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by hinaseno
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山陽線から見える風景、そして木山捷平の「赤い酸漿」のこと(その2)


木山捷平の姫路を舞台とした小説としては、この日とその翌日のブログで紹介した「夢前川」という小説があります。昭和35年の『サンデー毎日』に掲載され、後に『斜里の白雪』という短編集に収録されたもの。その日のブログでは「木山さんが姫路の地名を題材にした唯一の小説」と紹介しています。ただし、姫路を舞台にしているとはいえ、実際には姫路は通過しているだけ。しかもそれは夢の中の話。
この小説に登場するのは姫路の東を流れている加古川と西を流れている夢前川、それから夢の中の主人公の家があるのが岡山との県境にある上郡(かみごおり)。そして夢を見た女性が生まれたのが姫路の南にある家島。
夢の中の主人公は加古川から夢前川まで、おそらくは今の国道2号線の通る旧山陽道を通ったはず。途中には彼の昭和2年の友人、大西重利の実家のあった現高砂市の曽根(そういえば曽根を初めて訪れた時も車ではなく山陽線に乗って行きました)や、かつて自身が詩に書いた船場川、そしてもちろん姫路城などもあるにもかかわらず、姫路市内の場所は一切出てこないばかりか、姫路という地名すら出てきません。
登場するのは端だけ。
端といえば『行列の尻っ尾』に収められた「北海道と私」という随筆の最後にこんな言葉がありました。

私は最高とかてっぺんとかいうものは性に合わないが、ハシという場所には妙にひかれるところがあるのである。


木山さんが「端」好きであることは知っていますが、「夢前川」の肝腎な部分の抜け具合には驚いてしまいました。それほどに姫路にはいい思い出がないの、と思わずにはいられませんでした。

さて、「夢前川」の夢の中の主人公の住んでいる場所と同じ、兵庫県の「端」の上郡が小説の冒頭で登場した「赤い酸漿」のこと。
「赤い酸漿」は『笑の泉』という大衆雑誌に掲載されました。タイトルから推測されるように文芸雑誌とは異なり、ユーモアに富んだ、くだけた内容の作品が収録されていたようです。
「赤い酸漿」が掲載されたのは昭和30年9月号。『酔いざめ日記』を見ると、昭和30年6月29日の日記に「『笑の泉』に行き稿料を受けとる。四千五百六十八円」とあります。おそらく「赤い酸漿」の原稿料のことのはず。

木山さんの『暢気な電報』は、掲載した雑誌社の要望があったのだろうとは思いますが、下ネタ話の作品が多くて、正直、やや「・・・」の状態で読み続けていました。未刊行の作品に関しては、僕としてはやっぱり戦前の作品の方が惹かれるものが多いなと。

「赤い酸漿」が示しているものは女性の使用済みの生理用品。
といっても、木山さんは昔から糞尿を含めた人間の生理を題材にした作品をいっぱい書いています。僕の好きな大正14年から昭和2年頃の詩は糞尿だらけ。女性の生理を題材にした作品も、昭和2年に書かれて『野人』に掲載された「赤い糞」(後に「月経」と改題)など、いくつかあります。
でも、以前紹介した「銀線くらべの巻」のように、昔の詩ではイノセントにあっけらかんと牧歌的に描かれていた糞尿ネタが、昭和30年以降の作品では、ときにはエロティックに、ときには単なる下ネタとして使われていて、昔の作品のファンである僕としてはやはりかなり「・・・」状態になってしまいます。
まあ、でもそういう要望があって(当時は超貧乏だったので、どんな要望も引き受けていたはず)、また、それが読者にも受けていたので書いていたんだろうとは思いますが(本人もそういうのを書くのが嫌いではないだろうし)...。

というわけで「赤い酸漿」も、かなりエロティックな予感をにじませながら、物語の主人公はバッグを交換するために上郡から山陽線に乗って姫路に向かいます。
途中には木山さんがお父さんからの仕送りを何度も取りに行った英賀保駅もあります。
さて、いったいどんな場所が出てくるのか、どきどきわくわくしながらページをめくりました。
by hinaseno | 2016-03-18 12:14 | 木山捷平 | Comments(0)