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by hinaseno
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平川克美著『言葉が鍛えられる場所』(その1)


今日7月7日は世田谷ピンポンズさんの新作『僕は持て余した大きなそれを、』の発売日。7月7日はある時期から僕にとって大切な日になっているので、その大切な日に発売されるというのも何かの縁。といっても僕がそれを手にできるのはもう少し先になりそうです。手に入ったら、まためいっぱい感想を書きます。
このブログを読まれている方で、まだ世田谷ピンポンズさんの曲を聴かれたことのない人は、ぜひぜひ手に取ってみてください。きっと人生をほんの少しだけ、確実によいものにしてくれます。

手に取ってもらいたいと言えば、この本も。
平川克美著『言葉が鍛えられる場所』(その1)_a0285828_13583134.jpg

先日紹介した平川克美さんの『言葉が鍛えられる場所』。前にも書いたように、上半期に読んだ本の中でのベスト1は間違いなくこの本です。

この本、装幀もいいんですね。
表紙のイラストを描いているのは赤井稚佳さん。赤井さんのイラストは雑誌『Coyote』の星野道夫の特集などで拝見していました。間もなく発売される『Coyote』の最新号も星野道夫の特集なので、また赤井さんのイラストがみられるかもしれません。
ちなみにこれが裏表紙。
平川克美著『言葉が鍛えられる場所』(その1)_a0285828_13585985.jpg

表紙に使われた紙の手触りもよく、書店に並んでいたら思わずジャケ買い、いや表紙買いしてしまいそうな素敵な本です。

そしてもちろん中身も素晴らしい。滋養に満ちた言葉がちりばめられています。そのほとんどは小さな声で語られた言葉。

本のまえがきで、平川さんはこう書かれています。

わたしが、これまで書いてきたものは大きく分けて、ビジネスもの、経済もの、介護もの、路地裏人生ものの四つの分野がほとんどなのですが、今回ここに文芸ものが付け加わることになりました。

平川さんが書かれた本はこのブログでも何冊か紹介してきましたが、最初に収められたエッセイを読んだだけで、この本が平川さんの著作の中でも特別なものになることがわかりました。帯で鷲田清一先生が「何度も読みたくなる本」と書かれていますがまさにその通り。
一度読み終えてもこの本は本棚にしまい込むことなく、すぐに手にとれる場所に置いて、気になる所を何度も読み返しています。

平川さんが「文芸もの」とされているように、この本では何人もの詩人が取り上げられています。登場順に列挙すると、小池昌代、鮎川信夫、石原吉郎、吉田一穂、黒田喜夫、吉野弘、岩田宏、安東次男、鈴木志郎康、安水稔和、田村隆一、清水哲男、谷川俊太郎、吉本隆明。
正直にいえばここに並んでいる詩人で僕が親しんでいたのは小池昌代と谷川俊太郎くらい。半数以上ははじめて聞く名前でした。
ただし、この本で取り上げられているのは詩人だけではありません。向田邦子、池澤夏樹(今日が誕生日ですね)、リービ英雄といった小説家、あるいはセザンヌ。

そういった人たちが発した言葉が、いかにして鍛えられたか、なぜ、それが鍛えられた言葉となりえたかを読んでいくうちに、生きること=人と関わることにおいてどういうことが大事かに気づかせてくれるような本になっています。

ただ、同じまえがきの最後にはこんな言葉も書かれています。

これらの極めて私的なテーマによって書き進められたエッセイが、果たしてどれだけの読者の皆様に受け入れていただけるのか、不安なところもありますが、ここに収められた詩作品の素晴らしさを皆様と共有できるだけでも、本書を著した甲斐はあると思っています。

平川さんの「不安」をよそに、この本はAmazonの本の売れ筋ランキングで一時200位に入ったり(すごいことですね)、「哲学」の分野では1位にもなっています(このブログをアップする段階では3位)。
生きていく上で言葉を大切にすることの必要性を痛感している(逆にいえば言葉をぞんざいに扱う人たちの存在に危機感を感じている)人が多くいる証拠ですね。こういう本が売れることを心からうれしく思います。

ところで、Amazonの本の売れ筋ランキングにはいろんなジャンルがあってエッセー・随筆の「は行の著者」のランキングは今朝の段階でこうなっていました。
平川克美著『言葉が鍛えられる場所』(その1)_a0285828_1412510.png

なんと1位は星野道夫の『旅をする木』。そして3位が平川さんの『言葉が鍛えられる場所』(2位にいる人についてはノーコメント)。現在はちょっと順位が変わっていますが、たぶん『旅をする木』と『言葉が鍛えられる場所』が1位、2位になった瞬間があったはず。

『言葉が鍛えられる場所』についてはもう少し書きたいことがあるので、それはまた次回に。
by hinaseno | 2016-07-07 14:02 | 文学 | Comments(0)