Nearest Faraway Place nearestfar.exblog.jp

好きなリンク先を入れてください

Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
プロフィールを見る
画像一覧
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

これからの人生と冬の本


昨日、夏葉社という出版社のことに触れましたが、もう間もなく、その夏葉社から新刊が出ます。タイトルは『冬の本』。
a0285828_92137.jpg

夏葉社のブログにはこんなふうに紹介されています。

冬と1冊の本について、弊社が書いてほしいと願う人たちに、
それぞれ約千字で、エッセイを書き下ろしてもらいました。
冬に読んだ本や、冬に出会った本。
冬になったら思い出す本や、まるで冬のような本。
そんな「本の話」が、84本。


装幀が何と和田誠さん。
僕と夏葉社との出会いも和田誠さんが装幀した夏葉社の1冊目の『レンブラントの帽子』でした。夏葉社としては、久しぶりの和田さんです。




楽しみなのは装幀だけでなく、その執筆者。僕にとって気になる人がずらっとならんでいます。誰から読もうかと悩んでしまいますが、でも、きっと僕はこの人のページから見るだろうなと思う人がいます。
小西康陽さんですね。元ピチカート・ファイヴ。
大瀧さんがレコードを出してくれなくなった後のある時期、一番良く聴いたのがピチカート・ファイヴでした。
小西さんには彼の作り出す音楽だけでなく、彼が紹介する音楽(ときどきは本や写真集)にも多大な影響を受けました。小西さんの出した本は大体持っていますし、小西さんが好きな音楽などを紹介した雑誌などもいくつも持っています。

小西さんと言えば、一番楽しみにしているのが、年末にレコード・ショップ(現在はハイ・ファイ・レコード)と提携してここ数年毎年作っている『これからの人生』というCD。数年前から同じタイトルで月1回のラジオ番組が始まっています。ラジオの方は番組のサイトから、その日かかった曲をすべてチェックすることができますが、CDの方は曲目を言わないでほとんどの曲がかかります。それがとびっきり素敵な曲だったりすると、どうしてもそれが、だれの何という曲なのかを知りたくなります。歌詞を聴いてタイトルの可能性のありそうな言葉から類推したり、あるいはわからないままでいた曲にある日突然であったりとか、楽しみがつきません。いまだにわからないままでいる曲もいくつかあるので、またいつかここに貼っておいて、わかった人に教えてもらいましょうか?
いずれにしても年末が近づくとハイ・ファイ・レコードのサイトを見る回数が増えてきます。あのレコードはその日まで売れないで残っていてほしいと考えながら、その日を待っています。

さて、そのCD盤『これからの人生』で知った、とっても素敵な曲をここに貼っておきます。ずっと前からYouTubeでチェックしていたけどなかったので、今朝、自分で作ろうかと思って今朝改めてチェックしたらありました。しかも、映像付きで!
残念ながら埋め込みができないのでリンクします。
「口笛とバレエ」

これは劇団四季の『壁抜け男』というミュージカルの一場面に使われた「口笛とバレエ」という曲です。曲を作ったのは、かのミッシェル・ルグラン。本当に気に入ってしまって、ずっとこの曲の最初の口笛を吹いていた時期もありました(今でも時々)。
CDが出ていることもわかったので購入して聴いてみたら、いい曲だらけ。
「口笛とバレエ」に続くこの「イザベルとデュティユルのデュエット」という曲もロマンティックです。
他にも好きな曲を。
「二人の警官」
「タイプを打つデュティユル」
「デュブール医師の診断」
「どうかしちゃった」
「イザベルのソロ」

言うまでもないことですがCDを聴いていたら当然、映像を見たくなります。でも、DVDは出ていなくて、以前に出たビデオがあったのですが当然廃盤。ネットで探すと、2本組みということもあってかなりの高額。でも、欲しかったので確かオークションかなんかで買いました。今、見たけどすごい値段がついていますね。そこまではしませんでしたが、たぶん僕がオークションで買ったものでは最高額でした。
劇団四季のミュージカルを見るのは初めてでしたが、最高に良かったです。YouTubeの画像はそのビデオからのものですね。うれしいです。
その後、テレビで放映された劇団四季の「思い出を売る男」なんかもすごく気に入りました。
でも、『壁抜け男』は本当に好きになってしまって原作のマルセル・エイメの本も買いました。

