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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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尻尾をつかんで、つかんで、つかんでいるうちに出会った本の話


前回の最後に書きそびれてしまった話。
石川さんの出られたラジオ番組で一番うれしかったのは、やはり1回目のラストがビーチ・ボーイズで2回目のラストがフォー・シーズンズだったこと。ラジオを聴いた人間が、その番組を聴き終えた後、その余韻を残すという意味で最も重要なラストの曲を何にするかは絶対に決められていたはずですから。
そこで選ばれたのがビーチ・ボーイズとフォー・シーズンズ。後追いで音楽を聴くようになった僕がもっとも共感を覚えたことでした。もし、どちらかの最後がビートルズだったらと思うと(こんなことを書くとクレームが来るのかな)。それを指摘した上での最後の話にすべきでした。

話はころっと変わって、久しぶりに本の話を。
本との出会いというのも、人、あるいは音楽との出会いのように縁を強く感じることがあります。
「縁は尻尾だ」とおっしゃられたのは大瀧さん。もう少し、そのあたりの大瀧さんの話を引用すると。
縁は尻尾だ、と。つかまないとダメ。でも、先がどうなっているかはわからない。縁をつかむのがうまいやつは尻尾をつかむのがうまいんだ。たいていはみんな尻尾だと思ってつかまないんだよ。頭をつかみたがる。でも縁はね、尻尾にしかない。

言い換えれば、尻尾にこそ縁がある。頭からつかみに行くような人には出会いもなければ縁もない。要領のいい人、無駄足を踏みたくない人は”先がどうなっているかはわからない”尻尾をつかもうとはしない。その意味ではネットの世界で発見することの多くは、特に検索キーワードを入れて見つけたものというのは縁とは言えないでしょうね。
だからどうした、という話ですが。
ただ、僕はやはり尻尾好きなんでしょうね。尻尾を見つけるのはうまいのかもしれません。

今日紹介する 本の出会いは――といっても本の題名と著者の名前はふせておきますが――まさにいくつもの尻尾をつかんだ果ての出会い。偶然がいくつ積み重なっているやら。で、その中身もまたびっくりすることの連続。

一応、その本の写真を。
尻尾をつかんで、つかんで、つかんでいるうちに出会った本の話_a0285828_10313485.jpg

実際には素敵な絵の描かれた箱もありますが、そこには本の題名と著者名が載っているので、箱から取り出した中身だけの写真です。
箱から取り出したときに、なんと素敵な本なんだろうと思いました。
綺麗な空色。背の部分はアイボリー・ホワイト。境目には金色の一本の線。すべて上質の紙が使われていることがわかります。左上には気球の絵も彫り込まれていて。
手にとっただけで、本に対する愛情がいっぱいに詰まっていることがわかるような装幀。
いったいだれが装幀をしているのかと思ってみたら、なんとこのブログでも何度も紹介してきた山高登さん。びっくり仰天でした。
本の中に収められているエッセイにはその山高登さんに関する話もあり、この本の著者は山高登さんと親しい関係にあって、敬愛の情を抱かれていることもわかりました。

山高登さんだけのことではなく、この本のエッセイで取り上げられているのは、僕がこのブログの文学関係の話で書いてきた人ばかり。
永井荷風と木山捷平はもちろんのこと、井伏鱒二、ヴェルレーヌ、そして小沼丹。他にも西条八十や古関裕而の名前も出てきたり。
さらには、本の最後に、この著者自身が詠んだ牛窓を歌った短歌も。この著者は牛窓と深い関係を持っていたんですね。でも、おそらくそのことはほとんど知られていないはず。

荷風の話に関してのエッセイでは、荷風の訳した『珊瑚集』に収められた中で最も好きな詩に描かれた、名前を示されていない町を特定される内容。僕もこの数年、木山捷平の詩で描かれた場所を特定することをしていたので、まさに読んでみたいと思えるような内容のものでした。
それから、この著者は木山さんとも親しい関係にあったので木山さんに関する話がいくつもありますが、僕が木山さんに関してちょっとだけいいイメージを持っていなかった”事件”の話のことに触れられていて、ずっと抱いていた(抱かされていた)悪いイメージを払拭でき、胸のつかえが降りたような気持ちになれました。それだけでも、この本との出会いの意味はありました。

この本は、ある方の書斎に招かれて僕が見つけてお借りしたものだったのですが、実は同じ著者の本をもう一冊お借りしました。その本も箱に入っていて、箱から取り出して表紙に写っている写真を見てびっくり。写真の説明をみるとやはり、まぎれもなく”あれ”をとらえた写真。
さらに驚いたのは、その書斎に飾られていた額の中に、その写真でとらえられたものとほぼ同じものが飾られていたこと。
ただ、その書斎に招いてくれた方は、その写真の意味をご存知ないままでいらっしゃったようです。
by hinaseno | 2014-06-20 10:32 | 文学 | Comments(0)