Nearest Faraway Place nearestfar.exblog.jp

好きなリンク先を入れてください

Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
プロフィールを見る
画像一覧
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

このシリーズも佳境に入りました。
そもそも、なぜ僕が大瀧さんの一人多重コーラスであるJack Tonesに興味を持ったかという話を少し。
僕が大瀧さんをリアル・タイムで追うようになったのは『EACH TIME』というアルバムからです。その前後に発売された、大瀧さんの記事の載った雑誌は見つけられる限り買っていました。それらを今年になって読み返していたところ、ある雑誌の記事(切り抜いてとってあったので、何の雑誌かわかりません)で次のような言葉を見かけたからです。

「ボク自身、音楽をつくること、その過程を楽しむことが目的なんだ。だから、作ったものの中に、いろんなナゾやジョークをかくしているわけ。
 ただ、以前はひとりでかくれんぼしてたら結局だれも捜しにきてくれなかった。だから、今は、みんなに遊んでもらえるように、カゲくらいは見せておこうと思ってるわけさ」
『EACH TIME』というアルバム名にもナゾがあるとか。それは? ヒントは76年のLP『GO! GO! NIAGARA』のジャケットの裏に残されているそうです。ハイ。


a0285828_855285.jpgたぶん当時、これを読んで『GO! GO! NIAGARA』のジャケットの裏を見たはずですが、(といってもLPは持っていなかったので、『All About Niagara』という本に収められた写真なので、今見ても「introducing “Jack Tones」の言葉は読み取れません。で、おそらく、僕が見ていたのはその上の、おそらくはDJをしているときの大瀧さんの写った写真だったと思います)たぶん何のことかわからなくて、それっきりにしていました。
で、今年、その記事を久しぶりに読み返して気づいたんです。ああ、Jack Tonesだ!
『EACH TIME』は『GO! GO! NIAGARA』以来、Jack Tonesが大活躍していたアルバムだったんですね。
実際に『EACH TIME』のアルバムで大瀧さんの一人多重コーラスは、アルバムが発売された時の全曲数9曲のうちの4曲。でも、おそらく一人で歌っているものでも、おそらく大瀧さん的には、これは宿霧、これはちぇるしい、これは多羅尾、という感じで歌っていたのではないでしょうか。Jack Tonesのそれぞれに(each)に活躍の時間(time)を与えている。
よく『EACH TIME』は『ロング・バケイション』ほどには遊びが少ない、と言われていましたが大瀧さんなりには遊んでいたのではないかと思います。同じように聴こえて(見えて)しまうけど、実はそうではない、というのが大瀧さんの作り出した音楽の最大のポイントですからね。

では、その『EACH TIME』に収められた一人多重コーラスを、ということになりますが、アルバムの発表順ではその前に『ナイアガラ・トライアングルVol.2』がありますので、そちらの話を。
この中には「Water Color」と「ハートじかけのオレンジ」の2曲に一人多重コーラスが聴かれますが、これはJack Tonesというよりもダブル・ボーカル(ちゃるしいと多羅尾?)ですね。
興味深いのはアルバムには収められていませんが、「ハートじかけのオレンジ」のB面に収められた「Rock'n' Roll 退屈男」という曲。これはJack Tonesのメンバー全員に順番に歌わせているという感じで、大瀧さんの様々な声が出てきます。めいっぱい遊んでいますね。


さて、『EACH TIME』。僕はLPで何度も聴いたので、やはり1曲目は「魔法の瞳」。あえてLPバージョンを。


「魔法の瞳」は、その後、CDが出るたびに、まるで打順が下がるみたいに、曲順が後ろにされていったのですが(現行では、アルバムの中で最初に録音された「夏のペーパーバック」が1曲目)、僕の中では永遠に『EACH TIME』の1曲目(再来年に『EACH TIME』の30周年盤が出るときには1曲目に戻してもらいたいです)。「魔法の瞳」については、またいつか。

