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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

Girl From The South Country



「これ世田谷ピンポンズでしょ?」
「そう」と私は言った。世田谷ピンポンズは『南の国から来た女の子』を唄っていた。何年経っても良い唄というのは良い唄なのだ。
「世田谷ピンポンズって少し聴くとすぐにわかるんです」と彼女は言った。
「口笛がビリー・ジョエルよりも下手だから?」
 彼女は笑った。彼女を笑わせるのはとても楽しかった。私にだってまだ女の子を笑わせることはできるのだ。
「そうじゃなくて声がとくべつなの」と彼女は言った。「まるで小さな子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような声なんです」

なんてやりとりが、たまたま僕のカーステから流れたピンポンズさんの曲を聴いた若い女の子との間で実際にあったら素敵ですね。
でも、実はこれは村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のある部分の話をちょっとだけ変えたもの。実際の話はこうです。

「これボブ・ディランでしょ?」
「そう」と私は言った。ボブ・ディランは『ポジティヴ・フォース・ストリート』を唄っていた。二十年経っても良い唄というのは良い唄なのだ。
「ボブ・ディランって少し聴くとすぐにわかるんです」と彼女は言った。
「ハーモニカがスティーヴィー・ワンダーよりも下手だから?」
 彼女は笑った。彼女を笑わせるのはとても楽しかった。私にだってまだ女の子を笑わせることはできるのだ。
「そうじゃなくて声がとくべつなの」と彼女は言った。「まるで小さな子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような声なんです」


村上春樹の小説の中にはボブ・ディランがよく出て来ます。とりわけ多いのが『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。この作品の影響で僕はボブ・ディランを聴くようになりました。特にこの場面のレンタカーの代理店の女の子とのやりとりは大好きで、文庫本のこのページには栞をはさんだまま。最後の「まるで小さな子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような声なんです」という表現が素晴らしすぎます。これ以上ない適切な表現。
で、この「まるで小さな子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような声」というのはピンポンズさんの声にもあてはまるように思いました。声質はボブ・ディランとよく似ています。
そしてピンポンズの曲を聴いてみてもボブ・ディランの影響を強く受けていることがわかります。

ボブ・ディランの数あるアルバム(全部持っているわけではないけど)でいちばんよく聴いたのは『フリーホイーリン』。ジャケットも最高です。
1曲目はディランの曲で一番有名な「風に吹かれて」。そして2曲目に収められているのが「Girl From The North Country」。「北国の少女」との邦題がついているようですが正確に訳すと「北の国から来た女の子」。
さて、先日紹介した「ホテルリバーサイド」の収められた世田谷ピンポンズさんの『天井の染みを数えている間に』というアルバムには「南の国から来た女の子」というタイトルの曲が収録されています。これもお気に入りの一曲。
タイトルはもちろんボブ・ディランの「Girl From The North Country」をもとにしているはず。曲もそれっぽい感じです。で、イントロはもろに「風に吹かれて」。ディランの『フリーホイーリン』を好きなことがよくわかります。
Girl From The South Country_a0285828_1149070.jpg

ということで最近は久しぶりにディランを聴いています。先日、例のブートレッグ・シリーズのすごいものが発売されたみたいですね。少し心が動いています。

ところでおひさまゆうびん舎のライブの日に買ったピンポンズさんの覆面本。正直、表紙を見たときに読めそうにないなと思っていましたが結構面白くて、1冊目に収められた4つの作品のうち3つ読みました。
少しだけ画像を。そう、マンガ、しかも少女マンガです。
Girl From The South Country_a0285828_11483525.jpg

by hinaseno | 2015-11-28 11:51 | 音楽 | Comments(0)