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by hinaseno

「カナリア諸島にて」の〈20分の1の神話〉


シェリー・フェブレーの「The Things We Did Last Summer」を聴いて気がついた人がどれだけいたでしょうか。
答えは、あの「カナリア諸島にて」。もちろん『ロング・バケイション』に収められた曲。

「The Things We Did Last Summer」のこの部分です(映像では1:16あたりから)
The early morning hike

The rented tandem bike

The lunches that we used to pack


We never could explain that sudden summer rain

The looks we got when we got back


ここを聴いたとき、大瀧さんの好きなコード進行が使われていることに気がついたんです。
「カナリア諸島にて」では次の歌詞の部分ですね(映像では1:59あたりから)。過ぎ去った夏にしたことを少しだけ回想する歌詞。詞を書いたのは松本隆さんなので”たまたま”なのかもしれませんが。
あの焦げだした夏に酔いしれ
夢中で踊る若いかがやきが懐かしい


曲の展開の仕方も使われているコード進行もほぼ同じ。何より「The lunches that we used to pack」と「夏に酔いしれ」の部分のメロディがまったく同じになっています。これは偶然の一致ではないですね。なんたってシェリー・フェブレーの「The Things We Did Last Summer」は大瀧さんの大好きな曲なわけですから。

ふと思いついたのが、こんな曲の取り入れ方ってこの日のブログで書いた「FUN×4」のメロディの一部に使われた「Polka Dots And Moonbeams」のパターンと同じだなと。よくよく考えてみたら、その日のブログでも少し触れていますが、おそらく大瀧さんが参考にしたのはポール・ピーターセンのバージョン。ポール・ピーターセンはシェリー・フェブレーとともに『ティーンエイジ・トライアングル』のひとり。つながりました。
『ティーンエイジ・トライアングル』の二人の、オリジナルではなくスタンダード・ソングをカバーしたものを『ロング・バケイション』の中にそっと取り入れていたんですね。こうなると、もうひとりのジェームス・ダーレンがカバーした曲が気になります。

ところで、「カナリア諸島にて」といえばビーチ・ボーイズの「Please Let Me Wonder」を下敷きにしたことが有名です。これは大瀧さん自身が昔、新春放談で自ら告白されたんですね。こんな会話。
(山下)「こないだシングルを出して、このところシングルのB面はビーチ・ボーイズのカバーなんです。こないだのシングルのB面は『Please Let Me Wonder』なんです」
(大瀧)「ああ、『カナリア諸島』ね」
(山下)「あっ!?『カナリア諸島』! そうかぁ...。でも、それだけじゃないんだよね」
(大瀧)「それだけじゃない。そのひとつ。20分のⅠです。20分のⅠの神話と言われています」

「20分のⅠの神話」という言葉はこのとき生まれました。
でも、今、確認しても、「Please Let Me Wonder」以外に何かを指摘している人はいないようです。だれも発見できていない。僕も今まで、あれかな、これかなと考えていましたが、これは間違いないですね。30年目にしてようやく「カナリア諸島にて」の〈20分の1の神話〉の発見ができました。石川さんの発見された「Polka Dots And Moonbeams」につながったのもうれしいですね。

そういえば「The Things We Did Last Summer」と「Polka Dots And Moonbeams」は描かれた風景がどことなく似ています。
ティーンエイジャーの夏の風景。
歌詞にもつながりがあります。「踊り」、そして「月の光」。もしかしたらそういうのを手がかりにしてジェームス・ダーレンがカバーした曲を探れば何か見つかるのかもしれません。

Today's Song: Please Let Me Wonder / The Beach Boys
Please Let Me Wonder / Tatsuro Yamashita
by hinaseno | 2013-08-09 08:43 | ナイアガラ | Comments(0)