次は「恋のナックルボール」。


3つめは「1969年のドラッグレース」。


そして最後が「ペパーミント・ブルー」。Jack Tonesがコーラスをした最高の曲だと思います。本当に素晴らしいハーモニーが聴かれます(歌詞の中にもハーモニーが出てきます。松本隆さんにデモを渡されたときにもコーラスを入れてたんでしょうか)。詞、曲、唄、そしてコーラス、どれをとっても僕にとって最高の、永遠の一曲です。


そういえば昨夜、小西康陽さんの「これからの人生」を聴いていたら最後に子供たちのコーラスで歌った山下達郎さんの「クリスマス・イブ」がかかりました。吉永小百合さんの主演された『北のカナリアたち』で歌われた曲とのこと(西條八十が詞をかいた「かなりや」も歌われているようです)。これまで聴いた「クリスマス・イブ」の中で最も感動してしまいました。
「ペパーミント・ブルー」もあんな感じで、できれば大瀧さんの生まれた岩手の子供たちに歌ってもらえたら素敵だろうなと思いました。
2年前にはこういうのが開催されていたみたいですから。今度はできればコーラスで。


希望と言えば、再来年(来年のことを言っても鬼が笑うのですが)に出る『EACH TIME』のボーナス盤には、カラオケとともに、ビーチ・ボーイズの『PET SOUNDS SESSIONS』に収められたような「STACK-O-VOCALS」、つまりJack Tonesのボーカル部分だけを収めたものを入れてもらえたら最高にうれしいように思いました。さらにおまけに『ロンバケ』の数曲も入れてもらえればさらにうれしいです。

さて、その後は、といっても、アルバムはもうないのでシングルの曲ですね。「恋するふたり」の最後の「ダン・ドゥビ・ダン」に、Jack Tonesらしき声が。ただし、女性の声も入っています。


というわけで、長く続いた大瀧さんの一人多重コーラス特集もこれで終りにしようと思ったのですが、実は大瀧さんのいろんな音源を聴き返す中で、僕にとっては「 ペパーミント・ブルー」以上に素晴らしいJack Tonesのコーラスの入った曲を発見したんです。もちろんそれは、あるCDにひっそりと収められているのですが、それをどうしてもLPで聴いてみたくなって、でも、そのLPを持っていなかったので、先日神戸の中古レコード屋さんをめぐって見つけてきました。
明日はその最高のJack Tonesの曲を紹介します。
[PR]
# by hinaseno | 2012-11-29 09:05 | 音楽 | Comments(3)

さあ、いよいよ『ロング・バケイション』。

と言いつつ、いきなり関係のない話を。
最近、夢というものを全く見なくなっていたのですが、昨夜、久しぶりに夢を見ました。なんと、「ナイアガラ・トライアングルVol.1」の伊藤銀次さんに出会うという夢。初対面なので握手をしてもらいました。大瀧さんは、たぶん夢には何度も登場した気はしますが、銀次さんははじめて。ここのところ、家でも仕事場でも、ちょっと息抜きしたいとき、ギターをもっては銀次さんの「ウキウキWatching」を口ずさんでいるせいでしょうか。それだけのことですが。

さて、『ロング・バケイション』。
前に僕は、『ロンバケ』には一人多重コーラスはない、なんて書いてしまいましたがそんなことはありませんでした。Jack Tonesのクレジットはされていませんが、彼らはちゃんと歌っていました。おそらくは全部で3曲。
でも、やはりコーラスというものは意識して聴かないと、わからないものだと痛感しました。『ロンバケ』は間違いなく僕が最もよく聴いたアルバム。1万回、あるいは10万回、いやもっと聴いたかもしれません。でも、今の今まで気づいていなかったんですからね。

まず、最初に聴かれるのは「カナリア諸島にて」。「カナリアン・アイランド カナリアン・アイランド 風も動かない」とうたわれるサビの部分に大瀧さんの一人多重コーラス(Jack Tones)を聴くことができます。