さて、その高い値段を出して買ったビデオ。しばらくしてビデオデッキ(DVD一体型)が故障して、時代はDVDからブルーレイへ。ビデオが再生できるデッキがほとんど市場から消えていたんですね。で、新しく買ったのはDVDだけが再生できるもの。というわけで、ビデオはそれ以来見えていません。DVDに買い替えたもの、あるいはもう絶対に見ないなと思ったビデオは全て処分しましたが、『壁抜け男』だけは残しています。

ところで、小西さんは間もなく出る『冬の本』でいったいどんな本を紹介しているのでしょうか。
今、手元に去年買った『IN THE CITY』という雑誌があります。小西さんを特集しているのですが、そこに特別付録として「小西康陽の本棚から」と題していくつか小西さんの愛読書を紹介しています。吉行淳之介が2冊。鏡明(知らない)という人の本。安藤鶴夫の『雪まろげ』(これはいつか探して読もうと思って忘れてました)。それから谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』(これは読みました)。
小西さんが『冬の本』で選んだ可能性のあるのは、『雪まろげ』か『陰翳礼讃』かなと思っています。
もう1冊、小西さんが最後に紹介している本があります。
石原慎太郎の『わが人生の時の人々』。びっくりでした。「嫌いな人こそ読んでもらいたい。僕も好きじゃないですけど」と書いています。残念ながら(ちっとも残念ではありませんが)、とても読む気になりません。まさか、先(?)を見越して、これを『冬の本』の1冊として選んでいなければいいのですが。

ところで、僕がもし『冬の本』を1冊選ぶとしたら、何にするだろうかと、今、考えています。
昨日、触れた新美南吉の『手ぶくろを買いに』なんか、まさに冬の本ですが。
a0285828_9232529.jpg

[PR]
# by hinaseno | 2012-11-22 09:44 | 全体 | Comments(3)

今まで何度か『木山捷平 父の手紙』という本のことに触れました。一昨日は「鰆」のことについて。この本の装幀をしているのが山高登という人です。実は一昨日、美しい晩秋のいなかの風景を見ながら、山高登さんの絵のことをずっと思い浮かべていました。
山高登という人を知ったきっかけは、夏葉社から出た関口良雄(関口直人さんのお父さんですね)著『昔日の客』でした。ここの口絵と裏表紙に、山高さんの絵が収められています。版画絵ですね。色のついたものと、ついていないもの。
直人さんの書かれたあとがきを読むと、最初、三茶書房から出たものは、その装幀とともにかなりの数の版画絵が収められていたようです。ぜひ見てみたいと思って、以前アマゾンを覗いてみたら、うっ、でした。

a0285828_9435427.jpg僕が持っている山高さんが装幀された本は、調べてみると小沼丹の『藁屋根』と『緑色のバス』の2冊がありました。『藁屋根』の方の函の表の絵はいかにも山高さんらしい農家の風景を描いたもの。もう一つ、口絵も描かれています。

で、先日、日曜日に岡山に戻った時、いつも立ち寄る万歩書店に行って、山高さんの装幀された本を探してきました(実際には店長の中川さんに探してもらいました)。小一時間で十冊の本を見つけてもらいました。いろんなタイプの絵がありますが、やはりこんな版画絵が素敵ですね。
a0285828_9443386.jpg


そういえば、先日、関口直人さんから、山高さんの版画絵展が神奈川県の藤沢市で開催されていることを知らせていただきました。先日の日曜日はその最終日でした。残念ながら行くことはできませんでしたが、版画展の開かれているときに山高さんの装幀された本を買っておきたいと思い立ったんですね。でも、実はこの本は知り合いの人に頼まれてのものではあったのですが(その方が山高さんご本人からいただいていた山高さんの装幀された本のリストがあったから探すことができたわけです)。ですから、これらの本は間もなく僕の手からは離れていくことになります。ちょっと悲しいです。

さて、その万歩さんで購入した本で最も素晴らしかったのは新美南吉の『百姓の足、坊さんの足』という童話集でした。万歩の中川さんがこれを見つけてきてくれたときに、「これはすごいですよ」って言われたのですが、まさにそのとおり。山高さんの版画絵が満載なんですね。山高さんの顔写真も載っています。
新美南吉といえば教科書に載り続けている「ごんぎつね」が有名ですが、僕は同じくきつねの物語である「手ぶくろを買いに」が好きです。小川洋子さんがエッセイでこの童話のことを書かれていたのがきっかけです。子狐が手袋屋さんの扉を少しだけ開けて、そっと手を差し出す瞬間は何とも言えないですね。

