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by hinaseno
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Twinkle, twinkle, little star


今年没後50周年にあたる小山清の展示会を来月末にするということで、姫路のおひさまゆうびん舎さんから何か書いてもらえませんかとの依頼がきました。

おひさまゆうびん舎とそのお隣のツリーハウスというお店を知ったのは4年前、2011年のこと。その年が小山清の生誕100周年にあたっていて、やはり展示会をされていたんですね。でも、僕がはじめて店に足を運んだのは展示会が終わった後。たまたま店に立ち寄ったら、その展示会が開かれていたことを知って、残念な思いをしたものでした。
ただ、それからそのおひさまゆうびん舎を通じていろんなうれしい出会いがありました。姫路の木山捷平について書いたものを最初に発表させていただいたのもおひさまゆうびん舎で、それがもとでまたいろんな人との出会いも生まれました。

さて、小山清といえばやはり「落穂拾い」。というか、それしか知りませんでした。
そういえば、昨年から刊行が始まった新潮文庫で池内紀・川本三郎・松田哲夫共同編集『日本文学100年の名作』シリーズの第4巻「木の都」に、小山清の「落穂拾い」が選ばれていました。選者はだれだろうと後ろを見たらやはり川本三郎さん。
川本さんが書かれた「読みどころ」を少しだけ引用しておきます。
 清貧の作家という系譜がある。
 尾崎一雄、木山捷平、宮地嘉六らが浮かぶ。日々のつつましい暮しを飄然と、清々しく描き出してゆく。大言壮語とは対極の清逸な小世界に心なごむ。

というわけで「落穂拾い」について書こうかと思いつつ、以前、おひさまゆうびん舎の窪田さんからお借りした『小山清全集』からコビーしたものやら、やはり窪田さんにいただいた『小さな町』(みすず書房)をぱらぱらと読み返して、この2日間、久しぶりに小山清にどっぷりとつかっていました。
不思議なもので、何か書くという意識で読むといろいろと興味深い発見が次々に出てくるものです。
で、小山清に関するあることを探っていたときに、おやっというものを発見。それはまさに、昨年の暮れ頃から探し続けていたものにつながるものの核心に触れる部分。よくそれを発見できたなと自分でもびっくり。こんなことってあるんですね。小山清とおひさまゆうびん舎さんに感謝です。
ってことで、書くことはそれで決まってしまいました。

ということで、書こうかと思ってやめたことをいくつか書いておきます。
最初に書こうとしたのはこのブログで前回まで書いていた北海道の話。
小山清は終戦後、坑夫募集に応じて、北海道の夕張炭坑に行っています。そのときのことを描いた小説もいくつかあります。
一番好きなのは『雪の宿』。ある音楽との偶然の出会いによって、荒れた生活を送っていた主人公が立ち直る話。小山清の文学にはときどき音楽が出てきます。この物語で出てくるのは「きらきらぼし」。”Twinkle, twinkle, little star”と英語で歌われています。素敵な北海道の冬の物語です。

さて、小山清が北海道に行ったのは昭和22年1月末のこと。小山清が36歳のときです。上野駅から汽車にのって青森に行き、青森港から連絡船に乗って函館に。そこからもちろん函館本線に乗ります。
 翌朝、函館に着いてまたすぐ汽車に乗つた。寂しい海岸べりを、長時間汽車は走つた。私はそこにとり残されたやうにある小屋を見かけて、その小屋に母と自分が二人だけで住む生活のことを思った。
 (中略)
 長万部で乗り換へ、東室蘭で乗り換へ。最後に追分から夕張行の支線に乗つた。小さな昔風の汽車で、客車の中にストーブが取りつけてあるのが土地柄を思はせた。私たちは引率者から分配されたするめを。めいめいストーブで炙つて食べた。夕張に着いたのは、夜の九時頃であつた。夕張の駅は山峡にある。雪に被はれた山のうへには、炭坑夫の寮や長屋の燈火が煌めゐて、はるばると来た私たちの胸にいひやうのない感慨を催させた。
                               (小山清「夕張行」より)

小山清は長万部(おしゃまんべ)で室蘭本線に乗り換えているので、蘭越、あるいは小樽は通っていません。そして追分から石勝線に。最近はこういうのを読むと、必ず地図で辿るようにしています。

ところで、川本三郎さんが「夕張炭坑で働いた文士、小山清」という文章を書かれているのがわかりました。でも、どうやら僕の持っている本の中には収録されていないようです。また、手に入れて読んでみようと思います。
by hinaseno | 2015-01-26 11:50 | 文学 | Comments(0)