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by hinaseno

ウィチタ・ラインマンを探して


達郎さんのサンデー・ソングブックで、いよいよ来週から3週間にわたってジミー・ウェッブの特集。どんな知らない曲が飛び出すか楽しみで仕方ありません。

ところで昨日、ジミー・ウェッブがツイッターでこれを紹介していました。”Nice job guys”との言葉を添えて。



3種類のギターによって演奏される「ウィチタ・ラインマン(Wichita Lineman)」。イントロはジミー・ウェッブの『Ten Easy Pieces』バージョンをもとにしています。曲がいいってこともありますが素晴らしいの一語。何度もリピートして聴いてしまいました。

さて、ネット上で” Wichita Lineman”を入力して画像検索すると、それっぽい中々魅力的な写真が出てきます。たとえばこれとか。
ウィチタ・ラインマンを探して_a0285828_11133648.png

あるいはこれとか。
ウィチタ・ラインマンを探して_a0285828_11135213.png

こんな写真を見ながら思うのは、彼らはこの写真をどこで撮ったんだろうかということ。

この曲のタイトルの「ウィチタ(Wichita)」とはアメリカ中部の地名。つまり「ウィチタ・ラインマン」とはウィチタの電話線の保線夫ということ。
でも、この曲のウィチタは、実はどこにもない場所。だからこそ普遍的な曲になっているのかもしれません。

アメリカにはいくつかのウィチタがあります。ウィチタというのはアメリカ中部に住んでいたインディアンの一族の名前で、それにちなんだ地名がいくつか残っているようです。
カンザス州にウィチタという都市があります。僕はずっとここがこの曲の舞台だと思っていたのですが、どうやらそうではないようです。
曲の最初はこう歌われます。
I am a lineman for the county
僕はその郡(the county)の保線夫

カンザス州のウィチタはセジウィック郡にあります。ただ、このカンザス州セジウィック郡のウィチタはかなり大きな都市。この曲の歌詞はどうみても町はずれの風景。
こんな歌詞が続きます。
And I drive the main road
Searchin' in the sun for another overload
そしてメインロードを車で走っては
日が当たる中、過負荷の状態になっている電話線を探している

この詞のウィチタは都市ではなく、もっと広い、田舎の風景が広がる地域、つまり郡(the county)を指していることがわかります。
テキサス州にウィチタ郡(Wichita county)というのがありました。カンザス州のウィチタの南にある場所。中心都市はウィチタ・フォールズ(Wichita Falls)。
というわけで「ウィチタ・ラインマン」の「ウィチタ」はテキサス州ウィチタ郡のことだと思っていたらどうやらそうでもなさそうです。

ジミー・ウェッブがこの曲の詞のインスピレーションを彼の生まれたオクラホマ州の南西部の田舎の町を通っていたとき。そこで電話線の保線工が作業している姿を見たんですね。そこはテキサス州のウィチタ郡(Wichita county)ではなくオクラホマ州のウォシタ郡(Washita county)。そんなに離れていない場所にあります。なんと紛らわしい。
で、どうやら最初は「ウィチタ・ラインマン」ではなく「ウォシタ・ラインマン」という詞にしていたらしいのですが、グレン・キャンベルが歌にするには「ウォシタ」よりも「ウィチタ」の方がいいってことで「ウィチタ」となったようです。

というわけでこのあたりの地図を貼っておきます。
ウィチタ・ラインマンを探して_a0285828_11163256.png

「By The Time I Get To Phoenix」に出てくる地名も赤で記しておきました。それから小池昌代さんがある時期滞在されていたサンタフェもあります。
考えてみるとジミー・ウェッブの曲で覚えた地名もいくつかあります。
村上春樹が訳した「By The Time I Get To Phoenix」の歌詞の一部を載せておきます。
僕がフェニックスに着くころ
君は目覚め
僕のさよならの手紙を読むだろう

僕がアルバカーキに着くころ
君は会社にいて
ランチタイムに僕に
電話をかける

僕がオクラホマに着くころ
君は眠っているね
そっと寝がえりを打ち
僕の名前を呼ぶかな

by hinaseno | 2015-02-23 11:16 | 音楽 | Comments(0)