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by hinaseno
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『氷平線』と、いくつかのつながりのこと


今日は久しぶりに本の話を。”あの日”以来、はじめて読み終えることのできた小説です。

その前に、昨夜の佐野元春さんの「元春レイディオ・ショー」のことを少し。
4週にわたって放送してきた大瀧さんの追悼特集の最後に、佐野さんはこう語られました。
「大瀧さんが亡くなられてから僕は二度泣きました。一度目はアシスタントの方から大瀧さんが亡くなられたという連絡を受けたとき、そして二度目は『カナリア諸島にて』を大瀧さんの歌にあわせていっしょに口ずさんでいたときでした」

で、特集の最後の最後にかけたのが「カナリア諸島にて」。
「カナリア諸島にて」がこんなにも哀しく聴こえたのは初めて。そして僕も小さな声で口ずさんでいたら、何度目かの...。
まだ全然気持ちを立て直すことができていないことがよくわかりました。

そんな気持ちの状態の中、読むことができ、読み終えることのできた小説が桜木紫乃さんの『氷平線』でした。そう、川本三郎さんの『そして、人生はつづく』に収められた「風景が、町が語る。」というエッセイの中で、大瀧さんの話の次に触れられていた人。
僕にとっては桜木紫乃さんは大瀧さんの隣にいます。大瀧さんは東北(岩手)の人、桜木紫乃さんは北海道(釧路)の人で、いずれも北国の人でもありますし。

この川本さんの本を読んだときには桜木紫乃さんのことは全く知りませんでした。昨年、彼女が直木賞をとったときにどこかで見たことのある名前と思って調べたら、川本さんの本の大瀧さんの隣にいた人だったんですね。こういう縁を僕は大切に思っています。

で、この日のブログでも書きましたが、何か読んでみなくては、と思って最初に探したのが『氷平線』。でも、今この日のブログの最後を見たら『起終着駅 ターミナル』をまず最初に読んでみたいと書いてありますね。

ところが書店に行くと(たぶん最初に探したのが神戸の海文堂書店)、なかなか彼女の本が見当たらないんですね。もともと書店におかれている数がそんなに多くなくて、で、賞をとってまとめ買いした人が多かったせいかもしれません(しかも読んでみてわかったのですが、彼女の本は一冊読むと、次から次へと読みたくなってしまう力があります)。
で、ようやく『氷平線』を書店で見つけたのは昨年の10月のはじめ。
最初に収められた「雪虫」を読んで圧倒されてしまいました。ただ、それを読んで、彼女の作品は冬に合っていると思い、その時期まだ真夏のような日々が続いていたので、「夏の稜線」と「海に帰る」という夏のイメージのある作品だけを読んで、ぐっと読みたい気持ちをがまんして、あとは冬にとっておくことにしました(後でわかったことですがこのブログでも紹介した夏葉社の『冬の本』でも『氷平線』を取り上げられている方がいました)。
でも、あの出来事があり、すっかり彼女の本のことも忘れた時期が続き、彼女の本もいつしか他の本の中に埋もれてしまっていました。

その本を思い出させたのはつい先日のこと。そのきっかけというのも僕にとっては縁とつながりを感じさせるものでした。数ヶ月前から、ある日本の女性シンガーのことが気になり始めて、その方のことをときどきチェックしていたら彼女が最近桜木紫乃さんにはまっていると書かれていたんですね。で、もうひとつびっくりしたのはその女性シンガーも夏葉社の『冬の本』に寄稿されていました。浜田真理子さんという女性シンガーなのですが。ちなみに彼女が『冬の本』で取り上げられているのはレーモン・クノーの『文体練習』(!)。島田さんは浜田さんとどういう形でつながったんでしょうか。

で、その日から『氷平線』の残りの作品を読み始めて、昨夜最後の表題作の「氷平線」を読み終えました。
この表題作はとりわけすごかった。
「すごかった」という表現しかできないのが情けないのですが、心の深い部分をものすごく強い力でつかまれてしまうような印象。ローラ・ニーロの曲を初めて聴いたときに近い。

彼女の小説世界は、今、ソチのオリンピックでわきたっている世界とも、あるいは何年後かに開催が決まった東京オリンピックとも、あまりにも遠い世界(過去には札幌で冬季オリンピックが開催された地ではありますが)。でも、僕にとっては彼女の描く世界の方がリアル。どの作品もすべて自然環境も、経済状態も過酷な北海道を舞台にしています。川本さんは「それでもなお、この場所、この土地に生きようとする市井の人々の必至さ、悲しみが迫ってきてどれも素晴らしい。この作家が北海道を愛しているのがよく分かる」と書かれていますが、まさにその通りの印象でした。
次に読む彼女の小説も、もうずっと前に買っています。

最後に浜田真理子さんの映像の中で、僕が特に気に入ったものを貼っておきます。
この曲の日本語の歌詞がこんなものだったと初めて知りました。ニューオーリンズが舞台の歌だったとは。
そういえばここ最近、大瀧さんの「ゴー!ゴー!ナイアガラ」のニューオーリンズ特集を聴き返しているところです。
その中で大瀧さん、ファッツ・ドミノのコンサートに行って感激したことを語られているんですが、そのときに大瀧さんといっしょに行かれたのが長門さんだったということを昨日知りました。


by hinaseno | 2014-02-19 09:33 | 文学 | Comments(0)