今朝起きて、石川さんのブログを見て、思わずにっこり。「スマイル」をさらにつなげていただきました。石川さんが作られたCDの中に収められているもので僕の知らなかったものをYouTubeなどでいろいろ聴いていたのですが、リッキー・リー・ジョーンズのものがすごく気に入りました。彼女のアルバムはいくつも持っているのですが、この「Smile」が収められたアルバムは持っていませんでした。
さて、その石川さんのブログで昨日紹介されていた(といっても、石川さんのブログは一日限りのものですから、もう読むことはできません。とても素敵な文章でしたので、もったいないです)、ちくま文庫から出た平川克美さんの『移行期的混乱―経済成長神話の終わり』、僕も一昨日買ってきて、昨日一気に読みました。いろいろ書きたいことは多いのですが、今日は例によって「つながり」の話を。
実は平川さんの『移行期的混乱』と同時に買った本がありました。川本三郎さんの『そして、人生はつづく』という本です。こちらも新刊で、発行日でいえば『移行期的混乱』の1日前。
川本三郎さんの『そして、人生はつづく』は『東京人』で連載したものを中心にまとめたもの。なんと、いきなり最初のエッセイから大瀧詠一さんの話が出てきます。ぱらぱらとめくっていたら他にもいくつか大瀧さんのことが書かれたエッセイがある。それだけでうれしくなてしまいます。どれも読んで思わずにっこりしてしまいます。「スマイル」ですね。その川本さんの『そして、人生はつづく』と平川さんの『移行期的混乱』に、同じ本のことが書かれていたんです。参考文献といったものではなく、いずれもたまたまの話の中で触れられているだけ。気がついたときにはびっくりというよりも、おかしくって仕方がなかったですね。ですから、実際はそれぞれの本を読んでご自身で発見してもらったほうがいいと思いますので、ここから先は読まれないほうがいいかと思います。個人的にはもう少し、ちょっとびっくりするつながりもあったのですが。
平川さんはもちろん川本さんのことが大好きで、川本さんの本をいくつも読まれています。『移行期的混乱』でも、川本さんの『大正幻影』と『向田邦子と昭和の東京』からの引用があったように思います。お二人とも消えていってしまった(まだわずかながらには残っている)昭和三十年代の東京の風景をこよなく愛されているんですね。川本さんの嫌いな表現をあえて使わせていただけば、「単なるノスタルジーではなく」。
平川さんの『移行期的混乱』は、経済について書かれたもの(ジュンク堂のジャンルでいえば「経済評論」)ではあるのですが、個人的には平川さんの本はどれも「物語」として読んでいます。もちろん僕が言う「物語」は単なる「おはなし」という意味ではなく、もう少し深い意味を持っています。このことについて語りだすと長くなってしまうのですが、簡単に言えば、そこに数字以外の仮に個人的な空想が入っていても、納得できるかどうか、ということでしょうか。『移行期的混乱』にも、いくつかの数字、データが載っていますが、その一方でその本の中では、人が実際に動いいている姿が見えます。人が実際に働いている姿が見えます。平川さんの言葉を使えば「言葉をもたないひとびと」の言葉を平川さんは耳をすませて聴き取ろうとされています。
あまり、というか全然読まないのに批判してもしょうがないのですが、テレビなんかによく出てくる、で、ときには首相のブレーンにまでなる人の話なんかを聞いていると、僕から言えば(というか河合隼雄先生がよく口にされていた言葉でもあるのですが)「おはなしにもならない」と思ってしまいます。自分に都合のいい数字だけを並べる。市井に暮らす人々の姿はこれっぽっちも見ていない。もちろん最も耳を傾けるべき「言葉をもたないひとびと」の声を聴きとろうなんてするわけがない。
なんてことを書き出すと「スマイル」な気分が減ってしまうのでやめておきます。あとがきなどを読むと平川さんの本を読んで怒り出す人もいるみたいですが、僕なんかは平川さんに優しく支えられた気がして、小さな微笑みを浮かべてしまいます。向こうの方で平川さんがいたずらっぽい笑いを浮かべて「ピース」とやっている姿が見えるようで。そう、素敵な「スマイル」というお金では換えられない「贈与」をいただいた気分になります。
話がそれてしまいました。『移行期的混乱』で、平川さんが子ども時代を過ごした昭和30年代の話が出てきます。ちょっと長いですが引用します。
平川さんという人を知る最大のポイントは、ここに書かれている「近未来ロボットのアトムよりは、自分たちの兄貴分のような小林少年に強烈なシンパシーを感じ」た、という部分に凝縮されているのではないかと思ってしまいます。
さて、川本三郎さんの『そして、人生はつづく』には、先程も書いたようにいくつかの章で大瀧さんの話が出てきます。なかでも最高に笑えてしまったのが「風景が、町が語る。」と題されたエッセイ。「東京人」の2010年12月号に掲載されたもの。
