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by hinaseno

子どもは判ってくれない


今から9年前のある日のこと、その日たまたま実家に戻っていて、実家でとっている地方新聞(山陽新聞ですね)を開いたら、書評欄があって、その中の内田樹という人の『子どもは判ってくれない』という本の書評に目に留まりました。

今でこそ本はよく読みますが、当時は何人かの好きな作家の本の新刊が出れば読むくらいで、新聞や雑誌の書評を熱心に見るようなことはありませんでした。でも、ときどきは本のタイトルや、あるいは表紙のデザインに目がとまって書評を読むことはありました。場合によってはそれで面白そうだなと思って購入することもありました。

『子どもは判ってくれない』には、たぶんいくつか僕が目をとめてしまう要素がありました。まずは何といってもそのタイトル。いうまでもなくトリュフォーの映画『大人は判ってくれない』をもじったものですね。トリュフォーの映画は小西康陽さんの影響でよく観ていましたので、そのタイトルの感覚に惹かれたのが最初でしょうか。
それから「大人」のところを「子ども」にしているところ。教育関係の仕事をしていましたので、当然、反応してしまいます。でも、タイトルに「子ども」とついているくらいで反応していたら切りがありません。やはり「大人は判ってくれない」の「大人」のところに「子ども」が入っているという面白さに惹かれたのだろうと思います。

もう一つは「内田樹」という名前。その少し前に僕はあるものに文章を書くことがあって、そのために考えたペンネームの1つにそっくりだったんです。
「樹」は「たつる」と読むのですが、たぶんそれを確認したのはずいぶん後だったと思います。僕は最初は「いつき」と読んでいました。
「樹」という字には昔から深い縁を感じていました。まずは何よりも木(樹)が好きで、昔から木の写真ばかり撮っていました。今でも車を運転していて、いい木に出会うとうっとりと眺めてしまいます。
それから当時僕が最も読んでいた2人の作家にはいずれも「樹」という字がついていました。いうまでもなく村上春樹、そして池澤夏樹。だからペンネームは「秋樹」にしようかとも考えたのですがちょっと語呂が悪い。といって「冬樹」はちょっと。
それから、もう一つ。僕にとって大好きな映画があってそれが岩井俊二の『ラブレター』なのですが、その主人公の2人の名前(同姓同名ですね)が「藤井樹」。「樹」は「いつき」と読みます。この印象が強くて結局僕は下の名前を「樹」としました。
名字は最終的にちょっと変えたのですが1字はかぶっていました。つまり3文字のうちの2文字が僕の最初に考えたペンネームと同じだったんです。著者の名前がどれくらいのサイズで載っていたかは定かではないのですが、「内田樹」という名前を見て、あっと思ったことは確かでした。しかも本のタイトルも、僕の気になるものが含まれていて、正直運命的なものを感じざるを得ませんでした。

運命的といえば、僕は実家に戻るのはせいぜい年に5〜6回で、しかも山陽新聞に書評が載る月曜日にいることはめったにありません。年に1回あるかないか。そんな中でこの書評に出会ったんですね。

で、書評で引用されたいくつかの言葉を読んで、自分の感覚にあまりにも近いものを感じたので、自宅に戻ってきてすぐに書店に行って本を購入しました。そして一気に読んでしまいました。まずは何といっても言葉のリズムの良さ。これほど僕にぴったりあったリズムで文章を書く人は他にはただ一人しかいません(それはあとでわかるのですが)。
そしてその内容。僕が心に思っていても言葉にできなかったような内容のことを、あまりにも的確に、しかもユーモアにあふれた表現を使って書かれていました。そのユーモアの感覚と思索の方法も僕には近しいものでした(それもあとでわかるのですが)。

で、僕は内田樹という人の当時出ていた本を買い込みました。『ためらいの倫理学』『『おじさん』的思考』『期間限定の思考』『疲れすぎて眠れぬ夜のために』...。そして、そのいずれかの本でその村上春樹と大瀧詠一という名前を何度も目にすることになります。内田樹という人も、僕の最も敬愛している2人の大ファンだったんですね。運命的な出会いに、さらなる運命が待っていたんですね。もちろん驚きましたが、僕が強く惹かれた理由もそこにあったんだと納得しました。

『子どもは判ってくれない』で、内田樹という人が神戸女学院の教授をされているということがわかりましたので(現在は退官されています)、僕は個人的に内田先生と呼ぶようになりました。それからその本には内田先生のホームページのアドレスが載っていて、その日から僕はほぼ毎日更新される内田先生のブログを読み続ける日々が始まります。
(続く)
子どもは判ってくれない_a0285828_10455462.jpg
by hinaseno | 2012-12-21 10:50 | 全体 | Comments(0)