ところで、前に僕は川本三郎さんの『小説を、映画を、鉄道が走る』という本をずっと読み続けているってことを書きました。もう読んでいる僕の方が脱線に次ぐ脱線、というか途中下車をし続けていてちっとも前に進まないのですが、また脱線、いや途中下車をしてしまいました。
ちょうど木山捷平の「斜里の白雪」のあとに新美南吉の「おじいさんのランプ」の話が少し出てきたんです。そこを読んだのが一昨日の晩でしたから、すぐに万歩さんで買ってきたばかりの新美南吉の童話集を見たら載っていました。もちろん山高さんの絵もいっぱい。口絵にも素敵な絵がありました。小説の中で最も印象的な場面を描いたものですね。

で、昨夜これを読みました。とってもいい話。でも、少し切なくなる話。
最後におじいさんの孫に向けたこんなことばがあります。電気というものができてランプ屋をやめて本屋をするようになったおじいさんのことば。
「わしの、しょうばいのやめかたは、じぶんでいうのもなんだが、なかなかりっぱだったと思うよ。わしのいいたいのはこうさ。日本が進んで、じぶんの古いしょうばいがお役にたたなくなったら、すっぽりとそいつをすてるのだ。いつまでもきたなく、古いしょうばいにかじりついていたり、じぶんのしょうばいがはやっていたむかしのほうがよかったといったり、世の中の進んだことをうらんだり、そんな意気地のねえことは、けっしてしないということだ」

ちょっとぐっと来ます。この小説が世に出たのは昭和17年(1942年)。まさに戦争中ですね。
でも、新美さんはこれを書いたときに、電気を作るためのダムを造るために自然が破壊されたりとか、石油がたくさん燃やされて二酸化炭素がどんどん空気中にまかれてさまざまな自然破壊が起きたりとか、あるいはいうまでもなくもっとも電気を効率よく作る原発事故が起きたりしたことも知りません。確か原発事故の後、ランプが見直されるようになったんですね。
果たしておじいさんの判断は正しかったんでしょうか。

おじいさんがランプ屋をやめるきっかけとなった出来事があります。電気をおじいさんの村にもひくことが決まったので、おじいさんは村長のことを恨んで村長の家を燃やそうとします。普段ならマッチを持っていくのに、そのときには火打ち道具を持っていきます。そしていざ火をつけようとすると、なかなか火がつきません。カチカチと大きな音もして寝ている人を起こしてしまう気がする。そのときにふと気づきます。

「古くせえもなァ、いざというときにはまにあわねえ」

そしておじいさんは店にあったランプを全部捨てようと決心して、池のところまでもっていって全部のランプに灯をともします。これがその場面を描いた山高さんの絵です。
a0285828_9432397.jpg


でも、おじいさん、ちょっと待って、ですね。
そのとき、もしおじいさんがマッチを持っていってたらどうなったか。言うまでもなくおじいさんは放火殺人犯で捕まってしまって、一生牢屋に入れられるどころか、その時代であればすぐに死刑になってしまっていたように思います。
本当はおじいさんは「古くさいもの」に、つまり、いろいろと手間がかかって時間がかかるものに助けられたんですよね。

と、この文章を書きながら、CDという便利なものを処分して買ったナット・キング・コールの古いレコードを聞いています。CDが出て多くのレコードを処分したのですが、最近はその逆のことをしています。手間がかかったっていいんです。いや、その手間があるからこそ音楽は何倍も素敵に聴こえるんです。
[PR]
# by hinaseno | 2012-11-21 09:49 | 文学 | Comments(2)

  がんばれば愛


先日、阪神タイガースにいた江夏豊選手のことを書きました。背番号が完全数28の快速球投手。その江夏投手の球を阪神時代に受けていたのが田淵幸一捕手。
田淵選手とは少しつながりがあって、実家の近くにある母方の先祖にあたる墓のとなりに田淵さんの先祖の墓がありました。田淵さんもときどきは来ていたようです。僕はそこの墓にそんなに何度も行ったわけではないので、田淵さんに実際に出会ったことはありませんでしたが、行くと必ず「田淵」と書かれた墓を見ていました。確か数年前に取り払われてしまったと思いますが。
ちなみに、母や田淵さんの先祖の墓の近くには、かの田中眞紀子さんにゆかりのある(ということは角栄さんにゆかりのある)人のお墓もあったみたいで、ちょうど田中眞紀子さんが自民党のときの大臣時代に訪ねて来たことがあって、町中大騒ぎになったそうです。
話はそれますが、木山さんのお父さんの日記を読んでいたら、静太さんはどうやら2度ほど実家のある町に来たみたいです。岡山で言えば、静太さんの住んでいた笠岡は西の外れ、僕の実家があるのは東の方ですから汽車で1時間以上はかかったはず。でも、日記で見つけたときはとてもうれしかったです。

