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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

もしもシャーマン兄弟が仲違いをしなければ


ペリー・コモの「Beats There A Heart So True」という曲をはじめて耳にしたのは、まだ木山捷平のことも知らない4年前の秋。
2010年9月12日に放送された達郎さんの「サンデーソングブック」。この日がジャック・ケラーの特集の第1回目。たぶん、日本どころではなく世界で初めてこの曲が公共の電波にのったんじゃないでしょうか。

でも、なんと大瀧さんは、今から40年近く前の1976年7月14日放送の「ゴー!ゴー!ナイアガラ」のジャック・ケラー、トニー・パワーズ特集でこの曲を紹介しています。ただ時間の関係で曲はかけられなかったのですが。そのときの大瀧さんの言葉。
58年にはペリー・コモに1曲書いているんですね。「Beats There A Heart So True」という曲で。共作がノエル・シャーマンなんですよ。あのジョー・シャーマン、ノエル・シャーマンのシャーマン兄弟のですね。...と共作したんですよ。すごいもんですね。
 
というわけで共作者のノエル・シャーマンの名前もちゃんと紹介されています。「すごいもんですね」という言葉とともに。
ジャック・ケラーが6歳年上の、ジャズ畑で活動していたはずのノエル・シャーマンと共作したいきさつについては、達郎さんの「サンデーソングブック」で、こう語られていました。
(キャシー・リンという作詞家と共作したコーデッツの「Just Between You and Me」という曲の)ヒットをきっかけでプロのソングライターとして生きていこうと決めますが、このプロのソングライターとしての心得を教えてくれた最大の恩人がノエル・シャーマンという人で、この人はジョー・シャーマンとノエル・シャーマンと兄弟でたくさんヒットをもっておりました。一番有名なのはナット・キング・コールの「Ramblin' Rose」。我々の世代ですとビーチ・ボーイズで有名な「Graduation Day」なんてのがありますが。
このジョー・シャーマンとノエル・シャーマンは、この時代、仲が悪くてですね、作詞を担当してたノエル・シャーマンは、他の作曲家をいろいろ物色しているところに、このジャック・ケラーという若者が出てきまして、このジャック・ケラーを自分の弟のようにこの人はかわいがって、毎日オフィスにジャック・ケラーが通いまして作曲のノウハウを学びました。1年半で20曲以上のレコード化されましたが、その中から今日は私がジャック・ケラーの初期の最高傑作だと思います、ほんとにいい曲です。Perry Comoの1958年、シングル「Moon Talk」のカップリングとして発売されました「Beats There A Heart So True」という、まだロックンロール以前の香りが残っておりますが、ほんとに素晴らしい作品です。

シャーマン兄弟は共作した曲が僕の調べた限りでも20曲足らずしか見当たらなかったのは、二人の関係が悪くなって共作をやめていたんですね。
二人が関係を壊すことなく続けていれば、ガーシュイン兄弟のように名曲を次々に生み出していたかもしれない…
と思いつつ、彼らが関係を悪くしたがゆえに、次世代の才能のある作曲家を結果的に育てたことになっているわけですから、運命というものは不思議なものです。

というわけで、ノエル・シャーマンに目をかけられたジャック・ケラーと1957年くらいから1960年にかけて共作を行ないます。で、ノエル・シャーマンは単なる作詞家としての関わりだけでなく、大人が聴いても聴くに値するような曲の作り方をジャック・ケラーに教えたんでしょうね。それを考えると、ノエル・シャーマンがいなければ「Venus In Blue Jeans」(作詞はハワード・グリーンフィールド)という名曲は生まれていなかったのかもしれません。ということは「風立ちぬ」も。

一応ジャック・ケラーとノエル・シャーマンが共作した曲を並べておきます。基本的にはB面の曲が多いようです。
It's So Easy To Say / Johnny Nash
Keep in Touch / Georgia Gibbs
Beats There A Heart So True / Perry Como
Three O' Clock Thrill / Kalin Twins
Walkin' to School / Kalin Twins
Love Is A Two Way Street / The Chordettes
Seven Minutes In Heaven / The Poni-Tails
Before We Say Goodnight / The Poni-Tails
Fantastico / Peggy Lee
Next / Jonny O'Neill
Now You Know How It Feels / Wink Martindale
Yum, Yum, Yum / Cinderella
Who Do You Think You Are / The Four Lads
I Can't Sit Down / Marie & Rex
One Little Acre / George Hamilton IV
Have A Nice Weekend / The McGuire Sisters
The World in My Arms / Nat "King" Cole
Little Girl Lost / Bobby Roy And The Chord-A-Roys
Girls Were Made For Boys / Bobby Roy And The Chord-A-Roys
A Love To Last A Lifetime / Barry Mann

おそらく「A Love To Last A Lifetime」をレコーディングしたときにノエル・シャーマンはジャック・ケラーよりもさらに年下のバリー・マンを知り、彼が作ったいくつかの曲を目に留めて、バリー・マンとの共作を開始します。で、ジャック・ケラーと同様に、いろんな作曲のノウハウを教えたに違いありません。バリー・マンとノエル・シャーマンが共作した曲についてはまた次回に。

さて、上に並べたジャック・ケラーとノエル・シャーマンが共作した曲の中で特に気に入ったのがThe Four Ladsの「Who Do You Think You Are」という曲。



1959年に発売された「Happy Anniversary」のB面の曲。アレンジがなんとジョー・シャーマン。仲違いをしてたはずなのにどういうこと? ですね。
どういうこと? といえば、昨日紹介したバリー・マンの「A Love To Last A Lifetime」もレコードの下の方には「Orch. under the dir. of JOE SHERMAN」の文字が。どうやらアレンジだけでなくオーケストラの指揮もジョー・シャーマンがしたようです。
さらに言えばこのシングルを発売したJDSというのはジョー・シャーマンが作ったレーベル。実はこのJDSからはびっくりするようなグループがデビューしていたこともわかって。それはまた後日。
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by hinaseno | 2014-10-26 12:36 | Comments(0)