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by hinaseno
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荷風の総社を歩く、走る(その3)


荷風の総社を歩く、走る(その3)_a0285828_13353280.jpg

今日、5月11日は世田谷ピンポンズさんの誕生日とのこと。この場を借りてお祝いの言葉を。
ピンポンズくん生まれてきてくれてありがとう。

この総社で過ごした1時間ほどの時間がなければ、ピンポンズさんに出会うこともなかったはず。逆に考えれば、ピンポンズさんと出会うためにこの総社でのあれやこれやが用意されていたのかもしれません。
そのピンポンズさん、今月から『COME BACK FOLKツアー』と題されたライブがあちこちで行なわれます。僕もどこかに行きます。特典も気になりますね。
僕の経験でいえば、ライブというのは、行こうかなどうしようかなと思ったときには絶対に行っておくべきだということ。行かなかったら必ず後悔します。間違いなく。
また次にと思っていても、その時のその場でしか生まれないというものもあるんですね。それがライブ。いうまでもないけど、いろんな事情で二度と行けなくなってしまうこともあります。

さて、昭和20年8月27日の『断腸亭日乗』の続き。荷風は吉備線の総社駅に下りて以呂波旅館に向かいます。

総社町にも松林の間に古祠あり、境内ひろく回廊長し、水清き池は菱の葉に蔽はれたり、停車場前の道よりこの神社の境内をぬけて歩むが宿屋以呂波に至る捷路なる由、既に聞き知り居たれば、其のあたりに遊べる子供に聞きたゞして行くに迷はずして宿屋の前に至るを得たり、此の道長く東西に走りて西総社の町より倉敷の町に達すと云、両側に立つゞく人家の中には今猶雑貨薬などを売る商店あり、人家のうしろは皆畑にて南瓜の花さきたり、村田氏余の来るを見、喜びて其室に迎へ程なく晩飯の膳持来る女中にこまごまと注意するところあり、八時頃まで夕凪いつもの如く蒸暑甚しかりしが、眠に就きてより風次第に涼くなり、深夜明月の光窓より入りて蚊帳を照しぬ(宿泊料一日三食にて十円なり)

荷風が下りた駅は吉備線の終点、総社駅...かと思いきやそうじゃないんですね。総社駅から荷風がそのあと歩いて通り抜けた総社宮までは距離があり過ぎます。
実は当時の吉備線の終着駅は現在の東総社駅。ここがもともとは総社駅だったんですね。東総社駅と改称されたのは昭和34年。で、もともと伯備線の駅だった西総社駅が総社駅になって現在はそこが吉備線の終点になっているわけです。
行く前に地図で調べて変だなと思って、いろいろ確認したら荷風が下車したのは現在の東総社駅だとわかったんですね。一応グーグルマップを貼っておきます。赤の丸で囲ったのが荷風が歩いて通り抜けた総社宮。
荷風の総社を歩く、走る(その3)_a0285828_1463161.png

というわけで、僕も東総社駅で下りて、総社宮をめざしました。手には 昭和20年8月27日の『断腸亭日乗』のコピーを持って。岡山にいくつもの荷風の歩いた場所があって、そこを『日乗』を見ながら歩くことができるなんて、やはり奇跡と言うほかありません。本当に奇跡。もともとは何の関心もなかった永井荷風という人が僕の父親の家族が住んでいた岡山市内の弓之町に滞在していて、そこで空襲を受けて父たちと同じように旭川の方に逃げていったという話を知ったことからはじまったのですが。

東総社駅を出るとすぐに東の方に松林が見えました。もちろんそこが総社宮。
荷風が書いているように境内は確かに広い。ちょっと面白かったのは境内に入ると子供の声が聞こえてきたこと。境内の一画に保育園があるんですね。『日乗』に「其のあたりに遊べる子供に聞きたゞして行くに迷はずして宿屋の前に至るを得たり」と書かれていたので、思わずにっこりでした。保育園の子供に「以呂波旅館はどこにあるか知っている?」とは訊かなかったけど。

で、この回廊。
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荷風も「回廊長し」と書いていますが、まさにその通り。ここを歩くときはさすがに感動しました。荷風が70年前に間違いなく歩いた場所を歩いているわけですから。
そして境内には「水清き池は菱の葉に蔽はれたり」と続くように大きな池がありました。
荷風の総社を歩く、走る(その3)_a0285828_13377100.jpg

ただ「菱の葉に蔽はれたり」と書かれていたけれど「菱の葉」は見当たらなかったような。といいつつ、僕はこれを「蓮」と勘違いしていました。「菱の葉」というのはこんな感じなんですね。
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さて、境内を抜けていよいよ以呂波旅館へ。
といっても場所はわからない。まあ、人に訊ねてみれば誰かが知っているだろうと気軽に考えていました。小さな町なので。
そんなときに目に飛び込んできたのが真っ白い洋風の建物。
荷風の総社を歩く、走る(その3)_a0285828_13373856.jpg

素晴らしい。
これはいったい何だろうと入口に向かいました。
by hinaseno | 2016-05-11 13:38 | 文学 | Comments(0)