話が(いつものように)それました。田淵選手の話です。
田淵選手は天性のホームランバッターで、あの王貞治さんとも何度もホームラン王を競っていたのですが、その一方でかなり特異なキャラクターを持っていて、年々その個性が際立ってきました。
それを見逃さなかったマンガ家がいました。いしいひさいちです。実は彼も岡山出身の人。マンガのタイトルは「がんばれ!!タブチくん!!」。
a0285828_1247553.jpg

このマンガにははまりました。当時よく読んでいたマンガはほとんど処分したのですが、これだけは処分しないでいたので、先日実家に戻ったついでに取ってきました。3巻ありました。久々に読んでも笑えます。
a0285828_838540.jpgちなみに僕の一番好きなキャラクターはヤクルトのヤスダ投手でした。「うりゃ」って言いながら投げている絵はたまらなく好きでした。
「がんばれ!!タブチくん!!」には野球とは関係のない時事問題を扱ったマンガも含まれています。のちに朝日新聞の4コママンガを書くようになったのもうなずけます。でも、かの名作「フジ三太郎」の後を受けて書き始めたときは相当のプレッシャーを感じましたが。今、「がんばれ!!タブチくん!!」をパラパラと見ると、どうやら当時の総理大臣は大平さんのようです。絵になりますね。今は絵になる政治家、いないですね。

さて、その「がんばれ!!タブチくん!!」は映画化されます。ただ、僕はこの映画は、たぶんテレビで放映されたときも見ていません。4コママンガだからこそ好きだったんでしょうね。
ところが後年、この映画(正確にはパート2)の主題歌を大瀧さんが作っていたことを知ってびっくりしました。この曲です。タイトルは「がんばれば愛」。歌詞やアレンジは大瀧さんではありません。


先日、この曲の収められた『大瀧詠一作品集VOL.2』(1995年発売)のブックレットを読み返して驚いてしまいました。以前ここで書いたことを訂正しなければならないことがわかったんです。
この曲を歌っているのはクレイジー・パーティーという名前の人ですが、実はスターダスト・レビューの根本要さん。そしてバックコーラスは大瀧さんの一人多重コーラスなんですね。デモ・テープに大瀧さんが多重コーラスを入れていたら原盤会社の人(キティの安室さん)に気に入られて、レコードにもぜひコーラスを入れてほしいということになったそうです。で、井上陽水さんはこの「がんばれば愛」のコーラスが気に入って、筑紫さんの「ニュース23のテーマ」を作るときに、この「がんばれば愛」のようなコーラスをやってほしいということになったんですね。そしてこの制作を手伝ったのが川原伸司(=平井夏美)さん。ブックレットにもちゃんと「川原伸司(平井夏美)」と書かれていました。気づきませんでした。
「ニュース23のテーマ」は何回か変わっていて最初のものははっきりと記憶していないのですが、「がんばれば愛」に聴かれる「おーっ、おーっ」のようなコーラスを使っていたものがあったように思います。YouTubeにはちょっと見当たりません。
「がんばれば愛」を録音したのは1980年の2月。『ロング・バケイション』の録音が始まるのが1980年の4月18日(最初に録音したのは「君は天然色」)。つまり『ロン・バケ』がまだ世に出るどころか、録音される前に「がんばれば愛」は作られているんです。
僕は前に陽水さんは大瀧さんの『EACH TIME』を聴いて、コーラスをお願いしたんじゃないかって書きましたが全然違っていました。全然違っていたと言えば、『ロンバケ』には大瀧さんの一人多重コーラスはないって書きましたが、そんなことはありませんでした。数曲ですが、大瀧さんの一人多重コーラスが聴かれます。

