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by hinaseno

1964年のフォー・シーズンズとビーチ・ボーイズの曲のイントロに関する話


1984年に放送された新春放談のフォー・シーズンズがらみの話、昨日引用した会話のあとにも興味深いことが多く語られているので、もう少し引用しておきます。
山下:僕はね、フォー・シーズンズで1曲あげろって言われたら、だれが何と言っても「ドーン(Dawn)」なんですよ。
大瀧:「ドーン」ね。ふ〜ん。
山下:「ドーン」の歌詞が好きなんですよ。
大瀧:あぁ。
山下:フォー・シーズンズの歌詞ってね...
大瀧:ほんと、ロマンチックな人間だね(爆笑)。
山下:フォー・シーズンズの歌詞ってね、すべからくね、プアな女の子とリッチな僕か、リッチな女の子とプアな僕なんですよね。それの一番の、プアな女の子とリッチな僕の一番の典型的な例が「ラグ・ドール(Rag Doll)」なの。
大瀧:「ラグ・ドール」だね。
山下:で、プアな自分とリッチな女の子の典型的な例が「ドーン」なの。”Think about the future to be with a poor boy like me(正しくはThink what the future would be with a poor boy like me)”
大瀧:”poor boy like me”ってね。
山下:あの歌詞がね、あれを聴くたびに僕は涙が出て...
大瀧:泣けるんだよねぇ。
山下:持ってくればよかったな、ちくしょう。
大瀧:あのイントロでも泣けるんだ。おれはいつもあの...朝、高校1年だったんだけど。
山下:うん。
大瀧:朝、いつも行くときにね、”Pretty as a midsummer's morn”でしょ。夏のね、明け方、あのイントロをぽっと聴いて出かけるの。
山下:あれでもね、ヴァースのあるバージョンがシングルなんでしょ?
大瀧:なにが?
山下:あの、「ドーン」の。
大瀧:あれ、だってシングルにあったよ。
山下:うん、ヴァースがあるのがシングル。
大瀧:あれ? LP、ないの?
山下:LP、ないんです。LPは”タカタカ・トコトコ・タカタカ・トコトコ・ジャンジャ〜ン”で始まるんですよ。なきゃだめなんだな、これが。なきゃなあ。来週かけます、来週。
大瀧:(笑)ほんとにすっごく、でもね、ロマンティックなね、メランコリックなね、内容もね、いいし、とっても好きで。あそこあの3連がまた好きでね。「風立ちぬ」で使ったんですけど。
山下:(爆笑)「ヴィーナス・イン・ブルー・ジーンズ(Venus In Blue Jeans)」だけではないんですね。
大瀧:だけではないんだ。20あるんだから。20言わないと正解にしないんだ。

というわけで、最後は例の「風立ちぬ」の「20分の1の神話」の話に。
興味深いのは大瀧さんの高校1年の話。
大瀧さんがヴィー・ジェイ時代のフォー・シーズンズが好きだというのは、やはりそれが中学時代の記憶につながっているからなんだでしょうね。
で、大瀧さんが高校に入るのと、フォー・シーズンズがヴィー・ジェイからフィリップスへ移籍するのと重なっていて、そのフィリップスでの最初のヒット曲が「ドーン」。

ちょっと興味深いのは「ドーン」がヒットしていたときのチャート。
「ドーン」がアメリカで発売されたのは1964年1月。まさにビートルズが全米デビューしたとき。で、ビートルズは2月から14週続けてチャートの1位を独占(「抱きしめたい」が7週、「She Loves You」が2週、「Can’t Buy Me Love」が5週)。
「ドーン」は2月の第4週めでトップ10入りして第3位に。そのときの1位が「抱きしめたい」で2位が「She Loves You」。その順位は3週間続けて全く同じ。
で、3月の第2週に「ドーン」は4位に落ちます。理由はビートルズの曲がもう1曲、3位に上がってきたんですね。「Please Please Me」。その翌週の3月の第3週は1位と2位が入れ代わって3位、4位は同じ。
興味深いのはその週のその下の順位。第5位がビーチ・ボーイズの「ファン・ファン・ファン(Fun Fun Fun)」、で、第6位はボブ・クリューが作曲、プロデュースしたダイアン・リネイの「ネイヴィー・ブルー(Navy Blue)」。ビートルズ旋風が全米で吹き荒れる中で、ボブ・クリュー&フォー・シーズンズとビーチ・ボーイズが(だけが)大健闘してるんですね。

さて、日本はというと、1964年の段階でみんながビートルズばかりを聴くようになったというのはどうやら嘘くさい話のようです。ビーチ・ボーイズやフォー・シーズンズをリアルタイムで聴いていた人は相当に限られていたんでしょうね。
そんな1964年の夏に、大瀧さんは「ドーン」や「ラグドール」を聴かれていたんですね。もちろん同じ時期に大ヒットしていたビーチ・ボーイズの「I Get Around / Don’t Worry Baby」も聴かれていたはず。ビーチ・ボーイズの「I Get Around / Don’t Worry Baby」とフォー・シーズンズの「ラグ・ドール」は1964年の夏に2週づつチャートの第1位を獲得しています。

ところで、大瀧さんが高校1年の夏の明け方にずっと聴いていたという「ドーン」のイントロの話。僕はそれを「魔法の瞳」のイントロに取り入れたはずだ考えています。「目が合うたびに夢うつつさ」の部分ですね。
僕の1984年の夏は毎日『EACH TIME』(LP)の1曲目に収録された「魔法の瞳」のイントロを聴くことから始まっていました。
ちなみにその後シングルで発売され、現在発売されている『EACH TIME』のCDの最後に収められた「フィヨルドの少女」のイントロもフォー・シーズンズの「Save It For Me」という曲から採られていました。

「Save It For Me」も「ドーン」と同じ1964年の曲。曲を書いたのもやはりボブ・クリューとボブ・ゴーディオ。『ロンバケ』にはヴィー・ジェイ時代のフォー・シーズンズが取り入れられていて、『EACH TIME』には1964年のフィリップス時代のフォー・シーズンズが取り入れられていたんですね。

と、ここまで書きながらはっと気がついたこと。
前にも書いたように思いますが、大瀧さんがご自身で証言されているように『ロンバケ』は大瀧さんの中学時代の音楽体験、つまり1962、3年に聴いていた音楽をベースにして作られています。で、『EACH TIME』は大瀧さんの高校時代の音楽体験、つまり1964〜66年に聴いた音楽をベースに作られているんですね。
その『EACH TIME』に収められた「夏のペーパーバック」に関して、この日のブログで書いたことをずっと考えていたのですが、もしかしたらもしかするかも。

「夏のペーパーバック」は何かの曲のイントロがエンディングに使われているという話ですね。簡単に見つかりそうでなかなか見つからない。でも、答えがわかれば意外になんだそうだったのかと思えるようなこと。もしかしたらそれはビーチ・ボーイズの1964年の大ヒット曲「I Get Around」なんじゃないかと。つまり「夏のペーパーバック」のエンディングで何度か繰り返される”ダン・ダン・ダン・ダン”が、「I Get Around」のイントロで歌われる”Round round get around I get around”の”I get around”のフレーズをとったんではないかと。そう思えば思うほど「夏のペーパーバック」の最後が”I get around”と繰り返されているような気がして。果して真相は?
というわけで最後にフォー・シーズンズの「ドーン」と「Save It For Me」とビーチ・ボーイズの「I Get Around」を並べておきます。いずれもイントロに注目です。






by hinaseno | 2014-09-14 11:01 | ナイアガラ | Comments(0)