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by hinaseno
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小山清と「濹東綺譚」


ようやく小山清の文章を書きあげました。例によってあちらこちらに話がとんだために予定の枚数を大幅にオーバー。最後に小山清が北海道に行ったときの話を書き加えたかったけどやめました。
当初、おひさまゆうびん舎の窪田さんから提案されていたのは木山捷平とのつながりのこと。でも、結局木山さんはまったく登場しない文章になりました。その代わりに登場したのが小沼丹。そうなったのは、いつものように”たまたま”。意図したことよりも”たまたま”に引きつけられてしまうのは大瀧さんと同じです。

そういえば以前紹介した川本三郎さんの「夕張炭坑で働いた文士、小山清」(日本文藝協会編『ベスト・エッセイ2007 老いたるいたち』所収)を読みました。川本さんは大村彦次郎の『文士のいる風景』を読んで、「なかで強く惹かれた文士」が小山清だったとのこと。で、古本屋で『小山清全集』を買って、2日間、どっぷりと小山清の世界に浸ったそうです。
川本さんの文章を読んでいたら、小山清が永井荷風の「濹東綺譚」に惹かれ、それを暗記していたということが書かれていて、ちょっとびっくり。で、『小山清全集』をぱらぱらとめくっていたら、「女主人公によせて」(昭和28年)という随筆でこんなことが書かれていました。
 日本の近代小説に描かれてゐる女性で、私の好きなのは、「無限抱擁」の松子、「濹東綺譚」のお雪、それに、若し二人だけでは淋しいといふのならば、「たけくらべ」の美登利を加へてもいい。(中略)
 気がついてみると、みんなひとしくいはゆる遊里の女で、良家の子女は一人もゐない。これはなにも私がとくにさういふ境涯の女に興味を持つてゐるからといふわけではない。私の狭い読書の範囲で、たまたま心を惹かれたものが、そんな、苦界に身を沈めてゐるやうな人たちであつたまでだ。

で、「濹東綺譚」についてはこんな言葉。
「濹東綺譚」、私はこの木村荘八の挿画のついた本を、なんべんくりかへし読んだことだらう。好きなのだから、しやうがない。天衣無縫とは、こんな作品のことをいふのではないだろうか。死ぬまでに、こんな作品が一つでも書けたなら、いふことないな。

考えてみると、「雪の宿」に登場する女性は、どこか「濹東綺譚」のお雪に重なるところがあるような気がします。

ところで、小山清が「濹東綺譚」、「たけくらべ」とともに名を挙げていたのが「無限抱擁」という小説。はずかしながらこういう作品があるのは知りませんでした。筆者は瀧井孝作。講談社文芸文庫から出ているみたいですね。機会があればまた読んでみたいと思います。
by hinaseno | 2015-02-11 11:54 | 文学 | Comments(0)