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by hinaseno
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  魅惑のボビー・ラッセルの世界(その2)


ある作曲家に興味を持って、まず最初にすることは自分のパソコンのiTunesにその作家の名前を入れての検索です。最初はフルネームで、それからファースト・ネームは最初のアルファベットだけにして、さらにはラスト・ネームだけにして。
例えばボビー・ラッセルであれば、まず”Bobby Russell”、それから”B. Russell”、そして”Russell”と検索していくことになります。外国のレコードに記載されている作家の名前は日本とは違って必ずしもフルネームになっていないんですね。ですから、かりに”Russell”という名前が出てきても、それがボビー・ラッセルとは限りません。実際、ボビー・ラッセルの曲をプロデュースしていたスナッフ・ギャレットのすぐそばにはレオン・ラッセルというソング・ライターがいたのですから。それからB.Russellということでいえば、バート・ラッセル(Bert Russell)やボブ・ラッセル(Bob Russell)という作家がいます。もちろん”Bobby Russell”という名前が出てきたからといって、本当にあのボビー・ラッセルなのかどうかも確証があるわけではありません。きちんと裏を取らなければならないんですね。

といっても僕のような個人的な趣味でやっている人間であれば少々の間違いは誰からもとがめられるわけではありません。でも、それが公共の電波に乗るとなるとそういうわけにはいきません。今年放送された大瀧さんの「アメリカン・ポップス伝」には、有名な人から無名な人に至るまでかなりの人が登場します。メインのアーティストならまだしも、バックで演奏している人を確認し、その裏を取る作業は想像もつかない労力を必要とされるだろうと思います。でも、大瀧さんはそれをされているんですね。50分の番組を作る背後には僕にとっては途方に暮れるような時間があったことは確かなんですね。おそらく今のDJでそこまでのことをされている人は一人もいないはずです。今、生きているミュージシャンであれば訊けばすむことでしょうけど、大瀧さんが扱う音楽はもう50年以上も前の海外の音楽。そして関わった人の多くは亡くなっています。でも、きちんと裏を取られているんですね。石川さんと電話で話をさせていただくときに、いつも石川さんが尊敬の念を持って語られるのはその部分です。

さて、僕のパソコンからあっさりと”Bobby Russell”という名前で出てきた曲がありました。アン・マーグレットの「Take All The Kisses」という曲。ベア・ファミリーというレーベルから出ているアン・マーグレットのボックスから気に入った曲だけをパソコンに取り込んで、作曲者の名前をブックレットから打ち込んでいたんですね。パソコンに取り込んだのはかなり前のこと。おそらく僕はそのときに一度はBobby Russellという名前を確認していたんですね。
調べてみるとアン・マーグレットの「Take All The Kisses」は1963年に録音されてます。ボビー・ラッセルの作った有名な曲は60年代の後半から70年代にかけてのものがほとんどですから、ちょっと古い。曲調も僕がイメージとしてもっているボビー・ラッセルらしさはどこにもない。でもとってもいい曲であることだけは確かなのですが。
で、改めてアン・マーグレットのブックレットをみると、解説のところに「Honey」「Night the Lights Went Out in Georgia」「Little Green Apples」を書いた人、との記載が。この3曲はボビー・ラッセルの最も有名な曲で石川さんの特集にも収録されています。ベア・ファミリーは信頼のおけるレーベルなので間違いはなさそうです。
ということで、前置きがかなり長くなりましたがアン・マーグレットの「Take All The Kisses」を。

この「Take All The Kisses」という曲に関してはもう少し思い出があります。
この曲はアン・マーグレットの代表曲である「バイ・バイ・バーディー」のB面の曲なんですが(「バイ・バイ・バーディー」はボビー・ラッセルの曲ではありません)、当時、石川さんから僕が希望したものや石川さんが僕に聴いてもらおうと思って選んだものをアトランダムに送っていただいた「ゴー!ゴー!ナイアガラ」を聴いていたら「バイ・バイ・バーディー」の話が少し出てきて、「その曲のB面の曲は先日かけたんですけどね」との大瀧さんの言葉が添えられたんです。で、すぐに石川さんに連絡して調べていただいたら、なんと例の大瀧さんの大好きな曲ばかりをかけている「マイ・ジューク・ボックス特集」でかけれらていたんですね。早速その時のものを送っていただいて聴いてみたら、大瀧さんにはめずらしく作曲者の説明がなく曲がかけられています。調べてみたら「Take All The Kisses」のレコードに記載されているのは”Russell - Willis”。これじゃあ、わかりませんね。

大瀧さんはこの「Take All The Kisses」をかけた後、こうコメントしています。

「バイ・バイ・バーディー」のB面ではありましたけれども、非常に僕が大好きなバラードでね。こういうバラードっていうのは、年を僕はかなり経てしまいましたけれども、ティーンエイジャーの頃の甘く切ない恋心を、きゅーっと胸を締め付けると言うか、そういったような感じを思い起こさせてくれるのがこういったようなバラードでございます。


ちなみにこの放送があった時の大瀧さんは27歳。まだまだ若いですよね。
このちょっとした「発見」を石川さんは大瀧さんにもメールでお伝えしたそうで、「あれはボビー・ラッセルの曲でしたか」との返事をいただいたとのことでした。間接的にではあれ、本当にうれしい出来事でした。

さて、「Take All The Kisses」にはもう少し余談があります。
実はこの曲はアン・マーグレットがオリジナルではなかったんですね。オリジナルはConnie & The Conesというボーカル・グループ。コニーという女の子がリードシンガーでバックに男性のコーラス(The Conesというおそらくは2人組のグループ)が入っています。どうやらこのコーンズにボビー・ラッセルがいたようです。彼が作ったグループなのかも知れません。曲が作られたのは1960年。ボビー・ラッセルが20歳のときです。
では、Connie & The Conesの「Take All The Kisses」を。

驚くことにアン・マーグレットの歌ったものと曲調もアレンジもほとんど同じです。アン・マーグレットの歌ったものはこのConnie & The Conesをほぼそのままカバーしていたんですね。それほどヒットした曲ではないはずですが、どんないきさつがあったのでしょうか。何らかのナッシュビルつながりがあったのでしょうか。

それからこのカップリングの「No Time For Tears」という曲もボビー・ラッセルが作っています。いかにもあの時代のティーン・ポップスという感じです。コニーもとっても魅力的な声を持っています。彼女は後にソロデビューしているみたいです。

今日の最後は、さっきのConnie & The Conesとは逆に男の子のリードボーカルに女性2人のコーラスがついたフリートウッズのこの曲を。 タイトルは「Ruby Red, Baby Blue」。素敵なタイトルです。


この曲はボビー・ラッセルと彼のナッシュビル時代からの親友バズ・ケイスンとの共作。1964年に作られた曲。地味な曲ですがとても綺麗なメロディ。特にサビでぐっとくるような旋律がでてきます。

そういえばこの曲のタイトル、大瀧さんが太田裕美に作ったこの「Blue Baby Blue」という曲と少しかぶります。曲の雰囲気も少し似ていますね。詞を書いたのは松本隆さん。大瀧さんの作った曲の中では5本の指に入るくらい大好きな曲です。まさに「ティーンエイジャーの頃の甘く切ない恋心を、きゅーっと胸を締め付けると言うか、そういったような感じを思い起こさせてくれる」バラードですね。
by hinaseno | 2012-12-14 11:10 | 音楽 | Comments(0)