改めて考えてみれば、もし大瀧さんが「がんばれば愛」のデモ・テープを渡すときに、あえてそこに一人多重コーラスを入れることをしなければ、「少年時代」は生まれなかったんですね。もちろん、そのデモを聴いてそのコーラスをレコードに入れようと判断したキティの安室さんとか。
「君は天然色」(つまりは『ロング・バケイション』)が生まれる背景にも、様々な偶然のつながりと確かな耳を持った(単なる思いつきだったかもしれませんが)何人かの人がいたように、「少年時代」が生まれる背景にも様々な偶然のつながりと確かな耳を持った何人かの人がいたことだけは忘れてはいけませんね。
[PR]
# by hinaseno | 2012-11-20 08:44 | 音楽 | Comments(4)

ちょっと岡山の実家に戻っていました。実は11月の中旬の戻ることはめったになかったのですが、この時期の風景は本当に美しいですね。赤や黄に色づいた樹々の美しさはいうまでもなく、柿がたわわに実った木と農家の風景もたまらない気持ちになります。何度も見ている場所が別の世界のように思えてしまいました。やはりいいですね、秋は。

実家に戻ると必ず食べるものがあります。サワラの刺身です。これを食べながらビールを飲むというのが実家に帰ったときの楽しみの一つです。
サワラは漢字で「鰆」と書きます。魚へんに春。まさに字の如く春に岡山近辺でとれる魚です。でも、今は日本のどこかでとれるみたいで一年中食べることができます。これを刺身で食べるというのは岡山くらいみたいですね。姫路でも滅多に見ません。たまに、ちょっと美味しくない(色も良くない)背身が売られているのを見かけることがありました。しかも悲しいくらいに小さく切られた状態で。とても食べる気がしません。美味しいのはやはり腹身の方。厚みも1センチくらいあるのがいい。
先月に帰ったときに近所の魚屋で買ったものを載せておきます。
a0285828_12295836.jpg


写真に撮ったものは美味そうに見えないのが残念です。でも、岡山県外の方で岡山に行かれた際には、ぜひサワラの刺身の腹身を食べてみて下さい。マグロなんか比べものにならないくらいに美味しいです。

そういえば『木山捷平 父の手紙』を読んでいたら、鰆のことがいくつか出てきてうれしく思いました。木山さんの父親、静太が木山さんに送った手紙は、木山さんを強く叱責する言葉がしばしばとりあげられますが、実は子に対しても時候の挨拶や自分や家族、あるいは近所の人たちの近況を、かなり細かく書いています。そんな中に鰆が出てきます。

例えば、木山さんが雑司ヶ谷に住んでいた大正12年の5月26日の手紙には、「倹約で鰆を買はぬことにしたり」と書かれています。鰆が特別な魚だったことがわかります。確かに今もちょっとだけ高いのですが、でもマグロの中トロを買うのよりかは、はるかに安いです。味も中トロの何倍も美味しいです。でも、なんで他の土地にはないんでしょうか。不思議ですね。
でも、あちこちで買われるようになって値段が上がってしまうのも困るので、岡山に来たときに食べて下さいということで。
[PR]
# by hinaseno | 2012-11-19 12:34 | 全体 | Comments(2)

『ロング・バケイション』というアルバムから入った僕は、それが大瀧さんのデビュー・アルバムではないことを知るや、当然のことながら大瀧さんが過去にどんな曲を作っているんだろうかという作業に入ります。いわゆる「後追い」ですね。
正直言えば、前に貼った「ナイアガラ音頭」を聴かれればわかるように、まさに驚きと戸惑いの連続。意味不明の言葉、理解不能の音楽のオンパレード。離れようかと思ったことも何度か。
でも、そんな中で、ときどきたまらないくらい素敵な曲に出会うんですね。ああ、これぞ
まさに『ロンバケ』の大瀧さんの曲!というものに。そういう楽曲が離れそうになりそうな心をつなぎ止めて、いつしか次第にディープな世界へと入っていく...。何人もの人が辿った軌跡ではないかと思います。

そんな後追いをはじめて出会ったとびっきり素敵な曲が、須藤薫さんの歌う「あなただけI Love You」という曲です。


須藤さんって本当に歌、上手いんですね。
大瀧さんの作った曲が須藤薫さんに歌われたものはこれ1曲(CMに1曲ありますが)ですが、彼女のことは大好きになって、その後アルバムを何枚も買いました。『ナイアガラ・トライアングルVol.2』の杉真理さんが彼女にいくつも素敵な曲を書いています。ピチカート・ファイヴの小西康陽さんがプロデュースした『Tender Love』は死ぬほど好きなアルバムです。