このサビは曲の中で4回出てきます。全部同じように思えますが、ちょっと違います。もしかしたら1回目と3回目は同じものなのかもしれませんが、2回目と4回目のは、1回目、3回目とは違ってファルセット(裏声)のコーラスが出てきます。2度繰り返される「カナリアン・アイランド」の2度目の「カナリアン」のところ。ここはとってもいいですね。このファルセットを歌っているのは「泳げかなづち君」から金田一幸助に変わって加入して、おそらくはファルセットで歌ったはずの多羅尾伴内でしょうか。多羅尾伴内は『ロンバケ』のアルバムの全曲のアレンジもしているので大活躍ですね。
それにしても、「カナリア諸島にて」の松本隆さんの歌詞の素晴らしいことと言ったらないですね。心象風景という言葉を使われていたことがありましたが、心の中の風景が、海辺の風景に見事に重ね合わされています。「ぼくはぼくの岸辺で生きていくだけ」なんてたまらないですね。

さて、2つめは、アルバムの曲順通りではないのですが「FUN×4」。埋め込みができなかったのでリンクしました。

これはもう聴けばわかる通り、曲のはじめから大瀧さんの一人多重コーラスが聴かれます。こういうホワイト・ドゥーワップ調のコーラスはJack Tonesが最も得意とするものでしょうか。後半に少し出てくるアカペラ・コーラスも素晴らしい。曲の最後にはファルセットが出てきます。大瀧さんの(多羅尾伴内?)ファルセットは本当に魅力的な響きがあります。

最後は「恋するカレン」。まちがいなく『ロンバケ』の代表曲の1つですね。この曲でもやはりサビの部分に、女性コーラス(シンガーズ・スリー)の影に隠れてはいるのですが、大瀧さんの一人多重コーラスを聴き取ることができます。かなりゴージャスなコーラスです。


このコーラス、よく聴くとビーチ・ボーイズもカバーしている「Hushabye」という曲に聴かれるメロディが聴かれるのですが、コーラスの感触はディオンと離れたベルモンツの、特にこの「ロックンロール・ララバイ」に似ているように思いました。


「恋するカレン」は、バリー・マンという作曲家が作った「Where Have You Been (All My Life)」という曲(歌ったのはアーサー・アレキサンダーという人)を下敷きにしていて、特にサビの部分では、一部そのままのメロディが聴かれるのですが、そのバックのコーラスも、同じバリー・マンの作った「ロックンロール・ララバイ」(最初に歌ったのはB.J.Thomas)のコーラスを使って、バリー・マンつながりにしたのかもしれません。

『ロンバケ』では、Jack Tonesはクレジットもされていなく、目立たない形になっているのですが、以前よりもはるかに成長した姿を見てとることができます。
[PR]
# by hinaseno | 2012-11-28 09:10 | 音楽 | Comments(1)

今日は『ロング・バケイション』の話をしようかと考えていたのですが、やはり前にさらっと流してしまったCMソングのことを抜きにしてJack Tonesは語れないと思いましたので、少しだけ前に戻ります。
『Niagara CM Special Vol.1』に収められた「解説」を見たら、Jack Tonesの名前がいくつか見ることができました。
まずは前日貼った「ムーチュ」、そして、やはり「Cider '77」にもJack Tonesの名がありました。
前にも書いたように「Cider '77」は、当時の友人と何度か口ずさんでいた記憶をはっきりと持っていますので、『ロンバケ』を受けとめる素地を作った最初の記念すべき曲のように思いました。ということで、これも作りました。本当は秋吉久美子さんのめちゃくちゃかわいい映像があったほうがいいのですが。


「Cider '77」は『GO! GO! NIAGARA』発売後に作られていますから、まさにJack Tones絶好調って感じですね。
それから、馬場こずえさんの深夜のラジオ番組のテーマソング「土曜の夜の恋人に」にもJack Tonesの名がクレジットされています。
この画像の最初にかかっているのがそうですね。


『ナイアガラ・トライアングルVol.1』のレコーディング・セッションの合間をみて録音したと書かれていますから、『GO! GO! NIAGARA』の前ということになります。「ムーチュ」の次がこれということになります。『GO! GO! NIAGARA』の「あの娘に御用心」タイプの曲で、「あの娘に御用心」の最後の方で馬場こずえさんの名前も出てきますね。

