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by hinaseno

「たねさん」に会いに行く(その2)


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「おう、やつてみい。罰があたつて疣だらけんなるから。」

小学五年生の「私」は、「たねさん」についての不思議な言い伝えを信じようとしない転校生に向かってこう言いました。「たねさん」を祀ってある権現様は疣取りの神様でもありました。

実は権現様に行って「たねさん」に会った翌日くらいから、体のあちこちにできものが出始めました。正直これにはびっくり。疣(イボ)ではないにしても、何か祟られるようなことをしてしまっただろうかと考えずにはいられませんでした。
結局は蕁麻疹ということで病院に行って薬を貰って飲んだら、すぐに症状はなくなりました。でも、原因は一体なんだったんでしょうか。

さて、話は2011年の暮れのこと。
おひさまゆうびん舎の窪田さんにいただいた前之園明良の「小山清生誕百周年 余聞」には前之園さんとFさんとの興味深い交流の話がいくつも書かれていました。Fさんが前之園さんの大学(早稲田大学)の先輩であること、同じ文学関係のサークルに所属していたこと(サークルでは前之園さんの方が先輩)、そしてFさんに誘われて『木靴』の合評会に参加して一度だけ小山清に会ったことなどが書かれています。

この半年後、やはりおひさまゆうびん舎を通じてYさんと知り合うことになります。で、そのYさんも同人であった『酩酊船』を何冊かいただいたのですが、その第27集(2012年4月30日発行)に前之園さんの書かれた「ある無名作家の孤独」という文章が収められていました。
内容は「小山清生誕百周年 余聞」をさらにふくらませたもの。小山清生誕百年展の後日談とともにFさんに関するもう少し詳しい話が書かれていました。ただしFさんの名は実名ではなく「フクチ・ヒロシ」という名前に変更されています。
「ある無名作家の孤独」というタイトルは、おそらくは井伏鱒二が書いた「小山清の孤独」になぞらえているんだろうと思います。

前之園明良さんの「小山清生誕百周年 余聞」を読んだときに、はっと思ったのがこの部分でした。
たしか昭和三十年の夏休みに、彼は岡山県東寄りの邑久町の実家から、赤穂線を経由して兵庫県西寄りの龍野の私の家まで遊びに来たこともある。

邑久町というのは母親の生まれた町。現在は牛窓とともに瀬戸内市に入っています。Fさんが生まれた年も正確にはわからないけれども母親に近い。もしかしたら母親の知っている人かもしれないと思って、以前母親に同じ小学校にFという名前の人はいたかと訊いたら、そういう名前の人はいなかったとの答えでした。

今回、没後50年 小山清展が開かれることになり、『木靴』も再び展示されるということを知って、何よりもFさんのことを知りたいと思いました。生まれ故郷を舞台にした小説を書いていないだろうか。できればFさんが生まれた場所を特定できるような小説はないだろうかと。
それが最後に読んだ『木靴』の創刊号に収録された「たねさん」でした。
by hinaseno | 2015-05-22 10:00 | 雑記 | Comments(0)