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by hinaseno
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Nikki, It’s You


ずっと読み続けていた『バート・バカラック自伝』、昨日読み終えるつもりでいましたが、第25章でとまってしまいました。
章のタイトルは「Nikki, It’s You」。

『バート・バカラック自伝』では、もちろんバカラックの私生活の話とともに、彼の作った様々な楽曲にまつわる話が出てきます。でも、本を読み始めた最初から、通低音のように流れ続けていたのは、この曲。おそらくバカラック自身も本を書いていたときに、彼の頭の中に流れ続けていたのもこの曲だったはず。



曲のタイトルは「Nikki」。先日紹介した、僕がバカラックのアルバムの中で最も好きな3枚目のアルバムに『バート・バカラック』収められています。このアルバムを初めて聴いた時に、初めて聴いた曲の中で最初に好きになったのがこの「Nikki」でした。

『バート・バカラック自伝』の最初に収められたプロローグのタイトルは「Nikki(ニッキー)」。
「Nikki」というのが、女性の名前であるとは思っていましたが、バカラックの元の奥さんであるアンジー・ディキンソンとの間に生まれた娘の名前だったんですね。後で日本盤のCDの解説を読んだら、ちゃんと書かれてありました。
そのニッキーは予定よりも3か月も前に生まれて生存が危ぶまれる状態が続いたこと(バカラックは未熟児病棟の前に立ってThe McCoysの「Hang On Sloopy」という曲を歌い続けていたとのこと)、そして命は取り留めたものの、彼女には深刻な障害が残ることになる。そして結局ニッキーは...。

ニッキーが生まれたのは1966年7月12日。僕がずっと聴き続けてきた「Nikki」という曲は1971年に発表されたアルバムに収められているので、「Nikki」が生まれて何年か後に作られた曲だと思っていたらそうではありませんでした。
「Nikki」の音源をYouTubeで探していたら、どうも聴きなれたものと違うバージョンがあって調べたら実は「Nikki」は1966年にシングルで発売されていたんですね。僕の持っているHIP-O Selectから出ているバカラックの『Something Big』にそのバージョンも収められていました。
「Nikki」はニッキーが生まれて間もなく作られた曲でした。どことなくバカラックがニッキーを励ますために歌い続けていたThe McCoysの「Hang On Sloopy」に似ているような気もします。

さて、昨夜、第25章を読み終えたときに、この「Nikki」にハル・デイヴィッドが詞を付けたものがあることを知り、驚きました。本の中で、ある時期からハル・デイヴィッドの書いた詞に対して否定的な言葉を吐き続けていた(先日触れた「Where There's A Heartache (There Must Be A Heart)」の歌詞に対するバカラックの感想のひどさにはびっくり)バカラックが「とても感動的なすばらしい歌詞をつけてくれた」と書いています。
Somewhere there is sunshine
Somewhere days are warm
Somewhere there's a happy harbor
Far from the storm
Out where the sun shines there is someone
I'm meant to adore
And I know the day I find her
I'll smile once more

Nikki, it's you
Nikki, where can you be
It's you, no one but you for me
I've been so lonely since you went away
I won't spend a happy day
Till you're back in my arms

For every dream there is a dreamer
And when dreams are gone
For each wish
Another star shines to wish up on
Take all my dreams and all my wishes
Hold them in your heart
Tell me soon we'll be together
Never to part

Nikki, it's you
Nikki, where can you be
It's you, no one but you for me
I've been so lonely since you went away
I won't spend a happy day
Till you're back in my arms

Don't make me wait here in the shadows
Till my life is done
I can't live without the sunshine
You are the sun

Oh Nikki, it's you

この詞、ニッキーが亡くなった後でハル・デイヴィッドによって書かれたのだろうかと思ったのですが、そうではありませんでした。歌詞はどうやらバカラックがインストルメンタルの曲をシングルとして発表して間もなく書かれたようです。で、1967年にEd Amesという歌手によって歌われているのがわかりました。この人のバージョン、僕の持っているバカラックのどのソングブックにも入ってはいませんでしたが、YouTubeに音源があったのでリンクしておきます。

Ed Ames"Nikki"

ハル・デイヴィッドは歌詞を書いたときに、もちろん”Nikki”がバカラックの生まれたばかりの娘の名前であることは知っていたはず。でも、この歌詞の”Nikki”はバカラックの娘としてではなく、一人の愛する女性として描いていますね。
僕はバカラックのファンであるとともにハル・デイヴィッドという作詞家の大ファンなので、こんな詞があったことを知ってたまらなくうれしく思う一方で、同時にニッキーの悲しい最期を知ってしまって複雑な気持ちの中に沈み込んでいます。
by hinaseno | 2014-04-15 10:44 | 音楽 | Comments(0)