あとは『Let's Ondo Again』のアルバムが発売されるまでのまでのCMソングで大瀧さんの一人多重コーラスが聴けるのは「タマゴのタンゴ」、「スメランド」、「Good Day Nissui」の3曲。「Good Day Nissui」はかなり『ロンバケ』していますね。
でも、次に出た『Let's Ondo Again』(『ロンバケ』の1つ前のアルバム)にはJack Tonesのコーラスは1曲も確認できません。理由の一つは、かなり時間のない中でこのアルバムを作ったということ。もう一つは、Jack Tonesのさわやかなコーラスをつけられるような曲が1曲もなかったということですね。コミカルな曲という次元を超えたすごいものばかり。
『ロンバケ』で大瀧さんを知った人間としては、当然、その一つ前に作られたアルバムがどんなものなのかが気になりますよね。で、これを聴いた時の驚きといったら...。

『Let's Ondo Again』でコロンビアとの契約(かなりハードな契約をしていまったんですね)が切れて大瀧さんは再びCMソングの制作、あるいは他のアーティストへの曲提供を活発に始めます。『ロンバケ』の制作期間ともかぶった時期ですね。この時期に作られたCMソングは素晴らしいものばかり(でも、ボツ、つまり不採用になったものも多いとのこと)。最初が例の「オシャレさん」ですね。そしてこの期間に前に触れた「がんばれば愛」も作られています。
この期間で大瀧さんの一人多重コーラスが聴けるのは「Big John」、「Hankyu Summer Gift」、「Marui Sports」、そして「悲しきWALKMAN '81」。
この中で、特に素晴らしいのは「Big John」ですね。A TypeとB Typeがあるのですが、どちらも抜群にいいです。前に貼ったCMの映像も曲に見事にマッチしています。埋もれさせておくにはあまりにもったいないので、これだけ取り出して作りました。あの画像があれば最高なんですが。

[PR]
# by hinaseno | 2012-11-27 09:08 | 音楽 | Comments(1)

今日は『GO! GO! NIAGARA』に収められた、Jack Tonesがコーラスをつとめた曲、つまり大瀧さんの一人多重コーラスの曲をどんどんと紹介していきます。
「GO! GO! NIAGARA」に収められた1人多重コーラスのポイントは、爽快感のあるコーラスをはじめたことではないでしょうか。つまり、それ以前の「おもい」、「ムーチュ」はドゥーワップ調でしたが、このアルバムからサーフィン・ホットロッドやソフト・ロック系のさわやかな感じのするものにチャレンジしているんですね。ポイントは高音、裏声を使ったコーラスですね。

まず1曲目は「あの娘に御用心」。


この曲の、とくにバス・パートの使い方などは、大瀧さんの大好きな、フィル・スペクターのプロデュースしたBob B. Soxx and the Blue Jeansの「Why Do Lovers Break Each Others Hearts」に聴かれるものをそのまま使っています。「あの娘に御用心」の最後の部分に、元にしたであろう曲のタイトルが次々に出てくるのですが、 その中に「Why Do Lovers Break Each Others Hearts」も出てきます。


2曲目は「針切り男」。この曲はYouTubeになかったので作りました。
サビの部分に聴かれるコーラスは素晴らしいですね。


3曲目は「コブラ・ツイスト」。
こんなプロレスの技があったなんて、今どれくらいの人が知っているのでしょうか。
(ちなみにこのYouTubeの音源には、途中から植木等の歌った大瀧さんの曲が出てきます)

この曲にはやはりいろんな曲が元ネタとして含まれています。
最初の部分はホットロッドの名曲であるリップ・コーズの「ヘイ・リトル・コブラ」。「コブラ」は毒蛇ではなくこの画像に出てくるロードスター・タイプの車の名前です。

この曲に、60年代に数多く作られたツイストの曲をつなげているんですね。まさにタイトル通りの曲。そんなことを何にも知らないで、はじめて「ヘイ・リトル・コブラ」を聴いたときには本当にびっくりしました。