さて、「あなただけI Love You」という曲、メロディーもとびっきり素敵なんですが詞もとってもいいんです。詞を書いているのは大瀧さん本人です。大瀧さんは、自分の歌うコミカルな曲の詞はたくさん書かれていますが、メロディーの綺麗なものはだいたいが別の作詞家が詞を書いています。でも、本当は大瀧さんはとてもロマンティックな詞を書ける人なんですね。前に触れたシリア・ポールの「夢で逢えたら」も大瀧さんが書いた詞です。あの詞もとても素敵ですが、個人的にはこの「あなただけI Love You」の歌詞が、”まじめ路線”で書かれたものでは1番好きです。須藤さんのディレクターの川端さんの、ぜひ大瀧さんの詞で、という強い要望を受けて、「苦労に苦労を重ねて」書いた詞だそうです。
詞を載せておきます。

いそぎ足 なぜかしら
約束の時間には まだ
15分 早いのに
息はずませ いつもの場所に
心はさきに in the air
あなたの そばへ
あの角 まがれば
目に飛びこむ
やさしい Smilin’ face

いつでも Love You
どこでも Love
Too Much Love You
あなただけ Only You
夢でも Love You
さめても Love You
So Much Love You
あなただけ I Love You

しのび足 うしろから
つめたい手で そっと目隠し
素敵な日 スタートよ
声はずませ いつもの ハッピートーク
言葉はゆれて in the wind
あなたのそばで
宙返りして
耳に飛び込む
ゆらり Smilin’ voice

いつでも Love You
どこでも Love
Too Much Love You
あなただけ Only You
夢でも Love You
さめても Love You
So Much Love You
あなただけ I Love You

かけ足で 過ぎてゆく
人並み 風 楽しい時間
歩きましょ どこまでも
胸はずませ いつもの通り道
今宵は 星も in the sky
あなたの そばへ
そっと 寄りそい
胸に飛びこみ
やすむ Lovin’ place

いつでも Love You
どこでも Love
Too Much Love You
あなただけ Only You
夢でも Love You
さめても Love You
So Much Love You
あなただけ I Love You


大瀧さんって実はとびっきりロマンティックな詞が書ける人だってことがわかってもらえると思います。「言葉はゆれて in the wind あなたのそばで 宙返りして 耳に飛び込む」なんて部分は大好きです。

基本的には「あ」の段の音で始めるのが好きな大瀧さんですが、1番、2番は、たぶん1番響きが悪いと考えているはずの「い」の段の言葉(「いそぎ足」、「しのび足」)でめずらしく始めています。メロディーもその部分はちょっとマイナー調ですね。でも、その部分があるからこそ、まるで雲に隠れていた太陽の光が少しずつ射してくるみたいに、あとのサビの明るい部分へとつながっていくんですね。当然意識されて作られただろうと思います。
メロディでいえば「 心はさきに in the air あなたの そばへ」のあたりは、まさに『ロンバケ』してるって感じです。
個人的に好きなのはさびに入る直前の「 やさしい Smilin’ face」「 ゆらり Smilin’ voice」 「やすむ Lovin’ place」の部分です。詞も韻を踏んでいます。メロディと言葉の相性もぴったりです。
ちなみにこの曲の弦アレンジは松任谷正隆さん。ユーミンの旦那さんですね。イントロの弦は見事に『ロンバケ』しています。実は『ロンバケ』のいくつもの曲の弦アレンジも松任谷さんがしてるんですね。

さて、この曲がとってもよかったので、須藤さんにもうⅠ曲、という話になります。当然ですね。そして大瀧さんは素晴らしい曲を書きます。でも、須藤さんのディレクターの川端さんはその素晴らしい曲を結局、須藤さんに使わなかったんですね。川端さんが使わなかった理由は、それが女性向きではなく「男性用」の曲であるとのこと。で、結局、その曲は大瀧さん自身によって歌われることになります。
それがこの曲です。


僕だけでなく、何人もの人生を大きく変えた曲ですね。もし川端さんが、この曲を松本隆さんではなく誰か別の人の詞をつけて、そのまま須藤さんに歌わせていたら、一体僕の人生はどうなっていたんだろうと思います。決して大げさではなく。
あの曲もすんなりと生まれたのではなく、いろんな紆余曲折があって、風の中でいくつもの宙返りをして、僕の耳に届くことになったわけです。やはりそれは”奇跡”というしかないですね。
[PR]
# by hinaseno | 2012-11-18 09:51 | 音楽 | Comments(1)