人気ブログランキング |

Nearest Faraway Place nearestfar.exblog.jp

好きなリンク先を入れてください

Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

魅惑のピーター・デ・アンジェリスの世界(4)


今年はどうやら「風立ちぬ」のブームが起こりそうですね。もう起きているのかな。
もちろん宮崎駿さんの映画、あるいは堀辰雄の小説のことですが。
でも、僕にとっては「風立ちぬ」は永遠に大瀧詠一が松田聖子に作った曲のこと。堀辰雄に同名の作品があることを知ったのは、曲を知ったあとでした。

ところで「風立ちぬ」(大瀧さんの作った曲の方)といえば、今、かなり評判となっているらしいNHKの連続ドラマ小説の「あまちゃん」で、先日、主演の小泉今日子が「風立ちぬ」を歌った場面が出たそうですね。見てないので知らないのですが。オーディションの場面? ちょっと驚きました。
その音源がありましたので、貼っておきます。

これってちょっとすごいですね。番組のディレクターがどこまで意図されたのかはわかりませんが、大瀧さんの作った「快盗ルビイ」を歌った小泉今日子が、同じく大瀧さんが松田聖子のために作った「風立ちぬ」を歌うなんて。しかもオーディションを受けた女の子の出身地が大瀧さんと同じ岩手県となっているのもかなりの確信犯的な匂いがします。

ちなみに映画の方の主題歌はユーミンの「ひこうき雲」とのこと。
個人的には主人公の女性の声の役をされる瀧本美織さんが「風立ちぬ」を歌えばいいのにと思ったりもしているのですが。瀧本さんってとても魅力的な声をしている人だと思っていたので、大瀧さんの歌を歌ったら似合いそうな気もします。「瀧」つながりということもありますし。

話がそれました。
フランキー・アヴァロンの「ヴィーナス」と「Bobby Sox To Stockings」をずっと聴き続けていて、はっと思ったのは、これはまさに「風立ちぬ」だと気がついたんですね。つい最近のことでした。
後追いで過去のいろんな音楽を聴くようになったので、いくつも年代的に逆転現象が起きていることは前にも書きましたが、これもそうだったんですね。「ヴィーナス」や「Bobby Sox To Stockings」に感じられるときめきは「風立ちぬ」につながるものだったんだと。
あのリズム。チンチキランカンチンキンチャンチャンですね(アル・カイオラさんがギターを弾くとドンドコランカンランタンタンタンとなるリズム)。そのリズムを刻むパーカッション系の楽器にハープシコード女性コーラスが重ねられる感じ。まさに、ですね。
大瀧さんというと何でもかんでもフィル・スペクターと考えてしまいがちなんですけど、そんな単純なものではないんですね。「風立ちぬ」は明らかに「ヴィーナス」に聴かれるピーター・デ・アンジェリス・サウンドだったんです。
ネットでチェックしたら、やはり何人かの人が「風立ちぬ」の”元ネタ”のひとつとして「ヴィーナス」を指摘していました。

ここで大瀧さんの楽曲の”元ネタ”ということについて僕なりの大事な確認をしておこうと思います。
大瀧さんの作った曲に”元ネタ”というものが存在することを知ったのは、1984年に放送された第1回目の新春放談でした。NHKの「サウンドストリート」の時ですね。

その第1週目のときに、達郎さんがあるリスナーからのはがきを読んでいたら、以前に「風立ちぬ」の”元ネタ”は「ヴィーナス・イン・ブルー・ジーンズ(Venus In Blue Jeans)」であると達郎さんが暴露したということが書かれてあったんですね。達郎さんはそれを読みながら、「あっ、すいません。これはやばい」と言います。
で、それに続く会話の中で大瀧さんは「私は20以上集まらないと作品にしないだ。それぐらい言わなきゃダメ」との発言が出ます。「名曲を下敷きにすると名曲ができる」との言葉も。

さらにこの年の第3週目の新春放談で、フォー・シーズンズの「ドーン(Dawn)」という曲の話になったときにこんな会話が交わされます。
大瀧「ほんとにすっごくロマンティックでメランコリックで内容もいいし、とっても好きで。あそこの3連がまた好きでね。『風立ちぬ』で使ったんですけど」
山下「『ヴィーナス・イン・ブルー・ジーンズ』だけではないんですね」
大瀧「20あるんだから。20言わないと正解にしない」

当時、ジミー・クラントンの「ヴィーナス・イン・ブルー・ジーンズ」もフォー・シーズンズの「ドーン」も知らなかった僕にとってはなんのこっちゃ、だったのですが、確かに初めて「ヴィーナス・イン・ブルー・ジーンズ」を聴いたときには、なるほどなと思いました。

ただ、ポイントは「20」発言ですね。
きっとこの発言から、大瀧さんはいろんな曲の美味しいとこ取りをして曲を作っているというイメージができてしまったんでしょうね。まあ僕もそう思ってしまったんですけれども。
でも、実際にはこの「20」発言は、達郎さんの言った言葉の流れから出たもので、実は大瀧さんはその前に大事なことを言ってるんですね。こんな会話。
山下「人のネタをばらすというのは、一見簡単なようで実は難しい」
大瀧「これがその人を知ることになるんだよ、なんのことはない。言っとくけど」

でも、達郎さんは大瀧さんのこの言葉をこのときには受けとらずに「いや...、だって、だれかが『ネタはこれでしょう』というと、『もっとさ、全然ひとつだけではないよ』って言うでしょ」って言葉を言ったので、それを受けて「私は20以上集まらないと作品にしないだ」という大瀧さんの発言が出るんですね。
でも、今、改めて考えれば「20あるから20言わないとダメ」発言よりも、その前に大瀧さんによって語られかけた「これがその人を知ることになるんだよ、なんのことはない。言っとくけど」の後を聴いてみたかったですね。そこに本当は大瀧さんを、あるいはポップスというものを知る重要なカギがあったような気がします。

ある人が何かの作品を下敷きにして作品を作ったときに、その人が下敷きにしたものを確認することが、まさにその人を知ることになるんだという言葉。

ネタが20もあるんだということよりももっと大事なことですね。そう考えると、大瀧さんはいろんな曲の美味しいこと取りをして曲作りをしているとの理解をしている人は、ちょっと気の毒な気すらします。

改めて考えてみると、大瀧さんの「アメリカン・ポップス伝」では、さまざまなミュージシャンが、必然的、あるいは偶然のつながりの中で、それ以前に生まれた曲を下敷きにした新たな素晴らしい曲を作っている例をいくつも知ることが出来ます。まさに「名曲を下敷きにすると名曲ができる」。そして、その下敷きにする仕方を見ることで、そのミュージシャンを知ることにつながる。
で、おそらく大瀧さんはアメリカン・ポップス伝を通じて、ご自分の作られた楽曲の”ネタばらし”、というよりも、その曲の下層に幾重にも重なっている、とても20では足りないほどのさまざまな下敷きとなっている曲(歴史)を明らかにされているんだということがだんだんとわかってきました。

というわけで、次回はいつのことになるかはわからない「風立ちぬ」全容解明の、ほんの初期段階の小さなまとめを。
by hinaseno | 2013-07-12 09:37 | 音楽 | Comments(0)