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by hinaseno

「岡山行進曲」


「岡山行進曲」という曲があることを知ったのはもうずいぶん前。古書店で手に入れた『岡山の歌謡』(岡山文庫 昭和45年)という本に紹介されていたんですね。本に載っていたのは「西條八十 作詩」という言葉と一番だけの歌詞。
ちなみに『岡山の歌謡』には同じ西條八十作詞の「備前岡山」「鬼ケ嶽小唄」、野口雨情作詞の「岡山小唄」「瀬戸小唄」「笠岡港節」、北原白秋作詞の「倉敷節」、白鳥省吾の「日比小唄」の一番の歌詞が載っています。いずれも昭和初期の新民謡運動で作られた曲のはず。
『岡山の歌謡』の筆者の英玲二は歌詞を紹介した後でこう述べています。

「戦前の郷土民謡は白秋、雨情、八十、省吾ら最高のスタッフに委嘱して作詩されながら、その土地にしっかりと根をおろすには至らなかった」

曲が出来て40年ほど経っていた時期に、その土地でも忘れ去られる存在になっていたんですね。曲が作られてからおそらく80年以上も経った今となっては影も形もなくなってしまっているようです。

そんな一年ほど前のある日、ネット(だったっけ?)の古書サイトでこんなものを発見。
「岡山行進曲」_a0285828_14381293.jpg

そこには「西條八十作詞 中山晋平作曲 小唄備前岡山 附岡山行進曲」と書かれていました。どんなものかよくわからないまま注文。
届いたものの裏には「岡山市産業課」との文字。この冊子がいつ作られたものかは何も書かれていません。
開いてみたら、裏には「備前岡山」と「岡山行進曲」の歌詞(ついでにいずれも無名の作詞家と作曲家による「岡山音頭」の歌詞も)が載っていました。
これが「備前岡山」の歌詞。
「岡山行進曲」_a0285828_1438277.jpg

そしてこれが「岡山行進曲」の歌詞。
「岡山行進曲」_a0285828_14384194.jpg

西條八十作詞、中山晋平作曲といえば、「東京行進曲」と「東京音頭」の曲を書いたコンビ。この二人は日本全国あちこちから招かれて新民謡を作ったんですね。西條八十の書いた歌詞はたいていはその土地の代表的な山と川と、あとはたぶんその土地の人に聞いた名所を適当に入れたものばかりだったようです。
というわけで、「備前岡山」と「岡山行進曲」には「旭川」やら「操山」やら「後楽園」やら「京橋」やらと、岡山城周辺のありきたりの風景が取り入れられています。でも、「岡山行進曲」の歌詞は(他の土地で作られたものを部分的に改変しただけのものかもしれないけど)なかなかいいものがあります。

こうなると実際に曲を聴きたくなってしまいます。なんたって大瀧さんが「音頭の親、というか私の親みたいなもの」と言っていた中山晋平のかいた曲ですから。
で、うれしいことに、この音源を岡山の県立図書館で聴けることがわかったんですね。早速行ってきました。
といってももう1年近く前のこと。書こうと思っていたのにすっかり忘れていました。ちょうど木山捷平の生家のある笠岡、新山のことをずっと書いていた時期ですね。

「岡山行進曲」を歌っているのは先日紹介したいくつもの流行歌を歌っている四家文子。演奏は日本ビクター管弦楽団。発売日は1932(昭和7)年6月。
それから「備前岡山」を歌っているのは勝太郎とだけ書かれていましたが、これは「東京音頭」を歌った小唄勝太郎(という女性)ですね。

さて、曲はといえば、まあ先日いくつか紹介したような感じの曲です。「備前岡山」は手に入れた冊子に載っていたものは全部で7番ありましたが、2つくらい省かれていました。
曲のいいのは「岡山行進曲」。詞も「岡山行進曲」の方がずっといいですね。
ということで全く日の目を見ることができなかった「岡山行進曲」の歌詞を改めてここに書き写しておきます。

岡山行進曲

西條八十作詞
中山晋平作曲       

鶴の聲から ほのぼの明けて
仰ぐみどりの 操山
備前岡山 山陽照らす
西の日本の 灘照らす

見せてやりたや 烏城の天主
昔戀しい 松の風
備前岡山 日の照るところ
めぐる川さへ 旭川

お國自慢は 後楽園よ
戀のふたりに 散る櫻
宵の上(かみ)ぶら 京橋越えて
湧くは絃歌の さゞれ波

戀の入船 涙の汽笛
雁と燕の 旅の宿
備前岡山 日も夜も伸びる
伸びて日本の 西照らす 

Commented by 荒牧堯明 at 2018-07-08 16:43 x
歌詞掲載有難うございました 参考にさせていただきました お礼申し上げます
by hinaseno | 2015-11-03 14:39 | 音楽 | Comments(1)