4曲目は「今宵こそ」。
この曲にどんな元ネタがあるのかは知りませんが、かなり複雑なコーラスワークが聴かれますね。とっても好きな曲です。


以上が、『GO! GO! NIAGARA』に収められた大瀧さんの一人多重コーラスが聴かれる曲です。

『GO! GO! NIAGARA』では大活躍だったJack Tonesは、大瀧さんの次のソロアルバムである『ナイアガラ・カレンダー』ではたった1曲しか登場しません。Jack Tonesのメンバー、別の仕事で忙しかったんでしょうか。で、代わりにキング・トーンズが再登場しています。「お花見メレンゲ」と「お正月」ですね。「お正月」は大好きな曲なのでJack Tonesのコーラスで聴いてみたかったです。

今日の最後は、その『ナイアガラ・カレンダー』でJack Tonesが唯一登場する「泳げカナヅチ君」。"泳げない"けど、とっても素晴らしいサーフィン・ソング。
ちなみにたくさんのサーフィン・ソングを作ったビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンも泳げません。


さっき、この曲のクレジットを見てちょっとびっくりしました。Jack Tonesのメンバーが一人交替しています。『GO! GO! NIAGARA』で2nd Tenorをつとめていた金田一幸助がいなくなって多羅尾伴内が入っています。多羅尾伴内の方が高音が出るのでしょうか。真相やいかに。ちなみにリード・ボーカルはJack Tonesのメンバーでもある宿霧十軒。
a0285828_9381749.jpg

Jack Tonesの名前はこれ以降の大瀧さんのアルバムからは見られなくなります。果たしてJack Tonesは...。
[PR]
# by hinaseno | 2012-11-26 09:38 | 音楽 | Comments(1)

大瀧さんがはじめて本格的に一人多重コーラスをはじめたのは1976年10月にリリースされたアルバム、『GO! GO! NIAGARA』です。
a0285828_18183220.jpg

このアルバムで大瀧さんは完全に一人多重コーラスのノウハウを身につけたんでしょうね。
このアルバムの裏ジャケには、「introducing “Jack Tones”」という言葉とともに、4人の男性コーラスのイラストが載っています。
a0285828_18202463.jpg

「おもい」「ムーチュ」でやった一人多重コーラスにグループ名をつけて初披露というのがこのアルバムです。
それにしても自分の多重コーラスに名前をつけるというのがいかにも大瀧さんらしいですね。ジャック・トーンズという名前のもとになっているのは、「ムーチュ」の元歌である「いつも夢中」のコーラスをしたキング・トーンズですね。外国にはクイーン〜というコーラス・グループ(もちろんそれは女性ですね)もあるということで、キング→クイーン→ジャックで、ジャック・トーンズ。ジャック・ジョーンズ(Jack Jones)という名のポップ・シンガーもいますから、それにもかけているのかもしれません。シャレが効いています。
さらにおもしろいのは、グループ名をつけただけではなく、その一人多重コーラスのパートごとに名前をつけていることですね。世界広しといえどもそこまでする人は絶対にいないと思います。
アルバムのライナー・ノートのクレジットにはこんなふうに紹介されています。

Voices:”Jack Tones”
  Bass 宿霧十軒
  Baritone 我田引水
  1st Tenor ちぇるしい
  2nd Tenor 金田一幸助

大瀧さんの変名に関して話を始めるととてもとても長くなってしまいますので今日はあまり触れないことにします。それぞれにいわれがあり、個々に様々な活動しています...って全部、大瀧さんなんですけど。ああ、ややこしいなあ。でも、考えてみると、大瀧さんは本当にいろんなことができてしまうのですが、その大きな理由はこの変名にあるのかもしれません。
いろんなことをやるにしても、一人の人間がやっていると思うのと、この作業をする俺は〇〇、この作業をする俺は□□、この作業をする俺は△△と名前を与えた方が、全く違ったアプローチができるように思います。一人多重コーラスも、ただパートごとに録音するよりも、そのパートに名前を与えて歌う方が、自分から離れられる気がします。大瀧さんの一人多重コーラスの魅力はそこにあるのかもしれません。同じ人間が出した声でありながら、別々の人格をもっている。それが一人多重コーラスの技術を「ムーチュ」から、たった1年で、格段に進歩させた理由のように思います。

