っていますが、ポップス全開です。どうしてこれほどに僕のツボを知っているんだろうかと思うような曲ばかり。すべての曲がシングルになってもいいようなクオリティ。

そういえば、アートデザインを手がけられた高瀬康一さんは、まさにそれがシングルを集めたものであることを示すように1曲ごとの歌詞の横に”ジャケット”を描かれています。これがまた本当に素晴らしいんですね。曲を音の細部まで聴き込んで、歌詞を言葉の行間まで読み込んで感じとった風景を絵にしています。既発の「夜間飛行」、「夕暮れガール」、「Tiny Spark」以外もすべて45回転のシングル・レコードとして発売してほしい。

まず最初に出すとしたら、やはりこのアルバムのタイトルソングである「She Got The Blues」と「My Baby」をカップリングしたもの。できれば両A面で。

「My Baby」は初めて聴いた曲の中で最初に好きになった曲。3分を切っていて、収録された曲の中では最も短い。小品好きにはたまらない1曲になっています。夏っぽくて、ちょっと切ない詞も素晴らしいです。たとえば

空っぽだからよく響く
青いラムネの瓶を振って空にかざし
きらきらと光る

なんて歌詞には心ときめかずにはいられません。
高瀬さんが描いたジャケットはこの部分の歌詞からイメージを膨らませたものですね。
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それから「She Got The Blues」はアルバムを何度も聴いているうちにいちばん好きになった曲。 アルバムのタイトルにもなっているように、間違いなくこのアルバムを代表する曲。 最高にロマンチックでセンチメンタルな曲です。『A LONG VACATION』でいえば「恋するカレン」のような曲といえるでしょうか。そういえば、もしこのアルバムをLPのように5曲ずつA面とB面に振り分けたなら、この曲は「恋するカレン」と同じくB面の3曲目ということになります。『EACH TIME』でいえば「ペパーミント・ブルー」が置かれた場所。
曲の高揚感を考えると、これが3分33秒の曲とはとても信じられません。

曲は3拍子のワルツ。サビでこんな歌詞が出てきます。

信号待ちの風景を三拍子に合わせて
眼差しをゆっくりPanする

この部分は何度聴いても涙ぐみそうになってしまいます。
で、これが高瀬さんの描いた”ジャケット”。こちらも本当に素晴らしい。
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そしてその次のシングルは「月のパレス」と「友達になろう」のカップリング。
なんて書いていると切りがないのでやめておきます。あとはぜひ聴いてみてください。
「友達になろう」は僕がユーミンのアルバムで一番よく聴いた「Pearl Pierce」、あるいはユーミンが松田聖子に書いた「小麦色のマーメイド」の雰囲気があって大好きです。

ああ、でもペットサウンズで買えばよかった…。

これが新しいアルバムのダイジェスト。曲ごとに高瀬さんの描いたジャケットが出てきます。


by hinaseno | 2016-07-30 12:04 | 音楽 | Comments(0)