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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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ニール・セダカのB面の曲を聴きながら姫路に向かう


いろいろと書きたいことがたまりにたまっていて、でも、ゆっくり書く時間がなくて、お蔵入りしてしまいそうになっている話もいくつか。
ニール・セダカのCDを作ったのも先々週のことで、この話もお蔵入りにしようかと思ったりしたのですが、あえて書きました。
あの時代(1960年代前半)のニール・セダカの楽曲をB面も含めて心から愛し、音楽として高く評価し、自身の作品にも積極的に取り入れているということをしていたのは、世界中を見渡しても大瀧さんしかいなかったということを知ってもらいたかったからです。

ところで僕がコンピレーションのCDを作るときにはたいてい車でちょっと遠出をするとき。ニール・セダカのB-side collectionのCDを聴きながら向かったのは姫路のおひさまゆうびん舎。
といってももう一週間以上も前の話です。

岡山の三大河川でいちばん東の吉井川に近づくと正面に大きな山塊が目に飛び込んできます。
このブログでも何度も書いてきた熊山。
吉井川を大きく蛇行させているのはこの山があるため。小学校6年生のときに初めてこの山に登って以来、何度も登った山。といっても頂上まで行ったのは数回で、いつもめざしていたのはその中腹にある美しい三重塔のある寺。
大瀧山福生寺。
何という奇跡的な名前をしたお寺なんだろうと思ってしまいます。
そういえば、この山、「熊山」という名前からクマがいそうに思われるかもしれませんが、たぶんこの山からクマは発見されていないはず。でも、くまくまちゃんはどこかにいるかもしれません。

さて、その熊山を右手に見ながら熊山の町を通り過ぎるときに「永瀬清子展示室」の場所を示す小さな看板が目に入ります。
でも、その日はニール・セダカの曲を聴きながら通りすぎただけ。

ところで(と、また話がそれてしまいます)先日紹介した永瀬清子は宮沢賢治に大きな影響を受けていたようで、これについてはまたいろいろと調べてから改めて書こうと思っていますが、戦後に熊山に戻って賢治と同じように農業をしながら詩を書くようになって、さらに賢治への理解が深まったようです。
永瀬清子が宮沢賢治のことを考えながら熊山に暮らしていたというのは、大滝さんとも縁の深い宮沢賢治ファンである自分にとっては、何よりも嬉しい発見でした。

その永瀬清子が賢治について書いた随筆に「日輪と山」というものがあります。
宮沢賢治が描いたこの水彩画に関する話。個人的には感動的な文章でした。
ニール・セダカのB面の曲を聴きながら姫路に向かう_a0285828_12352549.png

日輪が山の手前に描かれているこの絵を初めて見たときに彼女は「ある種のよほど幼稚な童画のようだと思い、そこが却って面白い」と思いつつ、でも、山の手前に太陽があるのはやはり「へん」だと思い、それは「宮沢賢治の主観的な空想か誇張にちがいない」と考えたようです。
でも、ある朝、ふと彼女はその絵のことが気になって、彼女の家の東の窓に立って外を眺めます。その窓から見えたのが熊山でした。

 私は実際どのように見えるものか、宮沢賢治がどの程度に主観をまじえて描いたのかを知ろうと思い、ある朝太陽が熊山をはなれるのを待って東の窓に立っていた。
 熊山をみつめてじっと待っていると、次第に光は東の空にみちて来て、ついに太陽はその肩から第一箭をはなった。所が不思議不思議、その時強い光線はかがやきわたり、目もまばゆく射して、山の尾根の線はかき消され、すっかり見えなくなってしまったではないか。
 それは賢治の絵と全く一致しており、それによってまさに賢治の絵がリアリステックに正しい事を知った。それは普通に日本画の日の出の景色として描かれたり、一般に幼稚園の子どもが描いたりするような、山の肩から半円の紅いお盆として登ってくる図柄とは全然別なものであった。
 毎朝のように東の窓には熊山はあり、その肩から太陽は必ず都市百年中出ていたのに、この事実を、私は正しくリアルに自分の眼でみたことがなかったのを、この時はじめて知ったのであった――。

さて、ここを帰りに通るときに聴いていたのは世田谷ピンポンズさんの「カム・バック」という曲。
そう、僕がおひさまゆうびん舎に向かったのは世田谷ピンポンズさんの新しいアルバム『僕は持て余した大きなそれを、』を買いに行くためでした。「カム・バック」は初めて聴いた曲の中ではいちばん気に入った曲でした。
by hinaseno | 2016-07-18 12:36 | 文学 | Comments(0)