さて、 Bass の宿霧十軒のことについて。
この人は『ナイアガラ・カレンダー』の「泳げカナヅチ君」と、それをパロディにした『レッツ・オンド・オゲイン』の「空飛ぶカナヅチ君」でリード・ボーカルを務めています。
ところで、宿霧十軒という名前のいわれは何だろうと調べたら、なんと伊藤銀次さんがブログで説明されていました。宿霧十軒は「やどぎりじゅうけん」と読むんですね。僕は「じゅっけん」と読んでいました。銀次さんはこう書いています。

名前の「十軒」をひっくり返すと「軒十(けんじゅう)」。名字の「宿霧」をひっくり返すと「霧宿(むしゅく)」。合わせて「軒十霧宿」。
これはスティーヴ・マックイーンが若い頃主演していたTV映画「拳銃無宿」(原題 Wanted : Dead Or Alive)を文字って逆さにしたものだったのです。

「拳銃無宿」からとっていたとは驚きました。ときどき宿霧さんには”Borris”というミドルネームがついているのですが、これはどういう意味なんでしょうか。

次に、 1st Tenorの「ちぇるしい」について。ときどきはChelseaと英語表記されることもあります。
この「ちぇるしい」というのは大瀧さんの最も古い変名ではないでしょうか。
昔、はっぴいえんどを結成する前に、細野晴臣さんとあるライブに出ていて、そこで歌ったのがジョニ・ミッチェルの「チェルシー・モーニング」。これをたまたま見ていたおばさんたち(ラヴィン・スウーンフル・ファンクラブの人たち)が、ファンがいなさそうだから応援してあげると言って、その時につけられた大瀧さんの愛称がちぇるしい。名前のついたいきさつとしてはかなりイージーな感じがしますが、でも、どうやら大瀧さんはこの名前が気に入ったみたいで、このちぇるしいという名前を以後ずっと使い続けます。
印象的なのは『ナイアガラ・カレンダー』の「Blue Valentine’s Day」というとってもロマンティックな曲を歌っているのが、ちぇるしい。

『ナイアガラ・カレンダー』のクレジットには「ちぇるしい(18才―精神年令)」と書かれています。少年の心を忘れない存在でしょうか。はっぴいえんどの前に細野さんと組んでいたグループ名が「バレンタイン・ブルー」なので、この曲にはその時代の思い出も含まれているのかもしれません。
ちなみに、ちぇるしい(Chelsea)は、「ナイアガラ・トライアングルVol.2」の大瀧さんの作った曲のアレンジをしている他、先日特集した渡辺満里奈さんの『Ring-a-Bell』の「うれしい予感」のアレンジもしています。同じアルバムでも「ダンスが終る前に」と「あなたから遠くへ」は多羅尾伴内(『ロンバケ』をはじめ、大瀧さんの楽曲のほとんどのアレンジを担当している人。もちろん大瀧さんの変名)。
同じアーティストのアルバムの中に、大瀧さんの2種類の変名があるっていうのもおもしろいですね。「うれしい予感」は、精神年齢を下げて作ったということでしょうか。興味深いのは、この多羅尾伴内とChelseaは『ナイアガラ・ムーン』の「楽しい夜更し」という曲をデュエットしています。といいつつ、全部大瀧さんなんですが。

でも、大瀧さんが変名を使って何かをするというのは、冗談を超えて、学ぶべきことがあるような気がします。

今日は結局、Jack Tonesのメンバーの紹介(つまりは大瀧さんの変名)の話だけで終ってしまいました(更新の時間も遅くなってしまいました)。
[PR]
# by hinaseno | 2012-11-25 18:22 | 音楽 | Comments(1)