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by hinaseno
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雪子さんはミューズ


幻戯書房から出た木山捷平の2冊の未刊行作品集のうち、随筆集である『行列の尻っ尾』を読み終えました。どれもこれも面白くて興味深い話ばかり。中でも1つ、おっという話があったので、また改めて書くことにします。

ところで、もう半年くらい永井荷風の『断腸亭日乗』を書き写す日々を送っています。大正14年から昭和19年にかけて、今日と同じ日の日記を読んで、気になるものを書き写すという作業。結構大変ですが、たぶん似たようなことをされている人はどこかにいるはず。
今から73年前の今日、昭和18年2月21日の『断腸亭日乗』にはこんなことが書かれていました。この日は今日と同じ日曜日。

正午ゆき子来話。餅を貰ふ。

3年前ならば、この「ゆき子」という人が誰かなんて見当もつきません。でも、今はこれがだれであるかすぐにわかります。この人の名前が出て来るのを楽しみに読んでいるのだから。
名前は阿部雪子。
阿部雪子という女性のことは、この日とその次の日ののブログでも書いています。

荷風の『濹東綺譚』のヒロインと同じ「雪」という名前の女性が晩年の荷風に寄り添っていたというのはあまりにも魅力的な話。この「雪」さんは魔物とはほど遠い存在の人でした。川本三郎さんの言葉を借りるならばミューズ。

ところで一昨年、勝山に行ったときに(勝山に行くときに聴いていたのはジミー・ロジャース)勝山での荷風のことを調べるために立ち寄った資料館で見せてもらった『市川市文学ミュージアム開館記念特別展 永井荷風 ー『断腸亭日乗』と「遺品」でたどる365日ー』(2013年7月20日発行)という冊子を取り寄せてみたら、その中に阿部雪子さんについて書かれたものがありました。例のこの写真も添えられて。
a0285828_12544054.jpg

ちょっと気になったのは彼女の名前。「阿部雪子」ではなく「阿部雪」。引用した文の「阿部雪子」の「子」のところに「し」というルビがふられています。

実は『日乗』でも阿部雪子の名前が阿部雪になっているのが何カ所かあります。
荷風は『日乗』で、親しい知人の名前の最後に「子(し)」とよく付けていたので、どうやら阿部雪子さんの「子」もそれとおなじ判断をしているようですが、ちょっと無理があるような気がします。あるいはきちんと調べられてのことなのでしょうか。

阿部雪子さんがはじめて荷風の家を訪ねて来るのは、この一週間前の日曜日。荷風はこう記しています。

阿部雪子と云ふ女より羊羹を貰ふ。

この表現を見る限り、名前は阿部雪子(ゆきこ)だったはず。

ところで阿部雪子さんのことが気になる理由がもうひとつあって、実は「阿部」というのは母親の旧姓。これで母親か祖母の名前が雪子ならば最高なんですが、残念ながらどちらも「子」がつくものの違っています。

阿部雪子さんは戦争が激しくなった昭和20年にはどうやら東京を離れて疎開したようです。その住所が『断腸亭日乗』に載っています。

阿部 雪 宮城県栗原郡萩野村有馬字有野本町

ここが彼女の郷里なんでしょうか。これが郷里ならばいろいろと調べることができそうな気がします。
個人的には、この郷里(?)が岡山、あるいは母方の先祖がいた四国の町ならば面白かったのですが...。
この場所、調べたら岩手県との県境。大瀧さんの生まれた江刺からそんなに遠くない場所でした。

そういえば阿部雪子さんがはじめて荷風の家にやってきた昭和18年2月14日はバレンタインデー。
バレンタインデーといえば大瀧さんの『ナイアガラ・カレンダー』の2月の曲のこの「Blue Valentine's Day」ですね。



で、その『ナイアガラ・カレンダー』の翌3月の曲がこの「お花見メレンゲ」。



この曲には大瀧さんのお母さんの名前が入っているんですね。それについてはまた次回に。
by hinaseno | 2016-02-21 12:57 | 文学 | Comments(0)