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by hinaseno
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平川克美著『言葉が鍛えられる場所』――ちょっとおまけの話(その1)


『言葉が鍛えられる場所』のまえがきで、本の中で取り上げた詩人を列挙したあと、「この中で、実際にお会いして、言葉を交わす機会に恵まれたのは、谷川俊太郎さん、清水哲男さん、小池昌代さんです」と書いているのを見て、そういえばラジオデイズでの小池昌代さんとの対談で、それぞれの好きな詩を朗読し合うということをされていたのを思い出して、ちょっと聴き返してみました。
ここで無料で試聴できます。

平川さんと小池さんはラジオデイズでたぶん4度ほど対談しているはずですが、これはその最初の対談。対談が行われたのは2007年。もう9年も前ですね。小池昌代さんは『週刊ブックレビュー』という番組に出演されているのを見てからファンになっていたのですが(あの番組に出演されて、僕の好きな本を紹介したということでファンになった作家や女優は何人もいます)、その小池さんが平川さんと対談されるということで、大いに喜んだ覚えがあります。
で、この日の対談の後半で、それぞれの好きな詩を2つずつ紹介して読み合ったんですね。当時は(今もですが)詩の世界には疎く、そこで紹介された詩人は4人とも知らない人たちだったという記憶しかなかったので、いったいどんな詩人が紹介されていたのか気になって聴き返してみたらちょっと驚いてしまいました。
特に小池さんがあの詩人の名前を出していたとは! でした。

小池さんが最初に紹介した詩人は、まさに昨日紹介した石原吉郎。「フェルナンデス」という詩を朗読されました。これもいい詩です。小池さんの朗読もいいんですね。

 フェルナンデス

フェルナンデスと
呼ぶのはただしい
寺院の壁の しずかな
くぼみをそう名づけた
ひとりの男が壁にもたれ
あたたかなくぼみを
のこして去った
  <フェルナンデス>
しかられたこどもが
目を伏せて立つほどの
しずかなくぼみは
いつもそう呼ばれる
ある日やさしく壁にもたれ
男は口を 閉じて去った
  <フェルナンデス>
しかられたこどもよ
空をめぐり
墓標をめぐり終えたとき
私をそう呼べ
私はそこに立ったのだ

平川さんもこの詩が好きだったようで、似たよう感じの詩として昨日紹介した「自転車にのるクラリモンド」の名を挙げていました。

平川さんが最初に紹介したのが黒田三郎。「賭け」という詩を紹介していました。「なにか一篇だと言われれば、黒田三郎の『賭け』」だと。黒田三郎という詩人の名前を知ったのは夏葉社から去年出版された『小さなユリと』でした。

順序的にはこのあと小池さんがある女性詩人の作品を紹介するのですが、それは次回に。ということで先に平川さんが2人目に紹介した詩人を。
それは『言葉が鍛えられる場所』に何度も登場する鮎川信夫でした。黒田三郎と同じく荒地派の詩人ですね。平川さんが朗読されたのは「橋上にて」。
鮎川信夫はとにかくかっこいいんだという話になって、小池さんともかっこいいですねということから名前が挙がったのが同じく荒地派の田村隆一。時間の関係で田村隆一の詩は紹介されませんでしたが、平川さんも小池さんも田村隆一の詩を準備していたようです。
この田村隆一の名前を知ったのも夏葉社から出版された『いちべついらい 田村和子さんのこと』(橋口幸子著)でした。黒田三郎の『小さなユリと』と橋口幸子の『いちべついらい 田村和子さんのこと』は昨年、同じ時期に出版されていますね。

さて、小池昌代さんが2人目に紹介したのは実は岡山の詩人でした。ただし、このラジオを聴いたときにはこの詩人の名も、彼女が岡山の詩人であることも知りませんでした。
この詩人を紹介したあとのやりとりを聞くと、平川さんもこの詩人のことをご存知なかったようです。
(つづく)
by hinaseno | 2016-07-11 14:54 | 文学 | Comments(0)