そう、平川さんの『移行期的混乱』と川本さんの『そして、人生はつづく』に共通して出てくるのは江戸川乱歩『少年探偵団』。キーパーソンは大瀧さんですね。先日、平川さんは大瀧さんの秘密基地に行かれてきたわけですが。
さて、ここに出てくる黒表紙の「少年探偵手帳」や「BDバッジ」のことは知りませんでしたのでネットでチェックしたらありました。これです。ここにある目次には「洞窟で迷わないための歩き方」はないみたいですけど、面白いですね。
川本三郎さんの『そして、人生はつづく』の「風景が、町が語る。」は、本を買ってすぐに大瀧さんに関する話のところまで読んでいたのですが、昨夜、平川さんの『移行期的混乱』を読み終えて、そのエッセイの後に書かれている部分を読み進めてみたら、先日来このブログで何度か触れた佐藤泰志の『海炭市叙景』の話が出てきてびっくり。北原慶昭さんがブログで書かれていた映画の話も出てきます。映画、見なくっちゃ。
その佐藤さんは川本さんも書かれているのですが村上春樹と同じ1949年生まれ。一時期、中央線の沿線に住んでいたとのこと。つながってますね。
ところで、その「風景が、町が語る。」では、川本さんの『銀幕の東京』が増刷された話が出てきます。大瀧さんがロケ地巡りを始められたきっかけとなった本で、僕の「早春」研究のきっかけになった本でもあります。この増刷された本の帯に大瀧さんの推薦の言葉があって、最後のあとがきに川本さんの大瀧さんへの感謝の言葉が載っていることを先日の平川さんのツイートで知ってびっくり、あわてて注文しました。ちなみに平川さんがそれを知ったきっかけは『銀幕の東京』を失くされたため。失くしたのは二度目ということです。「あの本が見当たらない」と書かれていたとき、きっと『銀幕の東京』のことだろうと思っていました。僕も何度も見当たらなくなって探しましたから。
いつの日か、川本さんと大瀧さんと平川さんの鼎談が実現すればと願っています。これ以上ない夢なのですが。
さて、その石川さんのブログで昨日紹介されていた(といっても、石川さんのブログは一日限りのものですから、もう読むことはできません。とても素敵な文章でしたので、もったいないです)、ちくま文庫から出た平川克美さんの『移行期的混乱―経済成長神話の終わり』、僕も一昨日買ってきて、昨日一気に読みました。いろいろ書きたいことは多いのですが、今日は例によって「つながり」の話を。
実は平川さんの『移行期的混乱』と同時に買った本がありました。川本三郎さんの『そして、人生はつづく』という本です。こちらも新刊で、発行日でいえば『移行期的混乱』の1日前。
川本三郎さんの『そして、人生はつづく』は『東京人』で連載したものを中心にまとめたもの。なんと、いきなり最初のエッセイから大瀧詠一さんの話が出てきます。ぱらぱらとめくっていたら他にもいくつか大瀧さんのことが書かれたエッセイがある。それだけでうれしくなてしまいます。どれも読んで思わずにっこりしてしまいます。「スマイル」ですね。その川本さんの『そして、人生はつづく』と平川さんの『移行期的混乱』に、同じ本のことが書かれていたんです。参考文献といったものではなく、いずれもたまたまの話の中で触れられているだけ。気がついたときにはびっくりというよりも、おかしくって仕方がなかったですね。ですから、実際はそれぞれの本を読んでご自身で発見してもらったほうがいいと思いますので、ここから先は読まれないほうがいいかと思います。個人的にはもう少し、ちょっとびっくりするつながりもあったのですが。
平川さんはもちろん川本さんのことが大好きで、川本さんの本をいくつも読まれています。『移行期的混乱』でも、川本さんの『大正幻影』と『向田邦子と昭和の東京』からの引用があったように思います。お二人とも消えていってしまった(まだわずかながらには残っている)昭和三十年代の東京の風景をこよなく愛されているんですね。川本さんの嫌いな表現をあえて使わせていただけば、「単なるノスタルジーではなく」。
平川さんの『移行期的混乱』は、経済について書かれたもの(ジュンク堂のジャンルでいえば「経済評論」)ではあるのですが、個人的には平川さんの本はどれも「物語」として読んでいます。もちろん僕が言う「物語」は単なる「おはなし」という意味ではなく、もう少し深い意味を持っています。このことについて語りだすと長くなってしまうのですが、簡単に言えば、そこに数字以外の仮に個人的な空想が入っていても、納得できるかどうか、ということでしょうか。『移行期的混乱』にも、いくつかの数字、データが載っていますが、その一方でその本の中では、人が実際に動いいている姿が見えます。人が実際に働いている姿が見えます。平川さんの言葉を使えば「言葉をもたないひとびと」の言葉を平川さんは耳をすませて聴き取ろうとされています。
