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by hinaseno

「秋をけりけり」した友達、野長瀬正夫のこと(7)


野長瀬正夫についていろいろと調べたいと思いつつ、ネット上の情報は少ないですね。木山さんと出会った頃に出された詩集もとても手に入りそうにありません。特に木山さんの昭和7年11月30日の日記に出てくる『若き女教師たち』というのは是非読んでみたいけど、ネットの古本屋サイトで見たらかなり高価。この『若き女教師たち』には奈良の田舎で教師をしていた時の日記も収録されているようなので機会があればぜひ読んでみたいと思っているのですが。
ところで野長瀬正夫が生まれたのは奈良県の十津川村。調べたら奈良県の南の端、紀伊山地のど真ん中ですね。大変な山奥です。

野長瀬正夫が『教育文藝』に投稿した「秋の素顔」のことを調べていたら、昨年の2014年の2月に発行された最新の『木山捷平資料集』と同時に発行された『木山捷平 文学の故郷 生誕110周年』(清音読書会のNさんが作られたもの)に、それに関する記載がありました。
「秋の素顔」は『教育文藝』の大正15年4.5月号(合併号?)に収録されているようです。で、その号には木山捷平の「をなご」という詩、そして大西重利の「教育論、入村雑記、編集後記」が収録されているとのこと。まだ「友」になる前の3人の作品がこの1冊の中に収められているわけですね。『トライアングルVol.0』って感じ(この意味が分かる人はほとんどいません)。これもいつか手に入れてみたい。でも、手に入れるのは相当に大変そうですが。
ちなみに『木山捷平 文学の故郷 生誕110周年』によれば、木山さんの作品に関して、同じ年の6月号には「野茨」と「すさび」、9月号には「病床断片」、11月号には「やもめの歌」と「桃郎」が『教育文藝』に収録されているようです。
「病床断片」については『木山捷平資料集』にも一部引用されていて、おそらくはまだ出会っていないはずの大西重利の教育論に対する期待の言葉が書かれています。
昭和2年の春に姫路にやって来た木山さんが大西重利(すでにそのときには芦屋児童の村を離れていたわけですが)に連絡をとったことはいうまでもありません。

さて、木山捷平の昭和2年の「友の秋」に書かれた「郊外」がどのあたりで、そこが当時どんな風景だったかはこの日のブログで書きました。
改めて、昭和12年に撮影されたそのあたりの風景をとらえた写真を貼っておきます。
「秋をけりけり」した友達、野長瀬正夫のこと(7)_a0285828_1224578.jpg

で、昭和8年の「秋」に書かれた「郊外」というのは、やはり武蔵野でしょうか。昭和7〜8年頃、武蔵野の原野がどのあたりまで広がっていたかはわかりませんが、自然の中で育った木山さんと野長瀬正夫はときどきは自然の風景を見るために武蔵野の原野に行ったんでしょうね。

そういえば『武蔵野』といえば、なんといってもこれですが(岩井俊二さんの『四月物語』にも出てきます)、
「秋をけりけり」した友達、野長瀬正夫のこと(7)_a0285828_12242130.jpg

僕が今、一番手に入れたいと思っているのは、夏葉社の『上林暁 傑作随筆集 故郷の本棚』の山本善行さんの解説で知った上林暁さんの『武蔵野』という本。
木山さんと上林さんが親しくなるのは木山さんが満州に行く前頃(木山さんの『大陸の細道』には、唐突に上林さんの話が出てきます)で、木山さんと上林さんがいっしょに武蔵野の原野を歩いたかどうかはわかりませんが、きっと木山さんが野長瀬正夫と歩いていた頃の武蔵野の風景が描かれているのではないかと思っています。
ああ、早く読んでみたい。
by hinaseno | 2015-05-04 12:25 | 木山捷平 | Comments(0)