あまり、というか全然読まないのに批判してもしょうがないのですが、テレビなんかによく出てくる、で、ときには首相のブレーンにまでなる人の話なんかを聞いていると、僕から言えば(というか河合隼雄先生がよく口にされていた言葉でもあるのですが)「おはなしにもならない」と思ってしまいます。自分に都合のいい数字だけを並べる。市井に暮らす人々の姿はこれっぽっちも見ていない。もちろん最も耳を傾けるべき「言葉をもたないひとびと」の声を聴きとろうなんてするわけがない。
なんてことを書き出すと「スマイル」な気分が減ってしまうのでやめておきます。あとがきなどを読むと平川さんの本を読んで怒り出す人もいるみたいですが、僕なんかは平川さんに優しく支えられた気がして、小さな微笑みを浮かべてしまいます。向こうの方で平川さんがいたずらっぽい笑いを浮かべて「ピース」とやっている姿が見えるようで。そう、素敵な「スマイル」というお金では換えられない「贈与」をいただいた気分になります。
話がそれてしまいました。『移行期的混乱』で、平川さんが子ども時代を過ごした昭和30年代の話が出てきます。ちょっと長いですが引用します。
わたしは大田区の南の外れの町工場の町で生まれたが、家の前の道路はまだ未舗装であった。付近には草深い空き地があちこちに散在しており、まだ防空壕が残っていた。戦時の名残りである防空壕は、悪ガキ連中にとっては興味津々の洞窟であり格好の遊び場であった。『少年』という漫画雑誌には、手塚治虫の『鉄腕アトム』や江戸川乱歩原作の『少年探偵団』が連載されていたが、わたしは近未来ロボットのアトムよりは、自分たちの兄貴分のような小林少年に強烈なシンパシーを感じ、雑誌に申し込んで黒表紙の「少年探偵手帳」を手に入れた。そこには、洞窟で迷わないための歩き方などが指南されていた。わたしたちは、自分たちにも一朝事あらば事件解決の出動要請がくるかもしれないという空想に胸を躍らせていたのである。
平川さんという人を知る最大のポイントは、ここに書かれている「近未来ロボットのアトムよりは、自分たちの兄貴分のような小林少年に強烈なシンパシーを感じ」た、という部分に凝縮されているのではないかと思ってしまいます。
さて、川本三郎さんの『そして、人生はつづく』には、先程も書いたようにいくつかの章で大瀧さんの話が出てきます。なかでも最高に笑えてしまったのが「風景が、町が語る。」と題されたエッセイ。「東京人」の2010年12月号に掲載されたもの。
大瀧詠一さんとの縁を取り持ってくれた日活の方から、「大瀧さんからです」と「築地川倶楽部」なる”秘密結社”のバッジを送ってもらう。
『銀座化粧』も『秋立ちぬ』も築地川界隈でロケされている。それでこの二本の映画とそこで描かれた築地川界隈を愛する人間たちの精神的なつながりを「築地川倶楽部」と呼ぶことになったようだ。
バッジは江戸川乱歩『少年探偵団』の「BDバッジ」を思い出させる。小生はうれしいことに「名誉会長」とある。気分は明智小五郎。有難い。
そう、平川さんの『移行期的混乱』と川本さんの『そして、人生はつづく』に共通して出てくるのは江戸川乱歩『少年探偵団』。キーパーソンは大瀧さんですね。先日、平川さんは大瀧さんの秘密基地に行かれてきたわけですが。
さて、ここに出てくる黒表紙の「少年探偵手帳」や「BDバッジ」のことは知りませんでしたのでネットでチェックしたらありました。これです。ここにある目次には「洞窟で迷わないための歩き方」はないみたいですけど、面白いですね。
川本三郎さんの『そして、人生はつづく』の「風景が、町が語る。」は、本を買ってすぐに大瀧さんに関する話のところまで読んでいたのですが、昨夜、平川さんの『移行期的混乱』を読み終えて、そのエッセイの後に書かれている部分を読み進めてみたら、先日来このブログで何度か触れた佐藤泰志の『海炭市叙景』の話が出てきてびっくり。北原慶昭さんがブログで書かれていた映画の話も出てきます。映画、見なくっちゃ。
その佐藤さんは川本さんも書かれているのですが村上春樹と同じ1949年生まれ。一時期、中央線の沿線に住んでいたとのこと。つながってますね。
ところで、その「風景が、町が語る。」では、川本さんの『銀幕の東京』が増刷された話が出てきます。大瀧さんがロケ地巡りを始められたきっかけとなった本で、僕の「早春」研究のきっかけになった本でもあります。この増刷された本の帯に大瀧さんの推薦の言葉があって、最後のあとがきに川本さんの大瀧さんへの感謝の言葉が載っていることを先日の平川さんのツイートで知ってびっくり、あわてて注文しました。ちなみに平川さんがそれを知ったきっかけは『銀幕の東京』を失くされたため。失くしたのは二度目ということです。「あの本が見当たらない」と書かれていたとき、きっと『銀幕の東京』のことだろうと思っていました。僕も何度も見当たらなくなって探しましたから。
いつの日か、川本さんと大瀧さんと平川さんの鼎談が実現すればと願っています。これ以上ない夢なのですが。